第七百一話
サイコフィールドと名付けたサイコフレームの共鳴によって発生する発光現象を利用した長距離狙撃……規模でいうと砲撃か、を実現した。
だが、正直未完成も甚だしい品物でしかない。
なんとか法則を見つけて応用しているが原理が解明できていない。全てを解明とまで言わなくとも取っ掛かり程度は掴みたいところだ。
「連邦は察しが良いやつがいるようだな」
どうやら連邦はニーベルン・ヴァレスティの要が大尉が乗ってきたνガンダムのデータからサイコフレームによって引き起こされたものであると察知したようだ。
まぁサイコフィールドはビームが過ぎた後もしばらく残留して肉眼ですら確認できるのだから分析すればすぐに分かることだろう。というよりもそうでなければ困る。なにせわざとこのようなことができると連邦に教えるためにニーベルン・ヴァレスティを使用したのだから。
私達は天才だと自負しているが、それでも数の不利は否定できない。故に連邦にあえて情報を渡すことで新たな研究させようというのが私の狙いだ。
今はまだオデッサのみであり焦りが少ないようだが、第二次、第三次と続けば焦りは加速し、対抗策として研究により熱が入ることだろう。その実りを刈り取らせていただこう。
遠隔操作でサイコフィールドを使うことはプルシリーズでも難しいが直接操作なら普通のニュータイプでも問題なく……というわけにはいかないだろうが実現することが可能だ。
もっともプルシリーズのレポートを見る限り、常人では1射で廃人になる可能性が高いようだが……私はしばらく使用しないでおこう。コロニーレーザーの射程を100倍にしようと思っていたのだが、私が動けなくなるようなことがあればミソロギアは機能不全に陥る。
「しかし……白い悪魔の強さは進化するというより適応するという言葉がしっくり来るな」
大尉とこの世界の白い悪魔では年齢差があれど身体能力に陰りもなく、経験の差で大尉の方が勝っているはずだ。しかし、戦闘能力という面においてはそれほど差がないように思える。
普通なら経験を積めば強くなるのは当然なのだが、『アムロ・レイ』は状況に適した対応を瞬時に行うことに優れている。そのため、過去でも未来でもそれほど強さに差がないのだろう。
「こうなるとプル達の育成方針を考えなければならないな」
今までひたすらパイロット、ニュータイプ、生物的、科学的な強さを求めてきたが、人間性や武略などを重視せねばいつまで経ってもMSのスペックを頼った勝利しか掴めない。
プルシリーズはプルタイプ(お気楽)にしてもプルツータイプ(生真面目)にしても素直な性格をしているため、人を騙すことがあまり得意ではない――
「というより私自身他人に興味がそれほどないから騙すようなことをしたことがほとんどないからな」
心理学は修めているが実戦で使えるものかというと、所詮他人が描いた机上の空論でしかない。何よりニュータイプを騙すような方法が書いているわけがない。
「ニュータイプにも通じる狡猾さ、か」