第七百十二話
「現在打ち上げで2万人に到達しました。両軍の戦死者は今のところ0です」
「まさか死者を出さずにベルファストを取るつもりか」
「目標としてはそうだが、実際には難しいだろうな」
「さすがに無理か……」
「ああ、連邦が手段を選ばない可能性が高いからな」
私達が殺すのではない。連邦が切り捨てるのだ。
ミサイルによる無差別攻撃は防ぐことはできた。しかし、人を巻き込まずにニーベルン・ヴァレスティが撃てたからであって、人がいればその限りではない。
ニーベルン・ヴァレスティを使えるプルシリーズはあまり多くないし、上位ナンバーがほとんどでしばらく使えなくなるとミソロギアの運営に悪影響が出る。
それに――
「これを見ろ」
近隣の基地から飛び立つデプロッグ、攻撃機マングースと護衛のコア・ブースターIIとSFSに乗るジェガンが続々と飛び立っている。
ジムIIからジェガンに変わったのはオデッサと大気圏での戦闘でジェガンの数が心許なくなったことで急遽生産ラインを復帰させて数合わせに生産されたジムIIだったわけだが、それも尽きたので虎の子としてジェガンを切ってきたわけだ。
ジェガンが虎の子というのはなんとも情けない話ではあるが。
「爆撃機のデプロッグに、MSには満足にダメージを与えることもできない攻撃機マングース、何をしようとしているかはゲーム好きの子供程度でもわかるだろうな」
国民の生命を無視した絨毯爆撃。
困った困った。連邦はなかなか戦争上手だなー(棒)
「あの天使型のMSを投入するだけで阻止できるじゃないか」
「それでは今までの戦術と変わらないことになる。せっかくの歩兵運用データを得る機会を逃すのは今後のためにならない」