第七百二十話
「まさかこんなに簡単に受け入れられるとはな」
アムロにとって久しぶりのベルファストの大地、オデッサ作戦の終わった頃以来なので14年振りである。
元々アムロは捕虜とされているわけではなく、客人待遇だから監禁しているわけではない。
しかし、ミソロギアを出ればジオンからは恨まれ、連邦からはその能力を狙われ、暗殺や誘拐される可能性が高いことから滞留しているに過ぎないので行動の自由はある程度保証されていた。
とはいえ、戦地の真っ只中に行きたいという客人を快く承諾するかは別問題だ。だがミソロギアは普通の組織ではない。
「これが――連邦の選択、か」
痛々しい激しい爆撃の跡。
かつて賑わっていたであろう街並みは人が消え、建物が崩れ、ゴーストタウンの様相を醸し出している。
ゴーストタウン化そのものは強制移住でミソロギアが行ったことであったとしても破壊活動そのものはしていない。
つまり、この街の破壊は純粋に連邦の手によって行われたものである。
それをアムロはリアルタイムで観戦していたため知っている。
ニュータイプとして危険視されていても、不遇な境遇であったとしても、そして自身がモルモットとされたとしても、それでも連邦には揺るがない正義があると信じていた。
いや、その正義すら半信半疑であって信じていたわけではない。しかし、連邦が崩れれば世界は混沌とする。その混沌よりも連邦の腐敗はまだマシだと、そう思ってきた。だが――
「躊躇なく、時間稼ぎとして行われた守るべき民を巻き込む爆撃……いくらテロリストが相手だったとしてもそんなことが認められるはずがない」
大事の前の小事とは言うが限度がある。
巻き込むかもしれない、ではない。巻き込むことが前提の爆撃が、この段階で決行されたのは衝撃的だった。
一年戦争初期の頃ならまだ理解できた。ジオン公国は宇宙を制し、地球そのものを破壊しながら侵略していた。もっとも連邦の見立てではジオン公国の兵站が遠からず疲弊し、戦況が逆転するとわかっていたので堪え、常識的な範疇で戦っていた。逆説的にそれをジオン公国も理解していたから非人道的な手段を用いて対抗していた。
「秩序を乱すしているのはミソロギアで間違いない。しかし、守るべき秩序を自ら破ったのは連邦……ハァ」
自分を実験体とされたので思うところが多々あるが、それでも連邦を信じて戦ってきた。
エゥーゴに参加していたがエゥーゴも連邦の派閥に変わりない。
「カラバが主導権を握ったと聞いて期待していたが……同じ穴のムジナだったか?それとも政権を握ったぐらいで変わらないほど連邦が腐敗しているのか」
「現状政権奪取は成功したものの軍の掌握はまだまだです。ティターンズという柱を失ったこと、ネオ・ジオンや我々に敗北したことで軍閥は群雄割拠の状態となっています。幸い、カラバ主導ではないため手勢の被害は少ないですが、目立った戦果もないため影響力は限定的となっています」
「連邦は意思統一が難しそうだよね。特に軍なんて分かりやすい権力を持っちゃうと欲が止まらなくなりそうだし」
観光兼護衛として同行しているプルシリーズ2人が情報提供と感想が入る。
「……覚悟を決める時が来た、か」
アムロは動き出すことを決断した。
