第七百二十六話
「実戦データはある程度揃った」
本来なら耐久テストは可能な限り行っておきたい。特にプルシリーズの精神の耐久テストは。
連邦軍との砲撃戦が互角であるため、予定していたHLV降下による増員は撃墜リスクが高いとプル22が判断して中止、そのせいで間断なく戦闘……というよりは砲撃は人的被害こそないが精神、身体両面に負担を強いられ、ここのところ悲鳴が(リアルで届けると更なる訓練が施されるため無意識で思念を)届く。
「そろそろ砲撃戦だけというのも飽きてきただろう。攻勢に出る。連邦軍をアイルランド島とグレートブリテン島から叩き出せ」
砲撃合戦をやめ、本格的に近隣の連邦軍の排除する方針へと転換。その理由は――端的に言えば私のリソース確保だ。
今まではドクトリン構築こそプルシリーズに任せていたが、砲戦フレームの実戦データを基に改良は私が行ってきたがある程度データが揃い、改良も満足……ではないが、一区切りついたといえるレベルに到達した。
次は砲撃合戦のデータではなく、白兵戦に織り込んだデータを収集したい。
……決して私の好奇心は思念の実体化研究に傾いたというわけではない。
「そしてこれより前線指揮をアムロ・レイに任せる」
『所属して早々に大任だな』
アムロ・レイから、事前連絡ぐらいよこせ、新人に任せる仕事じゃないぞ、という思念がバシバシ飛んでくるが特に問題はないようなので気にしない。
部隊までしか指揮経験がないようだが教導データから察するに軍規模の運用も問題ないと踏んでいる。
軍用犬としては連邦やジオン――は微妙か――の軍人に劣るが歯車、駒としては新米ナンバーを除けば類を見ない仕上がりだと自負している。
人員は現状のまま、つまり疲労しているとはいえ実戦を経験済みのプルシリーズのみで構成されているのだから子供がゲーム感覚で指揮をしてもよほどひどい運用でなければ被害らしい被害は出ないだろう。せいぜいMDが消耗する程度、今の収支で考えれば問題にもならない。
それにアムロ自身のためになる研究に力を入れるためなのだから本望だろう。(建前)
「大気圏に駐留する母艦級やMDも自由に使ってもらって構わないが有人機は使用禁止だ」
次世代機の開発も煮詰まってきたので現行機の露出を増やしても特段困らないのだが、問題はそちらではなく、ただただ人員不足にある。
支配地域を増やせば増やすほど戦力は分散していく。そんなことは開戦前から、というよりもジオン公国の末路を知ればよほどの愚者でなければ学ぶことだ。
有人機を投入するとなると1人で複数コントロールすることができるMDとは違い、一時的にしろプルシリーズを多く割かなければならなくなる。
経験を積んで新米ナンバーも卵の殻が取れ始め、新米から下位へと移る個体も現れ、近々プルシリーズを増産する予定ではあるが、それで直ぐ様不足を解消できるわけではない。
『そうか、MDの戦闘力からするとアレは過剰戦力か。ここでは量産機扱いだから忘れていた』
少し的は外れているが、それも間違いではない。
私の中では既に旧式と言えるキュベレイ・ストラティオティスは過剰、それに次世代機を目前にしている現状、消耗したくはない。
後継機はキュベレイ・ストラティオティスとの互換率は現段階で3割程度、何かひらめきがあれば下がることはあっても上がることはない。つまり、これ以上キュベレイ・ストラティオティスのパーツを追加生産は最小限で済ませたい。
その点レナスとシルメリアは互換性が高く、製造、維持コストが安く、スペック比としては良好で当面次世代機を開発する予定はない。MDとして新型を開発することはあるかもしれないが、それはそれだ。
「私としては指揮官は後ろに控えておくものという認識だが……どうしたい」
『ある程度情報は把握しているがしばらくは前線に立って観察したい』
シャアといいハマーンといいシロッコといい、なぜ指揮官なのにMSに乗りたがるのか。
まぁシャアもアムロも叩き上げだからそうなってしまうのかもしれないが……ハマーンはアクシズの戦力不足と私の実験に付き合わせたことが原因か。シロッコ?知らんな。
「ならば次の補給につい先程完成した専用機を贈ろう」
実はこちらが本題だ。指揮官の打診程度だったら電文で済ませている。
「現状で可能な限り要望には答えたつもりだ」
機体データを送るとアムロはすぐに目を通す。
『……確認した――が……これはなんというか――ガンダム、だな』
「名称はファースト。やはりアムロ・レイといえばRX-78-2ガンダムだろう。もちろん中身は全くの別物だ」
機体サイズにデザイン、カラーリング、ほぼすべてがRX-78-2と同じように再現している。
まぁさすがにバックパックやスラスターの形状、アポジモーターの数などは連邦の初期MSであるRX-78-2から進歩しているため同じではない。
「RX-78-2と同じようにシンプルな武装を基本に、戦場によって追加武装を選択する形になる」
ちゃんとバズーカはもちろん、ジャベリンやスーパーナパーム、あとガンダムハンマーも用意している。リスペクトは大事だろう?
ちなみに名称候補にはもう一つ、オジキという謎のお告げがあったが意味不明過ぎて却下した。我が事ながらどこから降って湧いたのか。
「後、プルシリーズが操るシルメリアほどの性能ほど発揮できないだろうが僚機として使えるようにしてある。何機使えるかは努力次第だが……まぁ最悪使えなくともファンネルやフィンファンネルを搭載することもできるので好きにつけるといい」
ファーストはMSとして手本のような、悪く言えば面白みのない機体だ。
だが、元となった武装だけでは対応できない局面が――というかバズーカやジャベリン、ナパームはわかるがハンマーってなんだ?悪ふざけとしか思えない。
……まぁジオンもMSにムチを内蔵させたり、どこからどう見ても宇宙怪獣にしか見えない手から触手を生やしたMSや両腕ドリルなんてMSも開発していたが……戦争が起こると開発者は知能指数が下がるのだろうか。
「他にも要望があればできるかぎり応えるつもりでいるので遠慮なく言ってくれ」
