第七百二十七話
決して油断していたわけではない。
だが、濁流を前に警戒も緊張も関係などない。
「弾幕を張れ!撃ち続けろ!近寄らせるな!後のことを考えるなっ!!」
ガンタンクや61式戦車、対空砲台などから放たれる砲弾の数は一年戦争当時のそれを凌駕していた。
ジオン公国という前例があり、制宙権を取られ、一地方でしかないとはいえ占領され、惨敗続き、これだけ積み重なれば投入される戦力が多くなるのは当然で、比して弾幕の厚みも増すのも当然だ。
しかし、その弾幕を嘲笑うようにヒラリヒラリと川を漂う葉のように小石(弾幕)を避け、ゆったりとした迫る姿は戦乙女を象るその姿は神々しくもあり、だからこそ恐怖を与える。
「祈れ。終わりは必ず訪れ、その終わりが安らかであることを、そして今ここで我らが与えん――Amen――」
「シルメリアの元となったヴァルキュリーは北欧神話だけどね!」
射程に入ると次から次へと命を刈り取る光が放たれる。
「護衛部隊!守れ!!」
しかし、連邦もただただやられるだけではない。
今までの戦闘データを分析し、対策を立てていた。
「護衛部隊に被害なし!予想通りです!」
護衛部隊はジェガンで構成され、機体そのものは至って普通だがその武装はノーマルではなかった。
手に持つのは自身どころか後ろに控える護衛対象である砲撃機すらも覆うほど大きな盾を掲げていた。
シルメリアの戦闘能力はビームライフルに一本であり、そのライフルの出力も高いには高いが通常のシールドで防げないほどではない。つまり、通常ではないシールドを……ビームコーティングを通常より厚く、厚く、厚く塗り重ねられた回避ができないなら耐えたらいいじゃないという脳筋的な対策を施したシールドである。
その姿はジム・ガードカスタムを彷彿とさせ、同じようなコンセプトであるため共通する弱点であるシールドの重量による機動性の低下は砲撃部隊の護衛という役割ならば問題にならない。もっともパイロットからジム・ガードカスタム以上に守りを主眼……ろくな武装が装備されていないことから「俺達は肉壁じゃねぇ!!」と不評だ。
「むう、予想通り対策してきた……面倒だね」
このような形で対策されているという確定情報はなかったが、いくらかの対策が予想されており、その中の1つにこれも含まれていた。
ちなみに事前に情報を入手できなかったのは正規製造ではなく、現地で製造された急ごしらえの物であることと諜報活動からアレンが手を引き、プルシリーズが担っていることで質が低下したことで漏れてしまったのだ。
「でも、予想通りでしかないね」
Iフィールドで防がれているならばともかくビームコーティングなら一定のビームを浴びれば剥がれることは常識であり、当然プルシリーズも把握している。だから「面倒」としか評さなかった。
戦闘機動であっても同じ箇所に当てることが可能なプルシリーズに動かないただの的に当てるのに苦労するはずもなく、瞬く間に1発、2発、3発――5発と重ねると溶解を始め、もう少し――とプルシリーズが思ったところで――
「リビルド開始ッ」
「ハ?」
限界を迎えようとしていた――が突然その周囲がまとめてポロッと落ちた。
そして周囲の装甲が即座にその穴を埋め、そしてその移動した装甲の穴をまた別の装甲が穴を埋め、最終的に外縁部が少し欠ける形に再構築された。
「うわぁ、めっちゃ面倒ぉ」
それを見たプルシリーズは心を一つにしたのは余談である。
「ブゥー、私達だけで片付けるつもりだったのに……ま、白い悪魔さんとあのガンダムの力を拝見できる機会ができたと思っておこ」
