第七百三十話
上層部が状況が把握できずに混乱していたが現場でもそれは同じだった。
センサーやソナーなどで捕捉する前か、した途端に次から次へと撃破され続け、予備戦略が援軍として到着するまでに20機を超える被害が出ている。
何が起きているかわからないまま次々と死が表示され続ける。
肉壁ジェガンと砲撃機が空を舞うシルメリアに気を取られていたということもあったが、砲撃機は中近距離戦を不得意とし、肉壁ジェガンはシールドによって視界が妨げられる上に取り回しが悪く、しかし、それを放棄してしまえばシールドとそれに内蔵されているミサイルがない分だけ防御力と火力が劣るジェガンでしかない。
ジェガンも悪い機体ではないのだが、相手が悪い。
ミソロギア、クローン強化人間、新兵に近いとは言ってもアレンに見出されて鍛えられたニュータイプ、そして一年戦争時、未成年でありながら修羅場を潜り抜けてきたエース。
そして――
「ガ、ガンダム?!」
連邦パイロットなら誰もが使うシミュレーター。
そして誰もが通る“連邦エースが操るガンダム(白い悪魔)との戦い”。
撃っても当たらず、避けても避けきれず、最後には必ず撃墜される。
あの理不尽な敗北感は、訓練とはいえ心に深く刻まれており、今、脳裏に過ぎる。
「似てたって所詮本物なわけがねぇ」
虚仮威し、ファーストを見た連邦兵の反応だった。
それはそうだろう。ライフルを向けようとするとその前から回避行動に入られ、背中に目でもあるかのように後ろからの攻撃を避け、なんだったら正確なカウンターをもって汚点(撃墜)をつけられるのは通過儀礼となるほどだ。
そのような敵が、姿形が同じで現れるわけなどない。何より『アムロ・レイ』は連邦軍に属しているのだから――
「その――はず――なんだよおぉ!!」
引き金に指をかけた瞬間、もう避けられている。まるで未来が見えているかのような動きだと思考にチラつくがその間に味方のジェガンのシールドの隙間を抜いて頭部を撃ち抜き、続けて庇っていた対空砲も貫けれる。
「あの偽物に集中――」
「おいおい、俺達を忘れるなんて酷い奴らだな」
「数が多いってのは確かに厄介だが、プル達に比べたら大したことねーな!」
「ビーチャ?!前に出すぎだって?!」
その戦いぶりで一際目を引くアムロに注視してしまうのは仕方ないことではあるが戦場においては命取りとなる。
あえて目立たないように立ち回っていたジュドー達が意識がこちらに向いていないことを察知して素早く切り込む。
ミソロギアではあまり近接戦闘を行わないのだが、ジュドー達はどちらかというと近接戦闘を好む。腰が引けているモンドですらそうだ。
もっともこれは訓練でファンネルを多用するプルシリーズの個体が多いことで中遠距離戦よりも近接戦が善戦できる(勝てるとは言ってない)から磨かれただけである。
しかし――
「敵が浮足立ってるのに貴方達まで浮足立ってどうするの」
冷たい意思(声)とともに放たれるビームは突出したビーチャが半包囲が構築されていくのを欠けさせる。
近接戦闘が優れていたとしてもミソロギアの中では下から数えた方が早く、経験も少ないジュドー達では半包囲を突破する力はまだない。
もっともこれを予想してプルシリーズが世話役としてつけられているのだからある意味予定調和でもある。
「やっぱりフォローするならファンネルが欲しい」
「確かにあれば楽だよねー」
「でも地上だといろいろと問題があるからねぇ」
ファンネルは大気圏内でも使えないことはない。
しかし、飛行に適していない形状、ずっと吹かし続けなければならないスラスター、空気やゴミなどで減衰するビームや機動性など宇宙空間、無重力状態とは違って機能が制限される。
特に推進剤が問題で、飛行に多くの推進剤を使用することになり、下手をすれば戦闘中に推進剤が切れる可能性がある。それがファンネルだけであればいいが、ファンネルの推進剤はMSに収納される度に充填される。
ということはMS本体の推進剤が消費されていき、戦闘可能時間が短くなってしまうのだ。
「少しだけでも火力を増やすために、好みじゃないけどマシンキャノンを装備してきて正解だったね」
「マシンキャノンを好む変わり種は今のところいないわね」
「でもこれから必要になるかもですし、今回みたいなシチュエーションもあるでしょ。多分」
そんなやり取りをしながらも弾幕を張り、ジュドー達の支援する。
