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バトル、決着。
六話
さて、同じことは二度通用しない。そう考えたほうがいい。だから、今度は
(目くらまし……!)
ミサイルをすべてターゲットにロックオンした上で解き放つ。
しかし、先ほど激昂していた姿とはまるで別人のように六本の装甲脚を操りつつ、腰部装甲から取り出した二刀のカタールを取り出し、次々と撃墜していく。周囲に爆炎の花が咲く。
ドガガガガガガガガッガッガン!
そちらに相手が集中している隙に、ガウォークに変形、相手の後ろ側に滑り込んでガンポッドを叩きこ…
……
ミサイルに集中しているはずの装甲脚が反応した。
Side イーリス・コーリング
(予想通り……!)
さっきの様子から、相手は正面からの攻撃では防がれるか、回避されると考えるだろう。だから相手の攻撃方法は、おそらく、
(死角からの急襲…!)
そしてそれさえ解れば迎撃の仕方は簡単だ。すなわち、
攻撃を仕掛けてくるであろう場所に、トラップを仕掛けておけばいい。
あの変形する戦闘機がくる場所にエネルギー・ワイヤーの網を仕掛けておいた。
相手は見事にがんじがらめにされ、抜け出そうと必死にもがいている。
それは、まるで
クモの巣にとらわれた蝶のように。
(ここ、だ……!)
数が減ったミサイルを無視して一気に敵の元に突っ込み、六門の機関砲を
さらにカタールで相手を斬りつける。
数秒後、戦闘機は元の形へと戻って網から逃げ出した。ミサイルの置き土産を残して。
なんとかガードしたが、防ぎきれないのもあった。
だが、それでもおつりがくるほどのダメージを相手には与えたはずだ。
私は、獰猛に笑った。
「これで
Side end
(くそ……判断ミスした……。)
キャノピーの中で俺は歯噛みしていた。
あのとき、死角に回るなんて真似をせずに正面から突っ込んで、相手が処理しきれないような飽和射撃を叩き込めば、今このようなダメージは負っていなかったはずだ。相手が冷静さを取り戻したことはミサイルへの対処で気づいていたはずなのに……!
いや、後悔も反省もあとですればいい。
(今は勝つことだけを考えろ……!)
相手も相当なダメージを負っているはずだ。
勝つにせよ負けるにせよ、次の攻防で決まる。
「なら、勝つだけだ」
そう、やるしかなければやるだけだ。
Side三人称
誰も彼もが固唾を飲んで戦闘の様子を示すディスプレイを見守っていた。
ナターシャ・ファイルスはただ祈っていた。どちらが勝ってもいい、だからどちらも、この模擬戦で大きな怪我だけはしないで、と。
エドワード・フォッカーは胸が熱くなるのを押さえられなかった。このVFはかつて自分たち戦闘機乗りが届かなかったISの強さの高みに手を触れようとしている、と。
この勝負、勝利しても敗北しても、VFの力が認められ、開発が進むのはもう間違いないだろう。
だが、そんなことは関係ないと言わんばかりに異なる二つの人を乗せた機体は向き合っている。
そして、二機は同時に動いた。
片や桜井和人が駆るVF『リベリオン』はミサイルを放ちながらガンポッドとレーザー機関砲も撃つ徹底的な飽和射撃でもって敵を叩きつぶさんとしながら突撃し。
片やイーリス・コーリングが駆るIS『アラクネ』はリベリオンの放つミサイルと弾丸の雨を時に躱し、時に撃ち落としながら、時に受けながらも相手に機関砲の弾丸を浴びせんとしながら突撃する。
周りから見れば一瞬で、当人達からすれば永遠に近い時間に感じられたその攻防は、
二機の交差とともに…終了する。
そして、VFは緊急不時着し、ISも最終保護機能を発動した。
「これは……両者引き分けか?」
誰かがつぶやく。
それに対するオペレーターの返事は否定だった。
「いいえ、ハイパースピードのカメラで見ると、『アラクネ』よりも若干先に『リベリオン』がエネルギーシールドを解除されています……故にこの勝負、『アラクネ』の……勝ちです」
誰も、言葉を出せなかった。ISが当然のように勝つと思っていた者も、VFに「勝ってくれ」と願いをかけていた者も。
「……『リベリオン』を撃墜した時の、『アラクネ』のシールドエネルギー残量は?」
軍服に中将の徽章をつけた男が尋ねた。
「……3です」
オペレーターの答えに、今度こそ、本当に誰もが絶句した。そうなるともはや運の領域だ。勝者と敗者が変わっていてもおかしくない状態だったのだ。
「…たりは?」
女性の震えた声が問うた。オペレーターはよく聞き取れずに問い返す。
「…え?」
「二人は?どうなったの?」
ナターシャが問うていた。涙を目一杯に溜めながら。
「…生体反応(バイタルサイン)に問題はありません」
その答えにナターシャはへなへなと崩れ落ちた。
それを横目に見てから、エドワードは先ほど質問をした中将の方へと向いた。
「中将、どうですかな?我が社の可変戦闘機は」
「うむ、これほどの接戦を繰り広げるとは思わなかった…。こちらでライセンス生産をしたい。開発の補助もしよう。構わんかな?」
「一つ条件が。これを開発した少年……今パイロットをしていた少年は日本人で、そちらの会社とこれから共同開発をしたいと言っていました。ステイツ限定ではなく、日本でも生産されることになりますが、よろしいですか?」
「ふむ、まあそこはおそらく飲めるだろう。戻ってから大統領閣下と国防長官殿に話をしてみよう」
「ありがとうございます。では、あの二人の勇士たちを迎えにいかなくては」
「ああ、そうだな。私も同行しよう。君も来るかね?」
「……はい」
中将の言葉にしっかりと頷き、ナターシャは二人を迎えにいくオフロードカーに乗り込んだ。
シリアスシーンばかり書いているとギャグが欲しくなってきますな。
感想誤字脱字話の矛盾等あればお願いします。
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