戦闘終了。先に進もう。
七話
「はあ…。負けたか。くっそー、勝ちたかったなあ」
着陸を終え、キャノピーから広大な荒れ地が広がる外へ降り立つと自然とぼやきが出た。
結局後一歩のところでこっちのシールドエネルギーの限界が来た。あの時ああしていれば……と、後悔やら反省やらが勝手に頭の中で回り始める。
しかしそれは戦いが終わったことの証左でもあった。
そうやってうだうだぐだぐだと落ち込んでいると、横で身を起こす女性の姿があった。
「ぐ・・・・ぅ」
慌てて近寄り身を支える。
「大丈夫ですか?」
「あ…、ああ。あんたがあれのパイロットだったのか?」
「はい、そうです」
「勝負の結果は?あのとき攻撃躱してあんたを狙い撃つのに必死だったからよく覚えてねーんだ」
「俺もよく覚えてないんですが、機体のログによると、俺の負けです」
嘘をつく必要も意味もないので素直に白状する。
「そっか。……。」
しばらく黙った後、おずおずとその女性は言った。
「私は、あんたに謝らなきゃいけない」
「……はい?」
「私はな、ISが問答無用で最強だと信じてた。それであんたと戦うときも『かるーくひねってやるか』ぐらいのことしか考えてなかった」
懺悔するような感じで女性は続ける。
「けど、実際はそうじゃなかった。あんたは私が油断してれば負けちまうんじゃないかと思うくらい強かった。実際、最後に勝てたのも運だしな」
なんか先ほどの自分みたいな落ち込みようだった。
「私は、最初からあんたに全力で挑むべきだったんだ。私はあんたのことも、あんたが乗ってた機体のことも馬鹿にしていた。本当に済まない…!」
思いっきり頭を下げられた。さて、どうしたもんか……?
「えっと、取り敢えず、頭を上げてください。」
そう言いながら、頭の中で続ける台詞を考える。…よし、こんな感じでいこう。
「でも…」
「だから頭を上げてくださいってば」
その言葉でようやくその女性は頭を上げた。で、先ほど考えた言葉を口にしていく。
「『ISが最強だと信じこんでいた』っていうのは多分、この世界中のほとんどの人間がそうだと思います。というか今でも皆そう信じているでしょう。だから最初は馬鹿にされるのもまあ、しょうがないことです。それに僕も最初は様子見な感じで攻撃を仕掛けましたからおあいこです」
「けど…」
「だから!」
女性が反論しようとしたのを遮って言った。
「次は最初から全力で来てください。俺ももっと訓練頑張って強くなりますし、VF……この機体ももっと強いのを作ります。それでまた模擬戦することになったら今度は最初からお互い本気で、全力で戦(や)りましょう」
挑戦的な笑みを浮かべてそういうと、しばらく呆然としていたが少しすると女性の方もやや獰猛な笑みを浮かべて力強く頷いた。
「ああ!」
元気が出たみたいなので、右手を差し出す。
「
「
「……ああ。よろしく、イーリ」ここは敬語にしたら駄目だろう。
しっかりと握手をしていると、左からオフロードカーが砂地を踏みしめて走る音が聞こえた。
「……っと、迎えのようだな」
「だな。カズトも乗ってくかい?」
「いや、俺はあれに乗って帰るよ」指でVFを示し、
「オートパイロットは一応着いてるけど、これで放置はなんか駄目だろ」
「そりゃそうだ!」
イーリは爆笑してばんばん俺の背中を叩いた。地味に痛い。
オフロードカーから降りてきた金髪の美女がそのまま走り寄ってくる
「イーリ!カズ!」
「「ナタル(さん)!?」」
二人で叫んで、同時にお互いの顔を見る。俺は先に納得した。
「なるほど、同じ代表候補だもんな」
「ああ、そうだ。カズトの方は?」
「同じ企業」
「なるほどな」
イーリも納得した。そんな俺たちの会話をナタルさんはジト目で見ていた。
「ねえカズ。イーリスのことどう呼ぶの?」
「へ?『イーリ』ですけど。それが何か?」
「私のことは?」
「ナタルさん」
「なんで私よりもイーリの方が親しげなのよー!私の方が付き合い長いのにー!」
何故かナタルさんいきなり怒りだした。それを見てイーリはため息をつく。
「…鈍感」
「は?」
どこがだ?年齢差を考えるとフラグをたてた覚えもあんまりないんだが…?
「ははは、いや若さとは素晴らしいですな中将」
「ふふふ、そうだなフォッカー君」
と、後ろから
「そんな顔をする必要はない。少なくともこの戦いを見ていた軍人全員がVFを間違いなく高く評価している。今後の君の開発の成功と操縦技術の上達を祈っているよ」
「中将」とCEOに呼ばれていた軍人さんはシブい笑みをを浮かべてみせた。
「正直、予想以上だ。これからどんどん開発して発展させていってくれ」
CEOもすごくいい笑顔だった。
「は、はい!頑張ります!」
「『アラクネ』の操縦者もナイスファイトだった。今度のモンド・グロッソが楽しみだ」
「あ、ありがとうございます!」
イーリはきっちり礼をしたあと俺を小突いて小声で聞いてきた。
「なんでパイロットのお前に開発の話がくるんだよ?」
「あれ、言ってなかったっけ?開発とテストパイロット両方やっているんだよ」
「……そりゃすげえな」
ややびっくりしていたが、最後は笑みを浮かべて別れた。
「じゃあな、カズト!」
「またな、イーリ!」
これ、映画で撮ったら相当いいシーンだろう、多分。
………もしイーリが、ぶつぶつつぶやき続け半分エクトプラズム出しかけているナタルさんを右手一本で引きずってなければ、の話だが。
ようやくらしさが戻ってきた感じです。また開発戻ったりいろいろやったりします。
というか、イーリスの描写、原作だとすごく少ないんですよね…容姿とか全然書いてないし。
誤字脱字感想等あればよろしくお願いします。