今回は一夏パートが大きいです。
十三話
Side 織斑一夏
セシリアとの試合が終わった。
結局負けたけど、カズのアドバイスのおかげでかなりいい線まで行けたと思う。
『いいか、イギリス代表候補生で専用機持ちという事は恐らく持ち出してくるのはBT兵器を扱う『
「ふーん、どんなISなんだ?」
『ふーんてお前な…。まあいい、基本的に遠距離特化型だ。複数のビットを操り、相手をレーザー光線で串刺しにする。狙撃銃を持って相手の移動も阻害するって言う封殺型って奴だ』
「……どうすればいいんだ?いや、どうすれば勝てる?」
『…いい質問の仕方だ。もし最初の質問しかしなかったら、練習しろとしか言わなかった。相手は恐らくその戦闘スタイルに絶対の自信を持っている。つまりいくら近づこうとしても無駄、と。そこを逆手に取る』
「というと」
『近距離へ突っ込む。ただしむやみに突っ込んでも意味がない。最初は回避しつつ様子見して、隙を見てビットの数を減らす』
「そしてその後に一気に突っ込み」
『近接武器の攻撃を叩き込む』
「なるほどな。わかった、やってみる」
『たしか専用機がくるんだろう?ならそれを零から吸収できるように、剣道なりして基本的な体の動かし方を思い出しとけ』
「わかった、いつもありがとな」
『なに、助け合ってこその親友だろう。そうそう、使用するかどうか解らんが、ブルー・ティアーズはレーザーを曲げる事が出来るらしい。回避しても追っかけてくるかもしれんから、気を抜くなよ』
……にしても毎度毎度思うんだが、あいつはいったいどうやって情報入手しているんだろう?
「どうしてレーザー曲げなかったんだ?」ってセシリアに訊いたら「どうしてそんな事知ってますの?!」って訊かれたし。
さてと、昼食食いにいくか。
「一夏さん、少しお訊きしたいのですが」
「うん?どうしたセシリア、そんな改まって」
「桜井博士ってどんな方ですの?皆さん時折お話に彼の名前を出しますが」
そうだな、セシリアに負けた時も箒に「この映像を和人に見られたら笑われ……、いや、大爆笑されるぞ」とか言われたし、鈴と一緒に無人機と戦った時も「あんたバカなの?和人なの?」って訊かれたし。……あれ?この場合和人はバカ扱いなのか?それとも天才の方なのか?
というかあいつが博士って呼ばれていることに俺としては違和感を覚える。
と、つらつら俺が考えていると
「うーん、そうね、和人の事は一夏が話すのが一番いいと思うけど。あいつ私や箒より一夏との付き合い長いはずだし。………腹立たしい事にね」
「?最後よく聞こえなかったが」
「な、なんでもないわよ!それよりあいつの事でしょ!」
そうだな。でも、うーん、なんて言えばいいんだろう。
「簡単に言うと幼なじみで親友なんだが。あいつは、そうだな、天才ってよく呼ばれているけど全然天才らしくない。普通に遊んだりしてたし、喧嘩とかだってする。超然とした感じがないっていうのかな。多分だけど、あいつにとって興味がある事って言うのは、どれもこれも同じなんだと思う。遊んでいる事と、趣味で何かを発明するっていうのを同じ感覚でやる。けど他の一般人に見向きもしない訳じゃあない、って感じかな」
「そう、なんですの」
「ゴキブリ退治用に殺虫剤を詰め込んだロケットランチャー作った時には笑ったな」
「今のでまた一気に解らなくなりましたわ……」
「まあ、なんというか、姉と同じく、天才故の性格の難はあるという事だ。もっとも彼女ほど重症ではないし、方向性も違うが」
「姉」の言葉を嫌そうに言う箒。やっぱ仲悪いままなのかな。それを鈴が補足する。
「まあ、篠ノ之博士の事はわからないけど、あいつは楽しい事をとことん楽しむ、楽しくなければ楽しい事を作り出そうとする、そんな奴ね」
「だが一方でまじめな時はとことんまじめだ。ものを作ったりしている時にバカにされるのは構わないが、邪魔されたり壊されたりすると本気で怒る」
「空間転移やテラフォーミング、原子力エンジンに重力制御まで様々なところで活躍されているので、もっと冷静で落ち着いた方なのかと思っていましたわ」
意外そうにセシリアが言うのに対し俺は答えた。
「そういう時もあるが、たいていの場合あいつは発明好きの変人だ」
まあでも、あいつと一緒にいると楽しいんだが、な。
Side end
「びえっくしょん!あくしょん!」
突然くしゃみが出た。
『風邪ですか?私には感染さないで下さいね』
「むしろお前に移せたらびっくりだよ!」
とうとう宇宙開発で、取り敢えず火星の領有地とかが決まったらしい。月の方はまだ審議中だけど。
大統領から話聞いたけど、最後あの人とんでもない勢いで高笑いしてたな。それも「おーっほっほ」じゃなくて「フアッハハハハハ」の方。途中で怖くなって逃げたけど。
ただ、効果を確認するためにナノマシンの簡易版をアフリカの砂漠及びオーストラリアの荒れ地に使う事になった。生態系を破壊し過ぎないようにあくまで一部だが。
…大統領、多分これを交渉材料に使ったんだな。
国内で反対起こしているのもいるらしい。「あるがままが一番だ」とか。壊してきたのはお前らだろとか、ヘヴィーオブジェクトのテロリストかとか思ったが気にしてはいけない。
また火星に領有地が出来る事から正式に「アメリカ宇宙軍」が誕生し、『アインヘリヤル』もそこに所属が移った。それと同時にお披露目だった。……しばらく電話はかかってきてほしくない。データくれとかこっち来てくれとかどの国(アメリカと日本除く)ももうやだ。ってことで機関部だけブラックボックスのまま第一世代機を超高値で売ってやった。
それと同時に大統領の要請でテストパイロットと研究者に加えてもうひとつ肩書きが加わった。
「アメリカ宇宙軍技術部最高顧問」である。大統領への直通回線とかは今まで通りだからいいけど中将クラスの指揮権限てなんだ。そんなもん俺に持たせて意味があるのか。
『ある程度好き勝手が出来るようにとの配慮なのでは?』
「……なるほど」
それと顧問というだけであくまで外部の存在。指揮権も客将のようなものなのだそうだ。
まあこんな事態もあったが、あくまで今はISの武装開発が優先である。
『銀の福音』はとうとう7月にハワイでの試験稼働も決まったのだがそれに俺はVFも引っさげて付いていく事になった。なんでも試験稼働が終わった後、そのまま連携運用はどうすればいいか図るためのテストをするそうだ。
何事もなしで済めばいいんだが。……無理かなぁ。
対ゴキブリのロケットランチャーのネタわかる人多いと思うんですよね。あれの二次を書く人少ないですけど。というか私は書ける気がしません。未熟…!
感想誤字脱字等あればよろしくお願いします