福音戦、完結。
激しくどうでも良いかもですがこのシーンをイメージしてる時に作者の頭に流れていたのは「恋のドッグファイト」でした。
十七話
(間に合え、間に合え、間に合え……!)
俺は心の中で念じながら超音速で空を駆け抜けていた。
『目的地まであと百キロです』
じゃあ、もうすぐだな。
戦闘準備を完了させ、いつでも武装を呼び出せるようにしておくと、
『再戦と行くか!』
懐かしい声が、ISのオープンチャネルと繋がる通信から聞こえた。
思わず笑みを浮かべる。
そして、そいつに声をかけた。
「じゃあ、俺も混ぜてもらえるか?」
Side 織斑一夏
『じゃあ、俺も混ぜてもらえるか?』
懐かしいような声が発する、その言葉からしばらくして、
無数のミサイルが福音に降り注ぎ、その後ろから戦闘機が現れた。
「なっ……!?」
銀の福音は突然の攻撃に対応しきれず、回避行動をとったもののほとんどを喰らった。
だがそれよりも、あれは…
見た事がある。あれはVF……IS支援を目的とした可変戦闘機だ。ISよりは性能が劣るものの、従来の戦闘機を遥かに超えたスペックを持っていて、何よりこれを作ったのは……
『何者だ!答えろ!』
ラウラの誰何の声に、そいつは苦笑しながら言った。
『おいおい、俺の事教えてないのかよ、一夏?俺の名前、そいつに教えてやったらどうだ?』
じゃあ、やっぱり…
「お前、和人か!」
『おうよ、アメリカ宇宙軍IS支援可変戦闘機部隊『アインヘリヤル』所属のテストパイロット、桜井和人だ!』
その声と同時、VFは人型ロボット形態へと変形し、呼び出したビームライフルを福音へ向けた。
無論、福音も黙って見ている訳ではない。
反撃のためにエネルギー翼を向けて、
直後、セシリアのビットの大型版のようなものが放ったレーザーに動きを牽制された。
『ナイスだエーネ!』
その言葉と同時、ビームライフルが動きを止めた福音を貫く。
VFの危険度が高いと認識したのか、今度こそ反撃のために福音は超音速でVFの方へ向かうが、再び戦闘機形態へと戻ったVFはそれを遥かに上回る速度で回避し、ガンポッドで迎撃する。
「にしてもどうしてここに……?」
『ハワイ沖の試験稼働に俺も付き合っていてな、止めるのに必要な装備に時間がかかって遅くなった。それと一夏』
「なんだ?」
『銀の福音に乗ってるのはナタルさん……ナターシャ・ファイルスだ』
「っ!あの人か!」
第二回モンド・グロッソの時に会った顔を思い出す。
「じゃあ、怪我させないように倒さなきゃな」
『ああ、できれば、な。かなり難しいぞ』
お前にしてはずいぶんと気弱な台詞じゃないか、カズ?
今の俺には信頼できる仲間がいる。その上親友もいる。
だから…
「できるに、決まってるだろ!」
Side end
「さて、エーネ。戦術変更だな」
『そうですね、練度が低いとはいえ、IS数機を味方に出来たのはかなり大きいです』
「これで、危険を冒しても問題なくなった」
『リスクの低い攻撃を仕掛けるのではないのですか?』
「言っただろ、それなりに頑張りましたって所見せないとまずいって。ここはリスクを冒してでも相手に大ダメージを与える方がいい」
『了解、ブリーフィング通りですね』
「ああ、タイミングは任せる」
一夏へと通信を切り替える。
「一夏」
『なんだカズ?』
「エネルギー残量は?」
『……かなり厳しいなっと!箒!?お前、ダメージは………な、なんだ?エネルギーが、回復?………これは………』
「一夏!」
取り敢えず一瞬で銀の福音へのルートを提示する。何があったか想像がつくがそれは後だ。
「このルートで俺が防御全開で突っ込む!俺を盾にして行けばそれなりにエネルギー消費量が減るだろ?」
『ああ!頼む!』
「遅れるなよ!」
言うやいなや俺はスラスターを全開にしてエーネの出す最短ルートへと突入する。
幸い『レゾナンス』がまだ生きているので、牽制によりある程度弾数が少ない中を、細かく回避しながら突っ込んで行く。
エーネが鋭い叫びを上げる。
『ここです!』
「ピンポイントバリア、全開!」
そのまま一気に加速。
「おおおおおおっ!」
そして……
福音の目の前でバトロイドに変形。
そのままの勢いで拳を福音の背後の翼に向けて叩き込む。
「ピンポイントバリアパンチッ!」
ズガン!
破壊音とともに片翼がもぎ取られる。俺は即座にVFをファイターへと戻して離脱する。
福音はPICをもってしても衝撃には耐えられなかったのか、少しよろめいたところに
一夏が突っ込む。
横薙ぎ一閃をかろうじて回避したところに、箒が上から飛び込み、残りの翼の三分の一を破壊。
回し蹴りを追撃で叩き込まれたところに一夏が攻撃に入る。
残りの光翼をほぼ全てかき消し、
白く輝く刃でもってとどめの一撃を突き込む。
最大出力で突きの威力を増幅させる。
そして、福音がようやく………停止した。
アーマーを失いISスーツだけになったナタルさんが落ちて行く。
一夏は慌てていたが、俺は冷静だった。
「エーネ」
『御意』
レゾナンスの一機が滑り込み、衝撃をあまり与えずに受け止めた。
「ふう。一夏」
通信で親友に呼びかける。
『な、なんだ?』
箒と並んでいた一夏は突然声をかけられてどもった。
「ナタルさん、そっちで預かってくれないか?このVF、単座式だし、そのユニットは人を入れるスペースがないんだ。明日には政府の人間が迎えに行くはずだから」
『わかった、任せろ』
「じゃあ俺はこれで帰る。っと、箒!誕生日おめでとうな!」
箒に通信を切り替える。
『あ、ああ、ありがとう』
「お前の部屋に誕生日プレゼント送っておいたからな、上手く使えよ!」
『!…感謝する!』
「ん。じゃあ一夏、多分また夏休み中にそっち行くから」
『おう、楽しみにしてる!』
「じゃあ、うちの福音の暴走止めるの手伝ってくれた方々、感謝する!」
バトロイドに変形し敬礼。
他のIS達が答礼してるのを確認し、
中指と人差し指だけをたてた状態にしてピッと手を振ってみせ、
「
ファイターに戻して基地への道へと飛び立った。
長いので完結辺りを前後半で切りました。
ちなみに、福音の武装に本格的に手を加えるのはここから後になります。
次回、後日談。三巻 缶結です。
感想誤字脱字等あればよろしくお願いいたします。