更新遅れてすみません。
中古で買ったユグドラ・ユニオンにハマってました。
さて、今回は戦闘です。短期決戦なのを考えると描写は多めかな?
二十四話
というわけで実戦訓練である。
ピットに入った俺は、何故かのほほんさんから激励を受けていた。
……ついでに言うと、一夏はこっちに来たがっていたのだが、俺が箒のピットの方へと向かうように言っておいた。何故かって?
……オルコットと箒の目が半端なく怖かったからだよ! あのままだったら死ぬ!
「にしても、なんで布仏さんがここに?」
「一番最初はー、私の言葉がきっかけだからね〜」
「別に気にすることないと思うけど」
ノリすぎた俺が悪いんだし。……けど。
「第四世代か……。勝てるのかなぁ?」
「さくらんならー、何とかなると思うよ〜」
「結構気楽だな!」
応援しにきたというのに真剣味が欠片も感じられなかった。適当すぎる。
「だぁいじょうぶだってー。頑張ってね〜!」
「あ、あはは……じゃあ行ってきます」
ピットから出るための準備態勢を操縦するIS『
「行ってらっしゃーい」
気の抜けるような声を背に受けつつ、
俺はアリーナの上に広がる遥かな蒼穹へと飛び出した。
「ふ、逃げずにここまで来たことは褒めてやろう」
「………それはこちらの台詞ではないか?」
凄まじい殺気を迸らせながら箒が俺の台詞に答える。
「一度言ってみたかったんだ。それだけ」
「このタイミングで言う必要があったのか?」
「……さあ?」
俺が首を傾げてみせると、箒はぷるぷると震えだした。
うん、『ぷるぷる』って効果音としては可愛らしいけど、実際に殺気つきでやられると怖いだけだな!
取り敢えずこのままだとまずい。色んな意味で。
「落ち着け箒、平常心だ」
「……誰がその平常心を崩しているのか分かっての発言か?」
「誰だそいつ。ぶちのめしてやらないと」
「鏡を見ろぉ!」
「うん? ……今日も俺かっこいいな。俺の美しさに何か問題でも?」
「き・さ・ま・は………!」
つい癖でやりすぎた! ヤバいどうしよう! っく、ならば……
「だから深呼吸して落ち着けってば。……一夏がドン引きしてるぞ」
切り札を切る。
「な……! く……!」
「……落ち着いたか?」
「………非常に不本意だがな」
危なかった。戦闘シーンでもないのに非常に緊迫した空気だったぜ。
………っていうかこれからその非常に緊迫した戦闘シーンが始まるんだがな!
試合開始の合図まであと、少し………。
五、四、三、二、一……試合開始。
「撃ち抜く!」
「両断する!」
試合開始直後、箒は一直線にこっちに近づき斬り掛かろうとしてきた。
即座にフォートレスを展開。今日は装備しているのは大型粒子砲で、動かしているのは実体剣とプラズマ砲だ。
「くっ!」
足止めされた上、楯に対して攻撃が効かないからだろう、箒は苦々しい……いや、焦った表情となる。
そこにストライクカノンからレールキャノンを発射。
ズドン!
「っ!」
箒はそれをどうにか回避するが、今度はこっちの攻撃だ。
「エーネ、実体剣の制御を頼む」
『御意』
素早く実体剣が斬り掛かる。
ガギィン!
それを箒が二刀で防ぐ間に、
ドォン!
プラズマ砲が後方から襲いかかる。
「こ……のっ!」
箒は脚部、背部装甲を展開。宙返りをするようにして実体剣を蹴り飛ばし、体をひねってプラズマ砲を躱す。
だがそれを予測していた俺は両腕にある大型粒子砲とストライクカノンで回避した先を砲撃。
ドドォン!
今度こそ直撃。
「ぐっ……!」
だがそこで俺は手を緩めない。そこにさらに実体剣が突っ込み、プラズマ砲が追撃をする。先ほど蹴り飛ばされた実体剣だが、その程度でやられるほど柔な作りではないのだ。
………俺が操るフォートレスと、オルコットが用いるブルー・ティアーズの違いの一つが、ここに如実に現れている。
フォートレスの場合、防御中心で数が少ない一方で、耐久力があり、種類も多様で切り替えが出来る。装備したり外したりの着脱によって。
一方、ブルーティアーズは攻撃特化で数があるものの、耐久力はあまりなく、種類は基本的に一種類だ。ミサイルの方も含めれば二種類だが、結局射撃しかない。切り替えもあんま効かないからな。
だから、ブルー・ティアーズのように同じものを何個も操る……遠距離射撃特化は不可能だが、
近距離、中距離、遠距離の、
このままではジリ貧だと考えたのか、箒は実体剣を受け止めずに躱し、こちらへと突っ込んできた。プラズマ砲が追うがハイパーセンサーを用いて回避される。ストライクカノンと粒子砲も躱しやがった。
そのまま、フォートレス二機を置き去りにしてこちらに向かう箒は、
「はぁっ!」
二刀からエネルギー攻撃。点の形でやってくる攻撃と、線の形でやってくる攻撃。
即座に左手のフォートレスの偏向防御を作動させ防ぐ。反撃としてストライクカノンを撃ち込む。
「そこだぁっ!」
平然と躱し、猛然とこちらに斬り掛かる。右上と左上から、思い切り振り下ろしてきた。
「っなら!」
さらに防御を発動。二刀を楯でまとめて受け止める。
勿論、ストライクカノンをプラズマブレードモードにしても、全国大会優勝者に剣で敵うはずもない。防御範囲外からの攻撃によって、フォートレス二機が追いつくまでにシールドエネルギーを削り切られる可能性も十分にある。
だから、これはわずかな時間稼ぎ。
「……展開」
「……っなに!?」
もう一度、今度は防御範囲外から攻撃を仕掛けようと剣を振り下ろそうとしていた箒が目を見開く。
右腕部の形状が変化。同時にストライクカノンがガトリングレールキャノンへと変化する。
箒の斬撃にダメージを受けつつも、俺は笑ってみせる。
ガトリングの砲口を箒のIS……紅椿に押し付けて。
「……躱せないよな?」
「く………!」
ズダダダダダダダダダダ!
ガトリングが咆哮し、紅椿に無数の弾丸を叩き込む。
試合終了を告げるアラームが、アリーナに鳴り響く。
俺の、勝ちだ………。
「よし、初勝利、だな……」
アメリカじゃイーリにもナタルにも一回も勝てなかったしな。やっぱ嬉しいものがある。
『ええ、勝ってしまいましたね』
「……おい、エーネ。何だその俺の勝利を残念がるような発言は。初勝利ぐらい噛み締めさせ……」
『だって』
エーネは人間だったらため息まじりな声を出しそうな感じで……つまるところ呆れたように言った。
『これで箒さんとオルコットさんのストレス解消は
「………………………………あ」
忘れてた。
冷や汗がだらだらとまた流れ始める。
『まあ? 次の試合で負けてあげれば何とかなるでしょうけど? この調子だと勝ちそうですし? 手加減とかしたら余計にストレスたまるでしょうね』
撃墜した箒からとんでもない殺気を込めて睨みつけられる。
修羅の視線を他の見ている人の中からも感じた。
一難去ってまた一難。
……箒との第二戦、後半戦も俺が勝利した。してしまった。
………試合後、『視線で人が殺せたら………!』と言わんばかりの二対の視線が突き刺さったことは言うまでもない。
また話のオチがどうしようもない主人公でありました。
そうそう、書いてなかったかもしれませんが、偏向防御にも限界があります。あくまで楯を中心に発動するので、発動範囲外での攻撃には対処しきれません。そうじゃなきゃただのチートな絶対防御です。
まだ五巻開始から二ページ分。書いてる人間が言うのもなんですが………、遅いな、ずいぶんと!