戦闘終了後の一幕。
二十五話
俺が二連勝してしまった実戦訓練。その後片付けの時のことだ。
取り敢えず、ジャンピングDOGEZAでは足りなさそうなので、必殺技を使うことにした。
左足の指先の部分で地面を蹴り、くるくると華麗に三回転半ジャンプ。
着地体勢に入ったとき俺は完全な土下座の体勢に入っていた。
着地と同時に謝罪。
「調子乗ってすみませんでしたぁ!」
「………っこれは! 伝説のトリプルアクセル土下座!」
「知ってるの〜、おりむー?」
「うむ、聞いたことがある………」
のほほんさんがほんわかし、一夏が感動している横で、
箒とオルコットは「……はぁ」と同時にため息をついていた。
「箒さん、貴女のおっしゃっていたことがようやく分かりましたわ」
「そうか。分かってもらえて何よりだ」
「『束博士とは違う方向性で性格の難がある』………こういうことでしたのね」
「そう、そしてこいつと関わる上で大事なことは一つだけだ」
「わたくし、その答えが分かったような気がしますわ。それは……」
二人は声を揃えた。
「「あまり気にしすぎないこと」」
「この人と関わることで以前よりもわたくし、寛大になれそうな気がします」
オルコットの声が何か悟ったような声になってる気がする。
「実際私はこいつと一夏のせいでかなり寛大になったぞ」
オルコットと似たような声で発せられる箒のその一言にオルコットは涙ぐんだ。
「大変な幼少時代でしたのね……」
「「いやあ、それほどでも」」
「あなた達には言っていませんわ!」
俺と一夏が照れくさそうに頬をかくとオルコットのツッコミが炸裂した。
その後俺達は学食にやってきた。
俺のメニューはホイコーロー定食だ。ソースの塩加減も完璧だし、肉と野菜もこげたり油っぽくなったりすることなく見事に炒められている。これがまたご飯によく合うのだ。ここの学食のおばちゃん、やるな……!
久しぶりのご飯に幸せな気分になりながらぱくりとご飯をほおばる。帰ってきて以来いっつもこんな感じだ。
「なんていうか、お前凄い幸せそうにご飯食べるなあ」
一夏が俺を見て感想を述べるので、理由を話す。
「ご飯が懐かしいってのもあるけど、やっぱ三食がまともに美味しいものを食えるってのは幸せだよ」
「ちょっと待て。美味しいは分かるが、
一夏が眉を寄せて聞き返す。その言葉に俺は遠い目をした。
「いや、だってさ、研究職だぞ? 開発中は睡眠も食事も満足にできるわけないじゃないか。何度十秒メシやらレーションやらのお世話になったことか………。っていうかIS作ってたときずっとそんな感じだったし」
「………もっと倉持技研の人に感謝するようにしよう」
「そうしてくれ」
と、向かい側ではお菓子の話になっていた。
「えっ、ベルリーナー・プファンクーヘンって、ジャム入りの揚げパンだよね? しかも、バニラの衣が乗っているからカロリー凄いと思うけど……セシリアはアレが好きなの?」
「わ、わたくしはちゃんとカロリー計算をするから大丈夫なのですわ! そう、ベルリーナーを食べる時はその日その他に何も口にしない覚悟で……」
と思いきやいつの間にかカロリーの話になり、さらに断食の話になっていた。
「ジャム入り揚げパンか、確かにうまそうだ」
おお、菓子の話に戻った。
箒が頷いているのを見て、俺は小学校の給食の時を思い返していた。
「ああ、そういやお前、クラスの女子でただ一人揚げパンをばっちり完食してたっけ」
俺の懐古しながらの発言に、泡を食って一夏が叱責してきた。
「ば、バカ、カズ! 思っていても言ってはならないことだってあるんだぞ!?」
「……ほう。つまり一夏、お前もそう思っていたというわけか」
「い、いや、その………!」
静かな箒の声に、一夏はしどろもどろになる。
「デリカシーないわねー」
「本当にね」
「全くだ」
「その通りですわ」
他の女子達は鈴の言葉にうんうん頷いていた。
一夏の箒に対する言い訳が一通り終わると、今度はISの話になった。
「いいなぁ、お前のIS。燃費もいいし」
「まあ結構調節したし運用の訓練もしたからな。元はそこまで燃費よくなかったんだぞ?」
「そっかぁ。調節と運用かー。うーん……」
一夏が考え込んでいたところに、箒が余計な一言を加えたせいでまた場が混乱することになった。
「ま、まあ、アレだな! そんな問題も私と組めば解決だな!」
……そこから先、苦手な距離だの嫁だの幼なじみだのなんだので女子達は大いに揉めた。
「モテモテだな、一夏」
「いや、でも別に最近ペア参加のトーナメントとかないしなあ」
「いきなりあるかもしれないでしょうが」
「そのときは……シャルかカズで悩むなあ」
一夏のいきなりな一言に俺とデュノアは思わず素っ頓狂な声を上げてしまった
「「へっ? 俺(僕)!?」」
「おう、シャルとは前に組んだし、カズとはそれこそ一番古い幼なじみで、得意な距離を考えても合いそうだからな」
その一言にシャルの目のハイライトが消えた。
「あ、そう………どうせそんなことだろうと思ってたよ………はあ……」
その後、一夏は女子から一斉に非難を浴びていた。
シャルは皆が一夏を怒ったことに対して感激しているようだった。
………なんかその後に一夏が二発ずつ箒とボーデヴィッヒの手刀を喰らっていた。どうせデュノアと見比べて「愛嬌ないなあ」とか考えてたんだろ。
昼食が終わる頃。
「ああ、そうだ、一夏」
俺はにやにやと笑いながら、一夏に話しかけた。
「ん? なんだ?」
「さっきの話の続きだけど、今度俺達でペア組もうぜ。相性いいんだし、色んな相手とペアの経験積んでおいても損は無いだろ?」
「……おお、そういう考え方もあるか」
一夏が頷いてるのを見て、女子達は顔色を変えた。
「っ! 抜け駆けだぞ!」
「ずるいわよ和人!」
「お、男同士でなんて非生産的ですわ!」
「「………は?」」
オルコットの声に俺と一夏は首を傾げた。今の話のどこに生産の要素があったのだろう。
「セシリア、落ち着きなさい。それは絶対にないって以前私が言ったじゃない」
「そ、そうでした………」
こいつまで以前の鈴と同じ勘違いかよ………。
……まあ、そんなこんなで俺達は午後の実習に向けて再度アリーナへと向かった。
ISの新刊が八月以降であることを知って予定が崩れてやや困惑中。
うーん。このスピードなら週二でも大丈夫なのかな……?
や、でも週一にしないと八巻が発売した後余裕が消滅するような……
可変戦闘機が出てくるのは時系列的に少し先になりそうです。具体的にいうと二章辺りまで。
次回、生徒会長登場。