すみません、活動報告でも書いた通り、いろいろごたごたがあって書くのが相当遅れてしまいました。申し訳ありません。
てなわけで、本編の続き、いきます。
……あ、それと、相当今更ですけど、つまらないと感じた方は即座にブラウザバックしていただいて結構ですよ? 見てほしくはありますが、別に強要してるわけでもありませんし。
好みは人それぞれですし、自分は書きたいように書くだけなので合わない方も当然いるでしょうから。
こんなことを何で言い出すかって言うのはまあ……察してください。
三十話
VFの方を見た次の日、俺は取るべきデータ等をチェックするため、いち早く寮に戻ってきていた。
が、部屋に戻ったとき、そこにはすでに先客がいた。
「……ああ、会長。どうしたんですか」
「ちょっと頼みがあるんだけど、いいかしら」
更識会長はぱちりとウィンク。
「はい、いいですけど?」
「部屋、移ってくれない? 一人部屋を用意するから」
一人部屋か。いろいろ学園祭に向けて準備しなきゃと思ってたところだしちょうどいいかも。
「っていうことは一夏は……」
「私と同じ部屋で寝ることになるわね。私、今日からここに住むつもりだから」
「なるほど、分かりました。荷物まとめるの手伝っていただけますか?」
面白くなるはずだし、それ以外にもメリットがあるので即答した。
「もちろん!」
俺達はすさまじい速度で少ない荷物を纏め上げる。
「そうそう、会長。迎えるときは……」
「『お帰りなさい。ご飯にします? お風呂にします? それともわ・た・し?』にするわ」
さすが、分かっていらっしゃる。
俺は会長にサムズアップして新しい自分の部屋へと移動した。
とりあえず、一人部屋で荷解きをしてから、学園祭への準備をする。
……つまり、女装の練習である。
「さてエーネ、どんなキャラで行こうか?」
『そこまでマジでやるんですね……。そうですね、とりあえずキャラ被りはよろしくないかと』
その言葉に普段の専用機持ちの連中とかを思い浮かべてみる。
「ってことはだめなのは……生真面目、ぼくっ娘、ツンデレ、お嬢様、ロリ、軍人ってとこか」
『そもそもあなた、どうやってロリになるんですか? ……それはともかく、箒さんは淑女というよりむしろ武士なので、「穏やかな和風美人」という方針がよろしいかと』
「よし、じゃあキャラ作りの練習をするか」
といってもこのキャラは実は結構得意である。もう何回繰り返しているのか数えるのも面倒だが、顔は早乙女アルトそっくりなのだ。
メイド服はまだ届いていないので、女物の着物を着てみることにする。
服を脱ぎ、衣装に手を掛け……、
二つの影が飛び込んできた。
「おいこらカズ! 何であっさり部屋換え承諾したんだよ! ……って、え?」
「一夏の言うとおりだ! 男女七歳にして席を同じうせずという言葉を……」
一夏と箒は俺の姿を見た瞬間に凍りついた。
より正確に言うならば、着物服に手を掛けたままの、半裸の俺の姿を。
「………きゃあぁぁぁぁぁぁーーーー!」
絹を裂くような悲鳴を上げてしまった。
「……全く、あなた達はそれでも高校生ですか?」
慌てて箒と一夏が部屋を出てからすぐに着替え、そこから俺は説教モードに突入した。
ちなみに制服ではなく、着物に着替えたのである。ポニーテールに近い状態のままだと箒とキャラが被るので、髪は下ろしている。
織斑先生に見つかったときの言い訳は決定している。「学園祭の準備と練習」だ。
「箒さん、男女七歳にして席を同じうせずという言葉を知っていながら、『部屋に入るときはノックをする』という常識はあなたの頭の中から抜け落ちているのですか?」
「……申し訳ない」
「一夏さんも、分かっていますね? あなたはこういうことを無自覚にやりがちなのですから、気をつけなければなりませんよ?」
「……はい。って待て、別にそんなことあんまりしてないぞ!?」
「だから言ってるでしょう、無自覚に、と。箒さんはどう思いますか、このことに関して」
「……お前の言うとおりだ」
「え、ちょ、箒!?」
背中を撃たれたに等しい一夏はあまりの衝撃に顔を引きつらせた。
ちなみに俺の格好については「学園祭のため」の一言で黙らせた。「決定したのはあなたたちでしょう?」と笑顔で言ったらがたがた震えながら頷いていた。何がそんなに怖かったんだろう。
「それでカズ……」
「『
「……じゃあのどか、なんで部屋換えの承諾をしたんだ?」
「露骨に話題をそらしましたね」
「そうだな」
箒と頷きあった。
「箒、お前はいったいどっちの味方なんだ!?」
一夏が驚愕に叫ぶのを見てため息をつく。
「まあ、ともかく。会長からお聞きとは思いますが、コーチをするために様子や経過を観察し、波長を合わせなければならないという言葉に納得したのが大きいです」
「そこまでする必要があるのか? 普段の訓練の間でも経過は見れるし、波長も合わせていけるものだろう」
箒が疑問に眉を寄せたのに対し、ある程度の賛意を示すために頷いて見せた。
「今が完全な平時であれば、あるいは、コーチする相手が一夏さんでなければそれもよかったでしょうね」
「それじゃ今は……平時じゃない、しかも俺が教えられる相手なのが問題なのか?」
「ええ」
一夏の言葉にはっきりと頷いたことで二人の表情がやや強張った。「平時じゃない」ということをあっさりと認めてしまったからであろう。
「そもそも、一夏さん。あなたが入学してからずっとIS学園はトラブルの渦中にあります。無論、あなたのせいとは言いませんし、あなたとは直接の関わりが薄いものもありますが、それでもあなたを狙う輩がいるというのは間違いありませんし、その中にはおそらくISを保有する者たちもいるでしょう」
「……そのための、訓練だと?」
あえぐような箒の問い。
「そのとおりです。先生方もできる限りのことをしてくださるでしょうが、最低限自分のみは守れるようにならなければならない。しかもこんな風に立て続けに事件が起きるとなると、自然とその訓練は急を要します」
「……だから、波長を合わせるのもできる限り早めたほうがいいってわけか」
「はい。………それに」
「それに?」
続きを促す一夏に頷きを返す。
「IS学園はさらに狙われる要因が増えました。……箒さん、あなたです。いえ、あなたのIS、というほうが正確でしょうか」
「『紅椿』……世界で唯一の第四世代IS、か」
持ち主であると同時に、製作者の妹である箒が呟く。
「しかもISの生みの親たる篠ノ之束謹製です。おそらく、あなた方を狙ってこの二学期からはますます不穏な事態が増えるでしょう」
「……お前も狙われる対象だろ、VFの生みの親」
「……そうですね。確かにそのとおりではありますが、こちらもそれなりに努力はしていますよ? 白鳥が
エネルギー効率、敵との戦いにおける得意距離とかもな。
「なるほど。だから私にもアドバイスをし、狙われたときに一番危険に陥りやすい一夏を短期でできるだけ強くなるように鍛えているというわけか」
二人とも納得したようでよかった。会長の思いやりにも気づいたようだし。
「まあそもそも会長の言うことですから役員は逆らえませんし、何より面白そうでしたしね」
「「最後に本音が漏れたな!!」」
ボソッとした俺の呟きに、やれやれと帰りかけていた二人はものすごいスピードで振り返った。
あと一話で学園祭準備編は終了……のはずです。多分。
そろそろ、VFのほうも話が動き始めるかも?