やったよ皆、ちゃんとシリアスに出来たよ……。
もう、ゴールしてもいい、よね………。
三十五話
という訳で従者な格好に着替えてきた。というか、本来俺が着るはずだった執事服だった。複雑である。
のほほんさんはメイド服だった。ほんわかしている空気故に仕事ができるメイドさんというよりものんびりドジッ子メイドと言った感じである。
『まあ、私が人化したら完璧に仕事ができるメイドそのものですが』
「元ネタがそうなんだから当たり前だろ」
そして実体化できるアイテムなんか絶対に作らない。余裕で俺のストレスがマッハになる。
出来るメイドは俺とオルコットのとこのチェルシーさんと虚さんだけで十分だ。
『筆頭に自分を置きますか』
「いや、俺は三人の中で一番の小物よ……」
『なるほど、スカルミリョーネなのですね。四天王とかにするならせめてもう一人入れればいいのでは? 私とか』
「断固拒否だ。そしてなぜ数ある四天王の中でそれを選んだ」
『
「電子機器が神とか言うな。というかメタすぎる!」
まあ確かに面倒な相手だったが………。
不毛な会話をしつつ、開始の合図を待つ。
「布仏さん、ここで分かれよう。一夏がどっちに逃げるか分からないから手分けして待ち伏せて追跡。後で合流。どう?」
「りょーかい〜」
のほほんさんと頷き合い、俺たちは分かれて移動した。
「うーん、のほほんさんの方か……」
「よし、最短ルートで行こう。エーネ、ナビゲートよろしく」
『了解しました』
こういうときは真面目だから困る。普段はアレでも仕事はきっちりこなすのだ。
「あれ、そういえば桜井君は王子様じゃないの?」
廊下を駆け抜け、階段を二段飛ばしで降りつつ、声をかけてくる
「ああ、俺は生徒会のスタッフだから」
「そっかー」
「でも、ちょっと残念だなー」
「………言っとくけど俺、部屋の中ではいつもメイド服だよ?」
『それだけはやめて!』
そこでなぜか皆声が揃った。
「………冗談のつもりだったんだが」
『自業自得かと』
「……うん、分かってる」
学校内を駆けずり回る女子を上手く撒きつつ、着いた先は更衣室である。
お、今のほほんさんも別のドアから入るみたいだな。
子猫よろしくロッカーに隠れて震えている一夏を想像してすこしにやけつつ、ドアを開けると、
「なっ………!」
一夏が壁に叩き付けられていて、
それをやったと思しき見覚えのない女が、装着したISの装甲脚で、
呆然として突っ立っているのほほんさんを、貫こうとしていた。
「………っざっけんな!」
天狼を緊急展開、即座にフォートレスの一機、プラズマ砲を搭載したものをのほほんさんの前に飛ばし、一瞬で偏向防御を展開する。
装甲脚が壁にめり込む。どうにか防ぎきれたようだった。
っつーか、装甲脚だと?
………よくよく見ると、それは見覚えのあるISだった。
……そういうことか。
「ちっ、また乱入者かよ、どうなってやがる! ここの全システムはロックしてんだぞ!」
「…アホかお前。俺たちは生徒会、そんな制限なんて関係ないに決まってるだろうが」
「はあ!? まあいい、見られたからにはお前も殺す!」
今度はこっちを襲う装甲脚を、左腕に装着したフォートレスの偏向防御でなんなく防ぐ。
「一夏、説明」
一応確認のために一夏に質問する。
「あいつはオータムって名前で、亡国機業っていう秘密結社の人間らしい。あいつ、俺の白式を奪いやがった……!」
「……ふぅん」
怒りを隠しきれない一夏の言葉に俺はただ、そう返す。
「何余裕ぶってるんだよ、ガキが!」
「……余裕に決まってるだろうがこの
「んだとぉ!?」
実際傷一つ負わずに機関砲の攻撃を防ぎつつ、俺はそう返す。
本当に、弱い。
イーリの乗っていたアラクネは、初めてVFが戦ったISは、
……もっと、強かった。
どうにか態勢を立て直したらしい一夏に声をかける。
「おい一夏。まだ白式のコアは初期化されていない、お前のISのままだ。だから呼べ。ISは望めば応えるはずだ」
「……わかった」
一夏は静かに頷いた。
そして、視線を奥にいるのほほんさんに移す。
「布仏さん。ごめん、もうちょっと待ってて。すぐにこいつ、片付けるから」
やかましい弾雨の中、フォートレスの機能を使って言葉を伝える。
『……うん、待ってるー』
か細い声ではあったものの、のほほんさんは言ってくれた。俺を信じて待つと、そう言ってくれた。
「……ありがと」
礼を言って、向き直る。同時に右手に持っているストライクカノンの引き金をしぼる。
レールキャノンが、両手で練っていたクモの糸を一瞬で吹き飛ばした。
それにオータムとかいう敵の女が舌打ちする。
「くそっ、なんなんだよ!」
「うるせえよ、亡国機業…………前に一夏を誘拐し、最近じゃ
冷たい声で言い放つ。
「カズ……」
どうやら一夏は気づいたらしい。
俺は今、本気で切れている。
一夏からISを奪って殺そうとし、さらにはのほほんさんもついでで殺そうとしていた、こいつに。
そしてこのことを忘れていた、自分自身に。
「はあ? ちゃんと守ってねえから奪われるんだよ! 特にVFなんか守ってる連中は男ばっか、ISも持ってねーから奪うのは楽だったな。ははは!」
「………そうか。じゃあ……
………ちゃんと守ってないお前の命も、奪っていいんだな?」
ここは法の埒外。ましてやテロリストを正当防衛で潰しても、全く問題ない。
「なめんじゃねえよ、ガキが!」
激昂したオータムがカタールの二刀で切り掛かってくるが、移動しつつストライクカノンのプラズマブレードで難なくまとめて弾き返す。
「舐めてんのはお前だ。友達の元愛機と俺が作ったものを奪って犯罪に利用し、挙げ句の果てには俺の人生を楽しくしてくれる奴と俺を癒してくれる子を殺そうとしといて、お前が何の報復も受けねえだと? ……ありえねえだろ、それは」
すかさずフォートレスの実体剣が真横からアラクネを貫こうとするが、距離をとって回避された。
「ちっ……!」
舌打ちを目の前のオータムがするが、俺はそれを冷たい目で見るのみだ。
容赦なく左腕に装着した粒子砲を放つ。
防御はしているものの、元々の防御力が薄いアラクネの装甲脚を一本、易々と破壊する。
「……やっぱ、下手だ」
左腕に装着してるフォートレスの種類を実体剣へと替えつつ、呟く。
もともとアラクネは機動性と攻撃力重視のISだ。近接戦で相手を封殺するのが常套手段。実体剣の攻撃など装甲脚を二本くらい使って弾き返し、そのまま俺に近接戦を挑めば、もう少し俺にとってヤバい状況になっていたかもしれない。
だが、距離が開いてしまった。
障害物が多いため、この状況では、
あいつは、ただのいい的だ。
「なあ、諦めて降伏したらどうだ? ………お前は既に、包囲されているぞ」
「!?」
俺のまるで警察が犯人に言うような言葉に、ぎくりとして急いで周りを見渡す女へと、三つの砲口が向いていた。
のほほんさんの前からプラズマ砲。
一夏の前から大口径粒子砲。
そして俺が持つストライクカノン。
全てエネルギー充填済み。
これが俺のガトリングレールキャノンと並ぶもう一つの切り札。
大火力による完全殲滅砲撃。
………まあ、降伏しても許さないけど。
「し、しまっ……!」
「エクサランスカノン・
次の瞬間、大火力の咆哮に女は飲み込まれた。
さて、復活しました作者です。
……この話はこの物語には珍しく本気で苦労しました。
………隙あらば電波がささやくのです。「ネタをいれろ」と。
扉を開けて戦闘してるのを見て「お邪魔しましたー」とか。
和人がオータムに「今IS学園にいる中でもっとも冴えなくて下品で卑しい女」って呼びかけるとか。
「のほほんさんはともかく一夏はどうでもいい」「ひどっ!」などと言わせるとか。
……どんだけギャグとネタ脳に汚染されてるんでしょうね?
どうにかシリアスシーン以前にネタを入れて、しかも閑話を増やすことで電波を妥協させましたけど、ホントになんで必要ないときにポンポン浮かんで必要な時に浮かびにくいのだか……。物欲センサーがネタにもあるんでしょうか。
あ、ちなみに途中の四天王の話はマジです。ポケモンとかより何よりアレに泣かされました。ちなみにPSのコレクションのものです。後少しでパラディンってところで………!
さてシリアスな空気が後少しだけ続きます。というか、頑張って続かせます。
俺、次回が終わったらネタ全開にするんだ………。
………死亡フラグにならないことを切に願います。ええ。
……今思いつきましたけど、あの電波……読者の皆さんから受信したとかは………ない、ですよね?