Q.なんで更新が早いのか?
A.ギャグを書きたいというフラストレーションが溜まっていたから。
それだけです。はい。
今回はシュールな感じになってるような……。そしてネタ全開です。
閑話 影響5-1
それは悲惨な事件であった。
箝口令が敷かれたものの、そんな物がなかったとしても、噂好きの女子だろうと口をつぐんだであろう。
ここに書かれているのは新聞部ですらその記事を書かなかったという、IS学園の秘事、その顛末である。
事件は二学期の始め、一年生のあるクラスでの転校生の自己紹介の時に起きた。
「わかったら返事をしろ、わからなくても返事をしろ。私の言葉には返事をしろ………グハッ!」
「私の真似をするな馬鹿者」
ここまでは普通だった。いや、普通には見えないかもしれないがまあ許容範囲内だった。
次の一言が問題だったのだ。
「もえもえ……きゅ」
「「「「「ちょ」」」」」
言い終わる前に、キュン、という奇妙な音が鳴り、直後に転校生が5mほど黒板側に吹き飛んだ。
黒板の近くに立っていて黒板側に5m吹き飛んだ……つまり壁をぶち抜いたのだ。
その瞬間の事を目撃者のA氏はこう語った。
「動きが全く見えませんでした………。振り切った後の出席簿の先端から煙みたいな………多分水蒸気が出てました。音速を突破していたんだと思います。その後に大きな音がして、気がついたら桜井君の姿が消えていました」
出席簿でぶち抜いた壁を抜け、和人を引きずって戻ってきた千冬はクラスを見回した。
「………織斑、篠ノ之、デュノア、ボーデヴィッヒ、オルコット」
びくっ、と名を呼ばれた五人は体を震わせた。
「おまえ達の反応、妙だったな。…………
その言葉が終わる前に全員が本能的に、記録的な速度で教室を脱走していた。
火事場の馬鹿力というのはまさにこういうのを言うのだろう。なにせ、かつてのブリュンヒルデの手を一時的ながらも逃れたのだから。
「ふむ………」
千冬は完全な無表情で開け放たれた扉を見た。
そんな自由を求めて逃走したおよそ15歳の五人は並走しながら怒鳴り合っていた。十五歳だからといって別に窓ガラスを壊して逃げたりバイクを盗んで逃走する訳ではないらしい。
皆恐怖で顔が引きつり、眼が潤んでいる。
「こ、これからどうする、箒!?」
一夏が声を張る。ちなみに、責任の押し付け合いをしていないのはそんな精神的余裕などとっくに失われているからである。
「なぜ私に聞くっ!?」
「だってモッピーは何でも知ってるんだろっ!?」
それを聞いた他の3人は驚愕した。
「なに、そうなのか!?」
「頼むよモッピー!」
「私達の最後の命綱ですわね……!」
「過度な期待をするなぁああああ!」
もはや隠れる気というか余裕は皆無である。全力に近い速度で走りながら箒は涙眼で絶叫した。
「私だって何でもは知らない、知ってることだけだ! というか、モッピーが知ってるのは売上だけだ! そして私はモッピーではない! アレは私に似た別のナニカだ!」
「そうか………終わったな」
「そうだな」
「短い生でしたわね………」
「あ、諦めるのはまだ早いと思うんだ!」
こういう所で苦労するのは真面目と噂のシャルロットである。
「じゃ、じゃあ何か方法でもあるのか!」
過度な期待をされていた箒が今度はシャルに過度な期待をした。
「二手に分かれよう。戦力的に考えて僕と一夏、箒とラウラで」
「「「なるほどわかった!」」」
ちなみに、もうこのとき完全に嫁やら恋やらの話はラウラと箒の頭の中から消し飛んでいる。
そのことすら予想して、この組み合わせを決めたのだとすれば、シャルは真面目に見えて実は腹黒いと言えよう。
「ってちょっとお待ちなさいな!」
「どうしたの、セシリア? 速度は問題ないはずだけど……」
声を上げたセシリアに残り全員が不思議そうな顔を向けた。
「わたくしはっ? わたくしはどうするんですの!?」
言われてみれば組み合わせに名前がない。これはしたり。
「あなたのせいですのっ!?」
いきなり宙に向かって声をあげたセシリアを皆が気味悪がった。
「ど、どうしたんだ、セシリア……なにか見えたのか?」
おそるおそる聞く箒にセシリアは首を傾げた。
「いえ、何となく世界の悪意を感じたというか………。それで結局わたくしはどうすれば?」
「うん。………隠れて待機」
「はぁっ!? それで何とかなると思ってますの?」
シャルの言葉にセシリアは目を剥いた。
「………だ、大丈夫だ、セシリアのスルースキルを持ってすれば!」
「そんな嫌なスキル持った覚えはありませんわぁあああ!」
一夏のフォローに今度はセシリアが涙目で吠えた。
「言われてみれば………確かに閑話では良くスルーされているな」
「た、確かに」
「…………………!」
ラウラと箒が頷き合うのを見てセシリアは感情のメーターが振り切れ、もはや何も言えなくなっていた。
というかメタなネタであるが誰も突っ込む奴がいない。全員に状態異常の「混乱」でもかかっているのだろうか。それにしてはわけもわからず自分を攻撃する気配がないが。
「………ああもう、わかりましたわ! 待機していればいいのでしょう!? 後でわたくしだけ生き残って皆さん後悔しても知りませんわよ!」
ついに逆切れ気味にセシリアが叫んだ。さりげなく生死の問題になっているがそこは皆突っ込まなかった。それがマジだと理解していたからだ。
…………こうして、惨劇は始まった。
千冬が落ち着くまで逃げ切れば生き残れるが、逃げ切れなければ死。しかも落ち着くまでの時間は予想不可能という、絶望的な
主人公の出番が強制終了するという時点でおかしすぎる閑話でした。そしてキャラの壊れ方がひどかったセシリアやラウラだけでなくシャルまでもが腹黒という新たなキャラを獲得……不憫な(←下手人は自分)。
さて、次回は血と冷や汗とその他諸々にまみれた後編、千冬先生のSNTをお送りします。
………え? SNTが何の略か、ですか?
…………Super Namahage Time ですよ、勿論。