ゴールデンウィーク中に池袋という迷路までマクロス展を見に行った真尋です。カメラを持って行き忘れたのが今でも悔やまれます。
それにしても途中で目の赤い女子高生を見たような気がするのですが……気のせいでしょうか。なんか長いものを布に包んで持ってたような……
いや、きっと気のせいですよね。黄色マフラーした男の子とかも。そうであってほしい。
……途中途中にネタを挟むのがもはや生き甲斐になりつつあります。いや、池袋は迷宮ではありますが人外魔境ではないです。多分。
裏話3 報復準備
事件の次の日の朝。アメリカ合衆国首都、ワシントンD.C.はペンシルベニア通り1600番地。
とある世界最大のネット百科辞書曰く「アメリカで最も知られた住所」………すなわちホワイトハウス。
その中の一角、
「……それで、何か言うことはないかしら」
口調はまるで悪いことをした子供に対する教師か親のようであるが、そこに込められた思いはそのような生温いものとは一線を画していた。
その部屋の主である初老の女性は椅子に座ったまま腕を組み、じろりと目の前にいるスーツ姿の女性を睨んだ。
「……私のせいだというんですか? 私がISとVFの基地の合併を遅らせたせいで今回の事件が起こったとでも?」
「ええ、まさにその通りよ」
「っ……!」
こともなげに言い切った大統領にスーツの女……軍用IS統括官は顔を引きつらせた。
「はっきり言って論外ね。他の人間とも検討したけれど、VF側が出した交渉の内容、はっきり言って最初の時点で呑むに値するものだったわ。もしそれが叶っていれば、恐らく今回のVFとISが同時に攻められるなんて事件は防げていたでしょうね」
男女は勿論寝る場所等も当然別。セクシャルハラスメントは厳罰。滑走路はVF側で作る、今後のために何度か合同訓練を予定………などなど、筋の通った提案がなされている書類を大統領はひらひらと振り、ため息をついてみせた。
「ISがあれば十分でしょう! それにこのような契約、野蛮な男達が守るはずが………!」
「VFはその力をもう既に証明し、我が国に不可欠なものとなっているわ。随分と今更でしょう? それと、もし女尊男卑運動をやりたいなら政府の外でやってくれるかしら。
言い募る
「そもそも
いわずと知れている天才科学者、桜井和人のことだ。
「しょ、所詮男……」
「あなたはあなたが所詮と言った彼の十分の一の価値もないわ。彼はやりたいようにやりつつ、この国と彼の祖国に貢献している。あなたは、やりたいようにやってこの国に害しか与えていない。意図的な職務の妨害………懲戒免職ものね」
厳しい表情で言葉を紡ぐ。
「今すぐ荷物をまとめ、
呆然とした表情で若い女は去っていった。大統領は自分の席に深く腰掛け、またため息をつく。その顔には濃い疲労が浮いていた。
「これで、あとは奪われたものを取り戻し、捕えるだけ……かしら。ああ、彼に謝罪しないとね…….」
ふと、疲れた顔に笑みが浮かぶ。
「ふふ。どうせだから、彼の国で有名なDOGEZAでもしてみようかしら」
大統領にDOGEZAされるのに対し彼はどう反応するのだろうか。非常に楽しみだ。
慌てている少年の姿を想像してくすりと笑ってから、大統領は通信回線を開いた。
「宇宙軍司令? 奪還計画の立案をお願い。軍用IS側から協力の申し出があるから、そっちも頼るといいわ」
『世界の警察』の逆襲が、始まる。
一時間後。ナターシャ・ファイルスは年下の想い人と会話していた。
『謝罪とかは良いよ。……もう大統領に土下座された分だけでお腹いっぱいだ』
画面の向こうで疲れた顔を見せる少年に思わず笑みがこぼれる。が、すぐに顔を引き締めた。
「それで……捕捉できたの?」
ナターシャの張りつめた声に淡々と和人は答えた。
『ああ、この前の事件があったから対策用に何機かに特殊な発信器を着けたんだ。……ステルス機の意味が無くなるから僅か数機にしか着けてなかったんだけど、その一つが引っかかったのは不幸中の幸いかな』
「私も奪還作戦には参加するつもり。……だからいくら最強のVFパイロットだからって潜入とかしようとしちゃダメよ? あなた自身が狙われるかもしれないんだから」
『わかってる。……どっちみち、こっちでの研究で今は手が離せないからな』
嘆息して言う和人にナターシャは目を細める。
「女の子の研究……とか言わないわよね?」
『頭の中を精査することを強くお勧めするぞ。……割と、いや凄く真面目な内容だ。多分これの結果が出たら……いや、それは結果が出てからだな。ああ、それと』
「何?」
ナターシャは首を傾げた。
『日本の方からも二人ほど極秘で援助に出るらしい。日本で奪われた分も置いてあるかもしれないから』
「そっか。心強いな」
『まああいつらの実力は結構高いと思うよ。テストパイロットやってたし』
「……知り合いなの?」
『ん、まあね。サインをねだられたことがある』
「………私も貰っておこうかな」
『え、なんでさ!?』
戸惑う和人を見て笑みを浮かべ、ナターシャは戦いに向けてリラックスしていた。
同時刻。日本のVF工廠。
桜野瑛花と園宮僚平の二人はEX-ギアの調整を行っていた。極秘の奪還任務のためだ。
もしバレた場合、対外的には犯罪組織との戦闘として戦争ではないと位置づけるそうだ。
「まさかホントにこれ乗って実戦に出ることになるとはなー」
「……随分と余裕そうね」
気楽そうな僚平に対する瑛花の返事は堅かった。
「いや、緊張はしてるさ。何せ初めての『殺し合いが前提』の対人戦闘だ。……けど、負ける気がしないんだよな」
「……どうして」
「俺らの訓練量半端じゃなかっただろ? 操作は第三世代になってだいぶ簡易化されたって言っても、奪ったやつが俺らほど習熟出来てるとは思えねえ。ましてや俺らが加勢することになっている
調整を終え、VFのエンジニアによる調整内容の確認に行きつつ、僚平はこんな言葉を残した。
「これくらいさくっと終わらせなきゃ、VFを作ってくれた博士にも申し訳ないしな」
「……そうよね」
顔を上げる。酒に溺れかかっていた瑛花の父は、VFの登場で目の輝きを取り戻した。VFが無ければ瑛花はもっと面白くない毎日を過ごしていただろう。桜井博士のおかげで夢を得たと言っても過言ではない。そのVFが奪われ、犯罪に使われている。きっと博士は悲しんでいるだろう。
(だから、絶対にこの任務は成功させる)
僚平の背を追いつつ、瑛花は心の中で一人誓っていた。
さらに同時刻。アメリカの宇宙軍基地。
隊長を前に、VFを背景としてアインヘリヤルの隊員が整列していた。
「いいかー、野郎ども」
「隊長、女もいます」
「あ、それと淑女諸君」
ついでかよ……というしらけた視線を無視して、隊長は言葉を続ける。
「知っての通り、これより奪われたVFの奪還作戦の準備に移る」
その言葉に一瞬で空気が引き締まる。
「我らにVFという宇宙を行く術を与えてくれた、サクライ博士からのオーダーはこうだ。『……叩き潰せ、完膚なきまでに、だ。壊しても構わない。あいつらに奪ったことを後悔させてやれ』」
「あの人は……」
横で聞いていたVF研究員のミラード・アップルはその過激な言葉に頭を抱えた。
「これは俺達にとっても願っても無いオーダーだ。そうだな?」
ニヤリと隊長が笑みを浮かべる。全員が揃って頷いた。
「さあ、始めるぞ。機体の性能に頼ったヒヨッコなど敵ではないということを思い知らせてやれ」
『ハッ!』
各々の場所で、報復への準備は着実に整えられていく。
やはり裏話、主人公の出番がめちゃくちゃ少ないですね!
代わりに懐かしいキャラを出したので許してください。
あと一話か二話、裏話におつきあいくだされば幸いです。