東の海の革命軍3
今回、賞金稼ぎなど対革命軍対策として雇われた人員に手当てされた許可証、表向きこそ後で国が支払いをするという事になっているし、そういう事になっている以上は宿泊させねばならないが、どうせ連中が支払う気などない事は予想がつく。
とはいえ、うちはまだマシな方かと主人は思い直して溜息をつく。
自分の宿は小奇麗ではあるが、反面酒などは余り出さず、晩御飯など頼まれた場合でも量を限ってある。
結果として、男らはこの宿を敬遠している。逆に、酒場などと併用されている宿などは災難だ。
まあ、潰れると色々と面倒だからと潰れない程度に金は支払われるだろうが……。
「……あのお嬢ちゃんも知らないんだろうな、うん」
如何にも世間知らずといった風情のたしぎの顔を思い返して、宿の主人は彼女に文句を言っても仕方ないと思い直した。
宿の主人という仕事柄色んな人間を見てきた。その自分の勘が、彼女が良く言えば真っ直ぐな、悪く言えば騙されやすい人間だと言っている。きっと彼女は国が支払うと言った話を踏み倒すなど考えもしないのだろう。
ふう、と1つ溜息をつくと宿の主人は仕事へ戻った。
【SIDE:エース】
「……やっぱ、この国腐ってるな」
3人それぞれで街へと繰り出して、少し調べればすぐ分かった。
色んな国があるが、兵士が威張ってる国って余りいい国じゃない。
世界政府の海軍はどうなんだ?って思うかもしれないが、あれだって、上層部が腐ったらもっと酷い事になる、というか地方の支部とかになると目が行き届かないから酷い事になるのは、先だってのローグタウンが如実に示している。
軍隊ってのはどう言いつくろった所で、破壊の為だけの組織だ。
生産性なんてものは、ない。
まあ、この世界では俺の本当の親父の死に際の言葉のせいで、大海賊時代と呼ばれる程海賊が多いから、海軍が規模がでかいのは仕方ないんだが……。
そういう意味では各国の軍隊がある程度の規模を持っているのも納得出来る。
けれど、軍隊なんて本来は民を守る為の組織だから、威張る理由はない。
民も軍隊をけなす必要はないけれど、というか、なければいいなんて言い切る人間はきっと今の現実が見えてない人だろうが、先程見た光景、飲み食いして軍隊という力でもって踏み倒すとかはそれ以前の問題だ。
ぶちのめしてやるか、とも思ったが、自分は所詮余所者だ。
その結果として、あの飲食店の差し金と思われたら、あの店に却って迷惑がかかるかとぐっと堪えた。
「……革命軍って、やっぱそういう事なんだろうか」
エースは馬鹿ではない。
勉強は苦手だが、それと展開を読むというのはまた別問題だ。
言い方を変えるならば、学校の試験や資格試験の成績がいい事と、営業で成績を上げるのはまた別の問題、とでも言えばいいのか。
(革命軍が出てくる所をそう知ってる訳じゃないが、少なくともゴア王国は腐敗してた、この国も腐敗してる。そうして、革命なんてものを起こす以上は倒した後、王様も貴族もいなくなるんだから、民衆から受け入れてもらわないと国なんて成立しない)
じゃあ、どうやって民衆を味方にする?
答えは簡単だ、権力を表立っては握らないようにしないといけない。
腐った王や貴族と同列に見られれば、当然民衆は反発する。
(……けれど、権力を欲しないという態度を取るにしても、何らかの目的なり利権なりはある筈だ)
お金がなければ組織は組織として成立しない。
自分達のグループは僅か4人(現在3人)の小グループだが、それでも航海するとなれば、金がかかる。
船だって整備しないといけないし、消耗品は取り替えないといけない。
食料に水といった必需品だけでなく、酒などの嗜好品も必要だし、幸い自分達は皆白兵戦型だから助かっているが、砲撃などを行なえば砲弾なども必要になる。破損すれば修理代もかかる。
こうして島に着けば停泊料がかかる所もあるし、と、何をするにも金はついて回る。それは革命軍とて例外ではないはずだ。
とはいえ、世界政府の海軍と今なら同じ部分もあるか、と自分を納得させる。
海軍は世界政府の予算から、その運営費が出ている。
革命軍も幾つもの王国を陥落させたのだ、そうした王国から多少なりとも資金の融通を受けている部分はあるだろうし、何らかの思惑での寄付や、自分達自身による交易などもあるかもしれない。
だとすると、この国に革命軍が迫っているという可能性は決して低くない。
王や貴族を倒しても、それを民衆が支持する国、というならばこの国は正にその通りだ。
別に、エースは腐った王や貴族が倒れようと知った事ではないが……今回は仲間が関わっている。
とはいえ……。
(どうするかね)
たしぎに今の推測を話した所で、今の彼女がまともに話を聞くとは思えない。
そもそも証拠がまるでない。
(っていうか、俺は何がしたいんだろうなあ)
そもそも自分は、自分が何をしたいのかを見つける為に旅に出たはずだ。
しかし……。
探せば探す程に知る事が増え、知る事が増えればまた悩む事も多くなる。
と、そこまで至った所で頭を振る。
(違う違う、とりあえずは今の状況をどうするか考えねえとな)
そう頭を捻るエースだったが……。
「とりあえず、目先の事から考えっか。……後ろの奴出て来い」
そう言って、後ろの……先程からずっと後をつけて来る相手に殺気を飛ばした。
今回、賞金稼ぎなど対革命軍対策として雇われた人員に手当てされた許可証、表向きこそ後で国が支払いをするという事になっているし、そういう事になっている以上は宿泊させねばならないが、どうせ連中が支払う気などない事は予想がつく。
とはいえ、うちはまだマシな方かと主人は思い直して溜息をつく。
自分の宿は小奇麗ではあるが、反面酒などは余り出さず、晩御飯など頼まれた場合でも量を限ってある。
結果として、男らはこの宿を敬遠している。逆に、酒場などと併用されている宿などは災難だ。
まあ、潰れると色々と面倒だからと潰れない程度に金は支払われるだろうが……。
「……あのお嬢ちゃんも知らないんだろうな、うん」
如何にも世間知らずといった風情のたしぎの顔を思い返して、宿の主人は彼女に文句を言っても仕方ないと思い直した。
宿の主人という仕事柄色んな人間を見てきた。その自分の勘が、彼女が良く言えば真っ直ぐな、悪く言えば騙されやすい人間だと言っている。きっと彼女は国が支払うと言った話を踏み倒すなど考えもしないのだろう。
ふう、と1つ溜息をつくと宿の主人は仕事へ戻った。
【SIDE:エース】
「……やっぱ、この国腐ってるな」
3人それぞれで街へと繰り出して、少し調べればすぐ分かった。
色んな国があるが、兵士が威張ってる国って余りいい国じゃない。
世界政府の海軍はどうなんだ?って思うかもしれないが、あれだって、上層部が腐ったらもっと酷い事になる、というか地方の支部とかになると目が行き届かないから酷い事になるのは、先だってのローグタウンが如実に示している。
軍隊ってのはどう言いつくろった所で、破壊の為だけの組織だ。
生産性なんてものは、ない。
まあ、この世界では俺の本当の親父の死に際の言葉のせいで、大海賊時代と呼ばれる程海賊が多いから、海軍が規模がでかいのは仕方ないんだが……。
そういう意味では各国の軍隊がある程度の規模を持っているのも納得出来る。
けれど、軍隊なんて本来は民を守る為の組織だから、威張る理由はない。
民も軍隊をけなす必要はないけれど、というか、なければいいなんて言い切る人間はきっと今の現実が見えてない人だろうが、先程見た光景、飲み食いして軍隊という力でもって踏み倒すとかはそれ以前の問題だ。
ぶちのめしてやるか、とも思ったが、自分は所詮余所者だ。
その結果として、あの飲食店の差し金と思われたら、あの店に却って迷惑がかかるかとぐっと堪えた。
「……革命軍って、やっぱそういう事なんだろうか」
エースは馬鹿ではない。
勉強は苦手だが、それと展開を読むというのはまた別問題だ。
言い方を変えるならば、学校の試験や資格試験の成績がいい事と、営業で成績を上げるのはまた別の問題、とでも言えばいいのか。
(革命軍が出てくる所をそう知ってる訳じゃないが、少なくともゴア王国は腐敗してた、この国も腐敗してる。そうして、革命なんてものを起こす以上は倒した後、王様も貴族もいなくなるんだから、民衆から受け入れてもらわないと国なんて成立しない)
じゃあ、どうやって民衆を味方にする?
答えは簡単だ、権力を表立っては握らないようにしないといけない。
腐った王や貴族と同列に見られれば、当然民衆は反発する。
(……けれど、権力を欲しないという態度を取るにしても、何らかの目的なり利権なりはある筈だ)
お金がなければ組織は組織として成立しない。
自分達のグループは僅か4人(現在3人)の小グループだが、それでも航海するとなれば、金がかかる。
船だって整備しないといけないし、消耗品は取り替えないといけない。
食料に水といった必需品だけでなく、酒などの嗜好品も必要だし、幸い自分達は皆白兵戦型だから助かっているが、砲撃などを行なえば砲弾なども必要になる。破損すれば修理代もかかる。
こうして島に着けば停泊料がかかる所もあるし、と、何をするにも金はついて回る。それは革命軍とて例外ではないはずだ。
とはいえ、世界政府の海軍と今なら同じ部分もあるか、と自分を納得させる。
海軍は世界政府の予算から、その運営費が出ている。
革命軍も幾つもの王国を陥落させたのだ、そうした王国から多少なりとも資金の融通を受けている部分はあるだろうし、何らかの思惑での寄付や、自分達自身による交易などもあるかもしれない。
だとすると、この国に革命軍が迫っているという可能性は決して低くない。
王や貴族を倒しても、それを民衆が支持する国、というならばこの国は正にその通りだ。
別に、エースは腐った王や貴族が倒れようと知った事ではないが……今回は仲間が関わっている。
とはいえ……。
(どうするかね)
たしぎに今の推測を話した所で、今の彼女がまともに話を聞くとは思えない。
そもそも証拠がまるでない。
(っていうか、俺は何がしたいんだろうなあ)
そもそも自分は、自分が何をしたいのかを見つける為に旅に出たはずだ。
しかし……。
探せば探す程に知る事が増え、知る事が増えればまた悩む事も多くなる。
と、そこまで至った所で頭を振る。
(違う違う、とりあえずは今の状況をどうするか考えねえとな)
そう頭を捻るエースだったが……。
「とりあえず、目先の事から考えっか。……後ろの奴出て来い」
そう言って、後ろの……先程からずっと後をつけて来る相手に殺気を飛ばした。