第5話
ついに原作キャラと会ってしまった。
おはようございます。
ツアイツです。
色々あり8歳になりました。
今朝の添い寝担当はナディーネです。
この3年で双子山も更なる進化をしています。
恋人宣言の一件以来積極的に、ぱぷぱふしてくれるので幸せ絶頂!
気持ちよく目覚めて朝の挨拶をします。
しかしマイサンは相変わらず沈黙の艦隊状態……
セガール何とかしてくれ。
「お早う御座います若様、朝です。
起きて下さい」
ギュっと抱きしめながらおはようの挨拶をしてくれますが、しっかり胸の谷間に挟まれてますので喋れません。
モゴモゴと喋ると、双子山をかぷかぷしてしまった。
「あん。若様朝から激しいです」
真っ赤になりながらナディーネが可愛らしく叱ってくる。
「すまない。
でもナディーネが放してくれないのがいけないんだよ」
いやらしくない子供らしい純真な笑顔で文句を言ってみた。
「では続きは次の添い寝の時に。
洗顔と着替えの用意をしてきますね」
最近少し距離が近づいたのか、昔のような敬語でなく少しだけ砕けた口調で話してくれるようになった。
続きって次の添い寝の時が楽しみた。
一体どんな双子山マジックをシテクレルノカ。
今の表情をみたらナディーネ達も、もしかしたら添い寝を辞めてしまうかも知れないくらい変態ちっくな表情でひとりニタニタして独り言を呟いていた。
記憶が戻ってから3年。
既に魔法はコモンを粗方習得し系統魔法の練習に入っている。
なんと最初に発動できた魔法は……
水でした。
アレ素養ハ土ノホウガ高インデスヨネ?
これには母上が大喜びし、空き時間には自ら自分の膝の上に僕を乗せて水魔法について講釈してくれた。
血が繋がっているとはいえ母親という実感は薄いのだが、何といっても美人だし若いし良い匂いだし僕はこの幸せな時間を満喫し、リッテン先生と母上とのダブル授業で気づいたら水のラインになってしまっていた。
これを見た父上は膝を付いて悔しがり何故なら曽祖父は魔法が使えず政略結婚した曾祖母が土のドット。
生まれた祖父は土のラインで、父上自身は土のトライアングルであるから僕には土でスクエアを期待したんだろうな。
すいません素養は土のスクエアなんですが、修行環境がアレだったものですから。
これを切欠にか記憶が戻った当初はボロを出すのが怖くて両親との会話には気を使い少し他人行儀と所も有ったが、それが無くなり打ち解けていった。
勿論、母上とだけで父上とはそれなりですけどね!
その時は軽く考えていました。
8歳児が魔法の習得を始めて3年足らずでラインメイジになる意味を。
トリスティン貴族程は酷くは無いが、見栄っ張りな貴族がこんな自慢できる話題を放っておくなんてことはないよね。
そして他所で我が子の事を自慢しまくった父上のせいで本日、キュルケの実家にご招待されました。
現在は両親と移動中の馬車の中です。
父上曰く、ツェルプストー辺境伯は我がハーナウ家の曽祖父の代からの大得意様だそうで、今では家族ぐるみの付き合いで宮廷の事なども良く教えてくれる友人だそうです。
互いの領地も接していて聞けばチッパイ・ツンデレのルイズのご実家との小競り合いにも応援で、何度も兵を差し向けた程の仲良しさんダッタノダー。
地味に家族が死亡フラグを作ってました。
これはトリスティンに留学したらルイズから逆恨みされるのでは?
下手したらキュルケの子分扱い?
あーもー既に、原作介入する気持ちがなーくーなーるー。
などと考えているとどうやら、ツェルプストー家の門を潜ったみたいです。
馬車で半日って大した距離が離れているわけではないのね。
感覚でいうと30km位かな。
初めて会う原作キャラのキュルケちゃん8歳は、赤髪褐色の肌のロリロリ元気っ娘でした。
まだ幼女だしマナイターですね。
何故か父上がキュルケちゃんを見詰める目が怪しく輝いています。
こいつまさかロリコンを突き抜けてペドに進化しつつあるのか?
彼女も何となく居心地が悪そうな……
「ご無沙汰しておりますツェルプストー辺境伯さま。
そして始めまして美しいフロイライン。
ツアイツ・フォン・ハーナウ です。
以後お見知りおきを」
跪き彼女の手を取りキスをする。
両家の親たちは「おやおや」とか「まあまあ」とか微笑ましい物を見るような概ね好意的で感触だった。
が、当のキュルケちゃんは真っ赤になって小さな声で
「はじめまして……
よろしく……」
と俯いてしまった。
アレ?
恋愛ヲ楽シムツェルプストーノ一族デスヨネ?
微熱チャンデスヨネ?
コノ反応ハオカシクナイ?
「どうやらツアイツ殿は、ツェルプストーの一族の気質を持っているみたいだね。
将来女泣かせになりそうだよ」
ツェルプストー辺境伯がニヤニヤしながら話しかけてきた。
「いやいや既に専属メイドに恋人宣言しているのだよ。
流石はハーナウ家の次期当主だろう」
父上もニヤニヤしながら爆弾を投下してきた。
このペド、いらん事を言いやがって!
「ツアイツ?
帰ったら少しO・HA・NA・SHIしましょうね」
母上それ違う物語です。
「キュルケその程度で取り乱すとは、ツェルプストーの一族の女として失格ですよ。
折角ですからその小さなジェントルメンを案内して差し上げなさい」
ツェルプストー夫人がにこやかにしかし笑ってない目で(手を出したら分かってるんだろうなテメー的な)二人を見ながら 声を掛けてきた。
これ以上此処にいては僕の精神が持たない。
僕はキュルケの手を取り
「ではお言葉に甘え、キュルケ嬢に案内をして貰います」
と右手と右足が同時に出る歩き方で庭園の方に歩いて行った。
暫く歩いてからキュルケちゃんの手を離し
「ごめんね。
怒られちゃったね」
と謝った。
キュルケちゃんは
「ううん。
お母様は厳しいけどあれは怒ってないわ。
逆にツアイツを気に入ったみたい。
気に入らない相手なら私をエスコートさせないもの」
これは何フラグだろう?
この原作からは想像出来ない将来巨乳になるのが確実な、キュルケちゃんを僕好みに光源氏計画を発動しろって事ですねブリミル様!
なんて調子こいてましたが母親ズの事を考えると、恐ろしくなり保留しました。
二人で池の側のベンチにすわり、取り止めの無い話をする。
「そう言えばちゃんとした自己紹介がまだだったね。
僕はツアイツ・フォン・ハーナウ。ツアイツと呼んでね」
「私はキュルケ・フォン・ツェルプストー。
キュルケでいいわ」
と花の様な笑顔で言ってくれました。
流石は原作レギュラーキャラ!
幼くてもオーラみたいなものが有るね。
「ツアイツはもう魔法使えるの?
私はまだコモンマジックしか教えて貰ってないの」
「僕もまだ早いって言われたけど我が侭言って5歳から教えてもらっている。
属性は水だよ」
「凄いのね同い年なのにもう系統魔法を使えるなんて。
ねぇなにか魔法を見せて」
キラキラした目でお願いされては、断るなんで出来ないよね。
では母上にも見せていないオリジナルの水魔法をお見せしよう。
僕のオリジナル魔法……
なんて事は無い。
ただ水面も舞台に見立て水で出来た等身大人形(ゴーレム)の寸劇。
タイトルはロミオとジュリエット!
まんまパクリだが、シェークスピア自身もギリシャ神話の「桑の木」を元ネタにしてるしオマージュって事で。
ストーリーはハルゲニア風にアレンジしてみた。
要約すればツェルプストー家の縁の若者が、恋をした女性は政略結婚ヴァリエール家に嫁ぐ様に言われ悩んでいた。
気晴らしに街へ出た彼女は偶然(勿論彼がストーカー的に偶然を装った)彼に出会いたちまち恋に落ちる。
何度も密会をすれば、用心してても何れはバレてしまう。
怒った両親はヴァリエール家との婚姻を強引に進めてしまう。
彼は危険を顧みず深夜に彼女の実家に忍び込み……
あの有名なベランダ越しの名台詞のシーンですね。
「ねぇ〇〇〇〇…貴方はどうして〇〇〇〇なの」
ベランダまでフライで飛び上がりくさい口説き文句ら羅列し
「君の為なら家名を捨てよう。
僕は〇〇〇〇それ以外の名前は要らない」と。
二人は駆け落ちし良心的なブリミル教の司祭の元で二人だけの結婚式を行い、ひっそりと暮らし始めるが失踪した事を心配に捜索していた家人達に見つかり、ささやかな幸せの時は引き裂かれてしまう。
彼女は家に軟禁され強引に結婚をさせられそうになるが、心配した乳兄弟から水の秘薬により仮死状態となり結婚式を中止させその後、乳兄弟の手引きにより脱出し彼の元に向かうと言う計画を実行する。
ここで大切なのは、相手側と連携をしなければならないのだが彼も実家で軟禁されている身。
そんなに簡単には連絡が取れず、託した手紙も家人に見つかり読まずに捨てられてしまう。
結果、彼は偽装を知らされず本当に彼女が結婚を苦に自殺したと思い込んでしまう。
強引に軟禁から脱出した彼はブリミル神殿に安置されている彼女の棺に跪き、最後の別れの口付をして服毒死しようとするが、水の秘薬の効果が切れて目覚めた彼女から真実を聞き抱き合ってハッピーエンド。
ラストだけ変更したストーリーにした。
僕はゴーレムを操り一人二役で声優もこなしていく。
最初は物珍しくみていたキュルケちゃんだが、段々に 馴れてきたのか次第に劇にのめり込んでいきベランダ越しのシーンでは自ら彼女役の声優をこなしてしまう。
流石は将来の微熱。
しかし良く台詞分かったな。
ハルケギニアにも似たような物語が有るのかもしれないね。
そして劇は盛り上がり最後のシーンでは、感激したキュルケちゃんが抱きついてきた。
「凄い。
こんなお話、見た事も聞いた事もないわ」
突然でビックリしたが軽く抱き返してから、すっと離れ舞台役者の様に恭しくお辞儀をした。
パチパチパチパチと突然の拍手?
振り向けばツェルプストー夫妻と両親とメイド達がずらりと並んでいた。
母上が物凄い勢いで僕を抱き上げ
「ツアイツにこんな才能が有るなんて聞いてなかったわよ」
と、キラキラと少女の様に輝いた目で話しかけてきた。
深窓の令嬢だった母上はこういう話大好きだったなー。
父上からは
「おやおや初対面のレディに抱き付かせるとはどんなマジックなんだい」
とからかわれる始末。
ツェルプストー夫妻からは宿敵ヴァリエール家に脚本を作って送りたい等と物騒な話が……
ボクハキコエナイ!
この時は何も心配してなかった。
魔法の技術としてはゴーレム操作だけだし、池にある水を使ったから練金もしていないし技術的には十分他のラインメイジでも可能な範囲に収めたはずだ。
もっとも普通のメイジはゴーレムで劇なんかしないだろうから比べるのもアレだが。
唯でさえラインになった事を吹聴されたのに、親馬鹿夫婦二組の前では見せちゃいけない事だったのだ。
そして僕とキュルケちゃんの知らない間に次の公演の日程が決まっていった。