第146話
ガリア王国の第一王位継承者にして、国民的アイドルであるイザベラ姫は朝からそわそわしていた。
結局、昨日ツアイツは来なかった。
「考えてみれば、先に鷹便で報せたんだ。
鷹と空中船の速度差を考えれば明日以降か……」
1人政務室で筆を走らせる。
結局、ジャネットとタバサが代わりに仕事をしてくれたが、一通りチェックをしなければならず……
朝から机に向かい仕事中だ。
彼女等の頑張りには感謝しているが、間違いも多い。
これは、二〜三日遡ってチェックしないといけないかな?
ジャネットとタバサは今日は居ない。
感謝の意味と、ツアイツと会う所を見られたくない気持ちで休みを言い渡した!
それと、竜騎士団にさり気なく見張る様にも言い付けである。
もしもお父様にバレると、彼の立場が微妙になるからだ。
やる気を出せば、色々と気配りも出来る。
流石はイザベラ姫と言う所か……
「しかし……
あれだね。
午後一で又風呂に入って着替えておくかね……
もしも今日、来るかも知れないし……」
デレ期は順調みたいだ。
SIDEツアイツ
ガリアの民間で最大級の空中船だ。
広い船内倉庫には風竜や火竜が寛ぎ、イザベラ隊の面々も自由な一時を過ごしている。
ツアイツは、船医の手により火傷の治療を受けていた。
自分でも出来るのだが、好意からなので素直に治療されている。
「ツアイツお兄ちゃんも、結構鍛えられた体だね!
美味しそうだよ」
何故かエルザも居る……
「取り敢えず、エロガキ出て行け?
それとも、もっと肉体を見せ付ける方が良い?」
等と冗談の遣り取りをする。
「ツアイツ様、終わりましたが安静にお願いします」
そう言って船医は部屋から出て行った。
「ツアイツお兄ちゃんと少しお話したい!」
エルザは真剣な、しかし不純な感じの目をしている。
「そう言えば、2人きりで話すのは初めてだね。
良いよ、何が聞きたいのかな?」
僕はベッドに腰掛けているが、彼女は正面に備え付けの椅子を移動してきて向かい合って座る。
「何故、ツアイツお兄ちゃんは私が吸血鬼だと知っていたのかな?」
そう言えば、その辺の説明はしてなかったか……
「僕には、色々な情報網を持っている。
父上の、ハーナウ家の諜報団の他に自分の教団の連中や……
ヴァリエール公爵達の密偵とも顔見知りなんだよ」
「やっぱ教団って、お兄ちゃんの手足なんだね?」
本当は原作知識有りなんだけど、そんな事は言われても信じないだろう……
「他にも何人か、吸血鬼の疑いの有る連中の情報も有るよ……
日の光を嫌う君達の行動は目立つからね」
そう言って、烈風の騎士姫に出て来た吸血鬼の件を臭わせる。
彼女は自分以外の情報を持っている事に驚いたみたいだ!
「カステルモールお兄ちゃんが、あれだけ信頼していなかったら……
貴方を危険と判断して殺しちゃうよ、普通は」
牙を見せながら妖艶に笑う彼女を見て……
「ぷっ……
カステルモール殿の背中に張り付いてる姿を知ってるのに……
脅しても可愛いだけだよ?」
彼女の望みは平穏。
そして今、それを掴んでいる。
そんな幸せを壊す事はしないだろう……
「ぶー!
全然驚かないし、怖がらないね。
エルザ、ツマらないよ」
直ぐに表情を変えて、本当に退屈な幼女の様に足をブラブラと揺する。
「悪い様にはしないよ。
僕は君とカステルモール殿に幸せになって欲しい。
協力はするから」
そう言って笑いかける……
「じゃ本題だよ!
カステルモールお兄ちゃんのマントにさ。
エルザの刺繍が有るけど、アレって大人の趣味の方の女王様だよね?
お兄ちゃんってさ……
そっち系の趣味なのかな?
エルザ、頑張って言葉責めとか学んだ方が喜ぶのかなぁ……」
純粋故に、彼の性癖を誤解しているのか?
それとも、このまま突っ走った方が面白い?
「いや……
カステルモール殿からは、そんな性癖とは聞いていないけど?
普段の夜の夫婦生活はどうなの?」
幼女相手にエロ談話?
「普段は、ノーマルだよ。
それに寝室以外では最近はシナいかな……
でも強引な所もあるし、エルザが壊れちゃうかも」
最近は?
危険なキーワードを聞いたような……
「それは当人同士で良く話し合わないと駄目だよ。
思い込みで性癖を決め付けるのは危険だから」
これも注意しておくか。
「それと……
野外プレイは人に見られる可能性も有るから程々にって言うか、気を付けて下さい。
人の噂を消すのは大変だからね」
変態幼女性欲者になっちゃいますよ!
カステルモール殿が……
「あとね。
サムエルおじちゃんがね。
フィギュア?
のモデルをやってくれって頼まれたんだ。
あと教団のお手伝い」
「ふーん。
それで、どうするの?」
エルザは笑って
「楽しそうだし、これから助けて貰う恩返しになるかな?」
父上……
幼女に何を要求してるのですか?
僕も幾つかのフィギュアのポーズを思い付きましたよ!
「では、フィギュアのモデルをして貰おうかな……
行くよ。
キタキタキター!
ロリっ子バンパイア爆誕!」
彼女を模したミニゴーレムを二体作成する。
一体目は、ゴスロリエルザ。
二体目は、着物の振袖姿にしてみた。
振袖は、微妙に造形がイマイチだが仕方ないだろう。
着物のイメージが曖昧だからだ。
これは要勉強だな。
振袖バージョンは、貧乳美女・美少女に似合いそうだ。
ミニゴーレムを操り、色々なポーズを取らせて見る。
これは売れる!
「エルザ、この人形売って良いかな?
勿論、売上の何割かは渡すからさ……」
ツアイツは、新しいモデルの確保に成功!
テファ、ガリア姉妹、メイドズ・ツェルプストー三人娘に続き、ロリっ子を確保した。
「ふっふっふ……
レコンキスタが一段落したら、新作コレクションを発表だね。
忙しくなるなぁ……」
商魂逞しいツアイツだった。
「エルザ、モデルの件頼まれたのは失敗だったかも……」
後悔先に立たず……
ツアイツの奇態を見て、早まったかな?
と心配になるエルザだった!