完結後リクエスト外伝・アルビオン王国復興記(後編)
アルビオン王国の主都ロンディニウムにある、ハヴィランド宮殿。
歴史ある煌びやかな宮殿にて歓迎の宴が開かれていた。
主賓は、次期ガリア王ツアイツ・フォン・ハーナウ!
未だ実家の姓を名乗っているが、いずれガリアの文字が名前に入る筈だ。
そして、未だ彼の婚約者の立場だが側室として召されるのが決定しているティファニア嬢。
この2人を迎えた為に宴は深夜迄続いた。
特に着飾ったティファニアのドレスが、初回限定版のフィギュアの色違いだった事をいち早く気付いたウェールズ殿の講釈が長い長い……
目が完全に逝ってます。
そこにジェームズ王が参戦。
テファの為に用意した、ジェームズコレクションを披露!
宴は前半戦、オタク会談。
後半戦、ティファニアによるジェームズコレクション着せ替え披露会なった。
伝統を重んじる始祖の直系王家が、こうも家臣達と身近に接し語り合うなんて!
従来なら有り得ないだろう……
しかし、このスタイルが新生アルビオン王国の基本姿勢なのだろう。
この国から腐敗貴族が出る事は、かなり先だな。
王家と貴族達が共に理想を語り邁進する関係は強固だ!
ロマリアからの圧力も跳ね返すだろう。
ひとしきりテファのファッションショーが終わってから宴はお開き。
ジェームズ王とウェールズ殿、そして僕とテファだけが別室に集まり紅茶を振る舞われた。
「ティファニア殿、ジジイの道楽に突き合わせてしまい済まなかった。
疲れただろう?」
穏やかなジェームズ王……
これが先程までステージの最先端に陣取り指揮をしていたとは思えない。
「いえ……
突然だったので驚きましたが。
あの、今日着せて貰ったドレスや貴金属ですが、本当に頂いて宜しいのですか?」
都合50着以上のドレスに、数々の装飾品。
どうみても国宝が混じっていました。
風の指輪……
アレを嵌めて来た時は目を疑った。
ウェールズ殿が、彼女の金髪と白い肌に映えるから……
何て言っていたが、虚無たるテファには危険な代物だ。
これで始祖のオルゴールなんか見せて貰ったら……
「構わんよ。
あれらが君への贖罪になるとは思っていない……」
贖罪?
ちょまさかジェームズ王はテファの事を?
「ツアイツ殿。
昔話を聞いてくれぬか……
儂には弟が居った。
兄弟の仲は悪くは無かったよ。
儂は巨乳好き。
奴は貧乳好き。
何処かで聞いた関係であろう?」
静かに語り出すジェームズ王。
声は穏やかだが、その眼光は鋭く真っ直ぐに僕を見詰めている。
「まるで、僕の親子関係みたいですね……」
「ふふふ……
ツアイツ殿とサムエル殿とか?
そうじゃな。
しかし我らは分かり合えなかった。
何処かで道を違えてしまった……
その先は、話さずとも分かっているだろう?」
「父上……」
ウェールズ殿も、ジェームズ王が何を言っているのかが理解出来たのだろう。
「ええ……
種族を超えた愛が有り、時代がそれを許さなかった。
しかし今ならば、私の知る偉大な王は受け入れてくれると信じています」
あれだけテファを持て成したのは、この話が有るからか?
「貧巨乳派教祖のツアイツ殿に信じて貰える王とは……
幸せだな。
ティファニア嬢。
儂は……」
静かに首を振るテファ……
「ジェームズ様。
私は今、幸せです。
過去に何が有ったかも知りました。
種族の違い……
私は、私を受け入れてくれた大切な人が、私の為にどれだけの努力をしてくれたかを知っています。
それでも秘密がバレてしまった。
私は、大切な人に迷惑が掛かるなら……」
ジェームズ王は手を上げて、テファの言葉を最後まで言わせなかった。
「ティファニア嬢……
儂は、過ちを繰り返す事はしない。
若い君達を見て、随分と過去の儂らが愚かだったかを知ったからな。
人は分かり合える。
なんと単純な事か!
だが、一国の王として一度下した結果は覆す事は出来ない……
しかし、次こそは違った結果を出したいのだ。
……すまなんだ。
今はこれしか言えぬが……」
アルビオン王国の王が、非公式でも謝罪?
「ジェームズ王、それは……」
「ツアイツ殿……
ティファニア嬢には、弟の面影が有る。
そして名前も、間者が調べて来たのと同じ。
少し捻った方が良いな」
あれ?
一本取られた感じ……
「兎に角だ。
ティファニア嬢には幸せになって欲しい。
助力は厭わぬ。
例え儂に死ねと言うなら叶えよう。
それ程の事をしたのだからな」
またシリアスに引き戻された。
「ジェームズ王、死ぬとかそれがいけないと思います。
テファの幸せを願うなら、彼女をそっとしておいて欲しいのです。
彼女はゲルマニアの下級貴族の娘。
僕が一目惚れをして強引に物にしたんです」
「私もそれで幸せです……」
ジェームズ王は、一粒の涙を流してから笑った。
力無い笑いだったが……
「老人が余計な事をして、若者を困らせたみたいじゃな。
今日の事は我々だけの秘密だ。
強引に物にしたと言ったが相思相愛じゃな。
ウェールズよ、お前も早く伴侶を捕まえろ。
なんなら例の娘達、三人共申し込むか?」
「ちっ父上?
……いや、まぁそれも心が動きます。
いっいやしかし、三人は流石にアルブレヒト三世も……」
流石は老獪な王様だ。
自分の息子をダシに場の雰囲気を切り替えたか……
「ウェールズ殿?
アルブレヒト閣下には、数多な娘が居ますよね。
もしかして秘蔵っ子の三人かな?
年上おっとり美女、大人しい美少女、素直な美幼女ですよね。
彼女等を紹介するとは、アルブレヒト閣下も本気で婚姻外交を望んでいるんですね。
彼女達は皆さん良い方々ですよ」
アルブレヒト閣下……
ウェールズ皇太子の好みを的確に突いている。
本気で墜としにきたよ。
成功すれば、ゲルマニアとアルビオンの関係は強固になる。
勿論ガリアもだ……
アンリエッタ姫と結ばれてトリステイン寄りになるよりは良いのかな?
こうしてジェームズ王はテファに謝罪したが、真相は有耶無耶になった。
後は明日、ジェームズ王とウェールズ皇太子に漢の浪漫本ファンクラブ上級会員として特製マントを授与してお終いだ!
◇◇◇◇◇◇
昨夜のシリアスな展開は何処へやら。
漢の浪漫本ファンクラブ特設会場は……
ハイテンショーン!
「みんなーコンニチハー!」
「「「ウォー!
ティファニアちゃーん!」」」
ナニコレ?
デジャヴ?
イザベラのコンサート会場に初めて来た時みたいだ……
「今日はー、新しい上級会員のマント授与式なんだよー!」
「「「ウォー!
ジェームズさまー、ウェールズさまー」」」
「先ずはファンクラブネーム、謎のオヤジキングさんだよー!
みんなー、せーの」
「「「オヤジキングさーん!」」」
イザベラ……
テファの事を私に匹敵するアイドル属性だから任せろって言ったけど。
コレは……
この教育は、やり過ぎてないか?