謀略教皇VS謀略教祖!趣味と趣味の闘い・第2話
帝政ゲルマニア貴族、ツアイツ・フォン・ハーナウ!
ロマリア連合皇国のトップ教皇ヴィットーリォは彼が虚無の使い手か、それに近い位置に居ると睨んでいた!
歴代教皇達が集めた場違いの工芸品に通じる知識を持ち、尚且つソレを有効利用している。
奴の唱える、オッパイ大好きなお話。
「変態と言う名の紳士達・漢の浪漫本ファンクラブ」
彼らの根幹を為す教典は場違いの工芸品か、その世界の作品を流用した物だと思うから……
しかし歴代教皇達の集めた品々より圧倒的に多く、また内容も多岐に渡る。
逆に考えれば、奴の考えだした品物が流れ出したと言われた方が納得する程に……
「ジュリオ……
もはや謀略でしか奴に対抗出来る手段は無いでしょう。
先ずは奴の力となるガリア王国の切り崩しです。
あの国の狂王の粛正で逃れた王弟の忘れ形見。
双子の片割れ、ジョゼットを使いましょう」
シャルル殿下の双子の片割れ。
悪しき因習により処分する筈が、保護され生き続けている少女。
彼女を日の当たる舞台に登場させれば
「おそれながら、ジョゼットは行方不明です」
申し訳無さそうに報告するジュリオ。
「報告では姉であるシャルロット姫も、その母親と共に屋敷の火災に巻き込まれ死亡となっています」
どちらの差し金だろうか?
「女性三人を亡き者とする……
オッパイ教祖の考えではないでしょうね。
奴は女性にだけは甘いですから。
するとジョゼフ王か……
あの狂王が、娘婿の為に動いたと言うのか?」
自身の楽しみにのみ興味を示す狂人が?
「または黒衣の魔女かと……
何度も密偵団を始末してきた女ですから、それ位は容易いかと。
それに彼女は奴と姉弟の様に仲が良いは聞きます。
狂人ならではの愛情表現も考えられます」
ジョゼフ王の腹心をも取り込むか……
「私はジョゼフ王も虚無と睨んでいます。
魔法の才の無い無能王。
しかし現実は大国を意のままに動かしている。
それに黒衣の魔女……
虚無の使い魔と考えれば、我が密偵団では荷が重い相手でしょう」
ガリアの虚無はジョゼフ王。
トリステインの虚無はヴァリエール公爵家の三女。
私を含め、これで三人……
では残りのアルビオンの虚無が、奴か奴の協力者なのか?
「残りの虚無の可能性はアルビオン王国ですが……
ゲルマニア貴族の奴とでは接点が有りませんね。
ウェールズ皇太子とは最近友好を深めた仲……
昔から協力していたとは考え辛い」
それにジェームズ王も当時は石頭で、エルフと通じた実の弟を始末した程に……
「ジュリオ。
アルビオン王国の王家の関係者で、在野に下った者が居るか調べるのです。
もしかしたら、アルビオン王家の血を引いている可能性も有ります」
そう言うと一礼してジュリオは部屋を出て行った。
独りになった執務室で大きく伸びをする……
体がビキビキと音を立てながら解れていくのが分かる。
特に腰周りに疲労感が有る。
少し休みが必要だろうか?
※それは連日の男の娘ハーレム201人遊びの影響です。
要は遊び過ぎです!
しかし虚無に目覚めるには指輪と、もう一つが必要な筈です。
アルビオン王国の国宝を触れる地位など……
やはり粛正された弟とエルフに子供が居たと考えるのが自然だ。
その子供がゲルマニアに逃れて奴の比護を受けていた……
ブリミル教と敵対するエルフの血を引く者を匿っていたら?
いや実際に居なくとも、これは異端として認定に値する罪です。
しかし、それだけでは弱い。
出来れば、その者を捕まえるか……
作り上げるか、ですね。
しかしエルフとのハーフなど探すだけでも大変です。
「手っ取り早いのは暗殺か……」
しかしリスクが大きいし、下手に復讐と言う名で結束されたら逆効果か……
思わず漏らした一言を一番信頼し、またお気に入りの部下は扉の外で聞いていた。
「暗殺……
ヴィットーリォ様の為に、奴を殺す」
しかし、今は未だ奴と奴の周りを調べる事が先決だ!
ジュリオは廊下の奥へと消えて行った……
◇◇◇◇◇◇
ロマリア連合皇国、聖歌隊。
選りすぐりの美少年を集めて女装させた、教皇ヴィットーリォ渾身のハーレム!
彼は何故か「男の娘」と言う言葉を使っていた。
それこそ現代日本のオタク文化から生まれた造語を……
聖歌隊は、年端もいかぬ美少年だけを集めている。
嘗ては、それ程でも無かったのだが今は教皇の趣味を満たす為に生まれた、彼の為のハーレムだ。
美少年は大好きでも美青年は要らない……
そして育ち過ぎた者達は寵愛を受ける事久しく、聖歌隊を卒業して閑職についていた。
彼らは閑職に追いやられても、未だにヴィットーリォ様への忠誠心は高い。
ジュリオを彼らと共に、ツアイツ暗殺の計画を練る……
◇◇◇◇◇◇
トリステイン王国、トリスタニア王宮。
白亜の外観を持つ歴史有る建築物だ!
マザリーニ枢機卿は、この半年間の激動を考えていた。
ゲルマニア貴族、ツアイツ・フォン・ハーナウの登場。
一部のトリステイン貴族の結束。
アルビオン王国でのブリミル教の司教の反乱。
アンリエッタ姫の激変。
国内の腐敗貴族の粛正。
アルビオン王国への派兵。
反乱鎮圧、そして戦後処理……
トリステイン王国は風通しの良い国になるかと思った。
ヴァリエール公爵を筆頭に力有る貴族がまとまり、トリステイン王国を盛り上げてくれるかと……
しかし、マリアンヌ王妃とアンリエッタ姫が相変わらずのご様子。
折角国を纏めたヴァリエール公爵も、彼女達に愛想を尽かして王宮から離れていった……
アンリエッタ姫は、アルビオン王国のウェールズ皇太子とツアイツ殿に懸想していた。
そして2人から距離を置かれた事によりヤサグレてしまい、今は彼女を持ち上げるだけの貴族達を取り巻きとしている……
折角良くなりかけたトリステイン王国も、元通りになりそうだ。
彼女の教育を私は間違えたのだろうか?
一度、ヴァリエール公爵達とツアイツ殿と話し合う機会を設けるべきだろう。
そしてロマリアからの密書……
教皇ヴィットーリォの封印がなされている。
トリステイン王国にとって、良くない内容だろう……
しかし私も自身の信仰と枢機卿と言う立場から、教皇へは逆らえない。
鳥の骨と蔑まれても、前トリステイン王との友誼の為に国に残って頑張ってきた訳だが……
流石に今回は、どちらの国かを選ばねばならないかもしれない。
トリステイン王国の為に、一番働いていた彼に世界は非情だった……