第十話
パジャマの効果を検証しようと思って着てみた。
……鏡がなく、窓ガラスにほのかに映った姿を確認するが……うん、色が深緑で地味だけどエンブレムが柄になっていて少し子供っぽいな。だが、そこがいい。
では少し寝るか……とベッドに横に——?!なんじゃこりゃ?!
「え、なんで外が暗くなってるんだ?!」
ベッドから起き上がり、外を見ようとすると——
「明るくなった……だと」
え、なに、この窓って外を写してるんじゃなくて照明だったのか?!いや、まぁ外に人影も動物も風すらも存在しないんだから違いがどこにあるのかと言われると困るけど。
「…………カーテンを買う必要がなくなったと前向きに行こう」
そういえば、さっきの小休憩でガッツリ寝た時は明るかった。ということはベッド自体が照明スイッチ、もしくは自動消灯システムか。
この独特な部屋の仕様に慣れるのはいつになるのか、まだ24時間も過ごしてないけど慣れる気が一向にしない……しかもター子さんはシステムの変更も示唆してたしなぁ。延々と振り回されそうだ。
なんて横になって考えているといつの間にか眠って、いつの間にか目が冷めた。
寝たのが11時だったが今は17時、つまり6時間眠ったことになる。
俺的睡眠時間としては2時間半ほど早く起床することになった。
すっきりした目覚めで疲れも全く残っていないようだ。自覚できる範囲では。
それに精神的にゆとりがあるように感じる。
今までどれだけ混乱して焦っていたのかがわかる。これがリラックス効果か?だとしたら凄い効果だ。
将来戦場に立つことになるのだから精神安定は重要だ。
これは必須アイテムだな。こういう役に立つアイテムがまだまだ眠っているに違いない。そしてそれを見つけることが俺の命を繋ぐことになるだろう。
「しかし、暇になったな」
パイロットスーツは漬けてから6時間、つまりまだ洗濯中である。あと2時間以上は任務には出れない。
アイテムの重要性を再認識したことだし、アイテム探しに時間を割いてもいいが……今はトレーニングスーツの検証として筋トレをしようと思う。
……そうか、筋トレは節約してスクワットや腹筋みたいな身一つでできることからやろうと思っていたが筋トレ用器具を導入すれば効率良く鍛えることができるだろう。
ただ……筋トレの器具って数が多すぎてどれがいいのかわからない。
通販番組に出てくるようなものでも毎日続ければ効果はあるはず……ジムに置かれているような本格的な器具の方が効果があるのは間違いない。間違いないが——
「予想通り値段が高い」
鉄アレイぐらいなら安い……いや、いっそ100均にあるアレイの形をしたプラスチックに水を入れるやつでもいいんだけど……電子機器が内蔵されている器具は等しく高い。絶対原価は大したことがないにも関わらず高い。
命、ハゲ、ダイエット、美容、健康は5大ドル箱と言ってもいいジャンルだから仕方ないんだが。
大体スマホ以下の電子機器しか搭載していないのにスマホを倍以上の値段がするなんてありえると思うか?大半の部品が対して代わり映えもしない金属と合成樹脂でしかできていないものが?(誠信調べ)
と考えていて、ふと思う。
「前と違って金が命に直結しているからかケチくさくなったな」
ここに来る前ならもっと豪気に将来への投資だと突っ走ったはずだ。
だが、今はそれができない。
「この臆病さは命を縮めそうなんだけどな」
慎重と言えば聞こえが良いがどう考えても臆病になっているだけだ。
本当はパジャマやトレーニングスーツはLv2を買うべきだと思っていたがその踏ん切りがつかず、Lv1を買うことにした。
「……ま、これが俺と割り切るしかないか」
臆病者なら臆病者なりに過ごすべきだと開き直るようにしよう。
なにせ戦争まで後4年も掛かるんだからな。
RPGみたいにステータスが目に見えるわけでなし、取れる選択肢が多いからある程度場当たり的にどうにかできる……と信じている。
何より戦力ゲージがすぐに手に入るのは今だけという可能性が高いしな。
今は20分で稼げる。でも将来的にはもっと時間がかかる任務が出てくるはずだ。
ここのシステムで考えると3つの任務があると俺は予想している。
1つ目は『試験』、2つ目は『作戦』、3つ目は『局地戦』だ。
試験は今俺がやっているような任務だ。これは1番不確かなものだ。
多分新型が開発されるたびにあると予想だ。じゃないとただのチュートリアルでは開発ゲージなんていうものは必要ないからだ。
作戦はわかりやすく、ルウム戦役や地球降下作戦などの大きな目的を持ったもの。ゲームやアニメだと見せ場だな。
局地戦は哨戒や偵察、ひょっとすると遭遇戦も含む小規模のものだ。
試験は短いだろうが、作戦はMSとミノフスキー粒子と奇襲効果で優位な序盤ならともかく、戦場が膠着状態、もしくは劣勢になる中盤以降は何日にも渡って行われる可能性が高い……まぁ途中で帰還などができるかもしれないが。
局地戦は偵察任務だとかなりの時間を拘束される可能性がある。
そして簡単に稼げるのは戦闘だというのは誰もが思うだろう。そしてその分だけ自分の命を掛けることになることも。
なら比較的安全な任務となると報酬が安いのはもちろん拘束時間が長くなるはずだ。
試験は……そもそもそんなに頻繁に出てくるかという疑問がある。
つまり、何が言いたいかと言うと節約は大事!ということだ。
「それに……機体を自分で購入しないといけないのはともかく、整備代も自前のようだからな」
任務詳細の特別仕様で気づいたことがある。
特別仕様の1つに『機体破損による賠償無し』とあるんだけど、これは逆に言えば特別仕様でなければ機体が破損した場合、賠償が発生する。
賠償という言葉を使うということは機体はおそらくレンタルすることができるんだろうということが予想できる。
そして破損すればその分だけ戦力ゲージで支払わされるということになるのだと思う。ひょっとすると国力ゲージ……いや、でも国力ゲージだとMSの破損の整備程度の減少なんて目に見えない程度でしかないからほぼ誤差、やっぱり戦力ゲージを消費すると考えるべきだろうな。
「レンタル料だけでもわかればある程度予算を組み立てられるんだけどなぁ」
2時間半ほど筋トレして、漬け置き時間を念の為少しオーバーさせてから干し、そして飯を食べ終えるとパイロットスーツは乾き、5回任務に出てた。
Aランクまで後少しだと思うがタイムがなかなか縮まらない。
どうもBランクからAランクの壁は想像以上に厚いらしい。このあたりがベテランの境なのか?その割にはベテラン手前までが随分簡単だったけど。
それとも俺が凄いだけ?(自画自賛)
「さて、寝るか」
仕事よりもずっと疲れる任務は早くも慣れたことで1回や2回熟す程度ならいいが3、4回と繰り返すとくたくたになる。
それでもやらないわけにはいかない。給料は良くてもブラック企業だな。まぁ命が掛かる上に監禁なんてされているんだからブラックどころかただただ犯罪臭しかしないけどな!
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親子丼 380
じゃこ天 100
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