第十二話
早速無重力を体験!と思い、オプションに増えた『無重力空間』をクリックした……が——
『これから無重力空間はパイロットスーツもしくはノーマルスーツが推奨されています。準備はよろしいでしょうか?』
そういえば宇宙服じゃないと無重力の中じゃ歩くこともままならないんだよな。早速面食らった。
着た時には実感なかったけど、パイロットスーツの足底にはマグネットがあるんだろうな……ん?でもMSに搭乗する時に違和感がなかったぞ?どういうことだ?
まぁ考えてもわからないか。
パイロットスーツに着替えて再度無重力空間に移動を選択……ってまたなんか出てるし。
『無重力空間では負傷無効設定がされているのでご存分にご利用ください』
おお、負傷無効はありが——っていきなり移動させるなよ!なんでここだけこんな雑なんだ!
もしかして後付けの機能だからか?運営が新しいシステムの実装で配慮に掛けている……もしそうなら運営も万能じゃない可能性があるな。だからどうしたと言われると困るけど、可能性を考えておくのは悪いことじゃない……はず?
「……無重力じゃないな」
移動させられた部屋は円型になっていて、直径は……ちょっとわからないな。多分180〜200mぐらいだと思う。
格子状にラインが引かれていて、変な感覚に陥りそうだ。
床の材質は金属……にしては柔らかく、合成樹脂にしては硬い、なんとも言えない素材でできているようだ。
この部屋だけ今までの空間と違って現実味がまったくない空間となっている。
『無重力状態とするには『スタート』、重力状態とするには『終了』、退出時は『退出する』、空気の有無はヘルメットの着用時に『無酸素』と音声入力してください』
こんなところだけ声なんだな……そうか、これが端末管理だと危ないのか。
携帯端末ではなく、備え付け端末だとそこまで移動する必要がある。だけど無重力でほんの少しだけ、本当に少しだけのスピードで宙に浮いてしまった場合が問題だ。
今俺が着ているパイロットスーツには推進装置はない。つまり反対側まで移動するのに相当時間がかかる。
地面から離れる時の速度次第では下手をしたら餓死の危険性も……あるか?
いや、酸素があれば泳ぐことが可能だから問題は真空状態の時か、真空状態と酸素がある状態との差も感じておかないとな。
「スタート——うぉ?!こ、これは、思った以上に難しい、な!」
少し足を持ち上げただけで体全体がグルグルと回転を始めた。
「ぐぇ、気持ち悪い?!」
なんというか、MS以上に慣れるのに時間が掛かりそうな気がする。
でも良い時間つぶしになりそうだ。
ちなみにどうなったかというと……まずは吐瀉物まみれになりましたよ。
幸い退出したらきれいになってたし、まっすぐ吐いたおかげでパイロットスーツも綺麗なままだったので仕切り直して何度もチャレンジした。
宇宙遊泳ぐらいはできる。できるんだけど……なんというか、ガンダムのキャラ達がやっているようなスムーズな感じは欠片もない。
自分が向いたい方向に飛ぶだけでも結構大変だ。よく皆まっすぐ目的地に飛べたなぁ。やっぱりアニメだからかな。
そして、休憩しようと自室に帰ってきて何気なくパソコンを見ると——
「ん?任務が点滅してる?」
もちろんクリック、さて、新たな任務だろうけど何かな何かな。
・試作人型兵器のテストパイロット(ジオニック)
・参加報酬:戦力ゲージ100万
・スコアアップ報酬:戦力ゲージ100万+開発ゲージ上昇
・終了日時:0075/12/31
・試作人型兵器のテストパイロット(ツィマッド)
・参加報酬:戦力ゲージ80万
・スコアアップ報酬:戦力ゲージ100万+開発ゲージ上昇
・終了日時:0075/12/31
「いや、もうちょっとヒントくれよ。これじゃ前の任務と見分けがつかないだろ」
・試作人型兵器の無重力テストパイロット(ジオニック)
・参加報酬:戦力ゲージ100万
・スコアアップ報酬:戦力ゲージ100万+開発ゲージ上昇
・終了日時:0075/12/31
・試作人型兵器の無重力テストパイロット(ツィマッド)
・参加報酬:戦力ゲージ80万
・スコアアップ報酬:戦力ゲージ80万+開発ゲージ上昇
・終了日時:0075/12/31
おっと、ター子さんはこんなところまで権限があるのか、思った以上に権限が広いな。こまめに要望を伝えてみるかな。
「それにしても無重力空間の開放がトリガー……というわけじゃないだろうな。それなら無重力空間との行き来の際に気づいたはず」
となると……ゲームとして見ると回数かな?えーっと確か……10回出入りしたか?じゃあそれがトリガーか?
それなら無重力空間の開放自体のトリガーは……1日経過か?ならあの移動の時の雑さは何だったんだろ?やっぱり考えるだけ無駄か?でもこういうパターンはある程度把握しておいた方がアドバンテージになる……といいなぁ。
正直、俺のことだから途中で放り出しそうだけど。
「それにしても今度のステージは宇宙か、陸よりは自由度がありそうだけどルートが無数にあるせいで難易度は高そうだよな」
……そういえば、ある程度星の配置は覚えておいた方がいい……って宇宙での星の配置ってどんななの?そもそも俺、天才肌だから……すまん、見栄張った、感覚派だから座標とかめっちゃ苦手なんだけど。縦横のXYですら怪しいのに3次元のXYZとか合体したり分離したりして神の生贄に……今の言い方でいうとリリースだっけ?するとかそんな程度の感覚だぞ。
数字で方向なんて言われてもパッとわかんねーんだよ!……とは思うんだけど宇宙だとそうも言ってられないかねぇ。宇宙で迷子なんて生死に関わる……ん?そういえば俺、観測されてなければ帰還できるんだっけ?戦場から離れれば帰れるんだから特に問題ないか?
「とりあえず慣れ親しんだ任務に行っとくか」
まだ2日目だけどさすがに10度も行けばズズーンッと佇むザクにも慣れ……すまん、やっぱり慣れんわ。
いやーMSってすごいね。男心擽るフォルムしてるよな。女性的な意味じゃなくてかっこよさで。
キュベレイとかはパイロットとかSDガンダムの影響で女性的に見えるけどな。ちなみに俺的にはクィン・マンサはクール系の女に見えるぞ!たまにどんくさい感じで!
そういえば連邦は女性的なMSいたか?…………ボール?やっぱりジオンにしてよかった。(命が掛かってるのに勢いで亡国ジオンを選んだ後悔をなんとか肯定しようとする必死感)
「ん?あれ?なんだ。これ?」
んー??気のせいか??いや、気のせいじゃないな。
間違いなく操縦がしやすい。
なんだろうか、足を1歩動かすだけでも違う気がするんだが……具体的に何が違うのかは全然わからない。
あ、スラスターの冷却効率がよくなってる気が……気のせいじゃないな。間違いなくスラスターが使用感覚が短くなってる。
ほのかにスラスターの出力も増えてる気がする?こっちはイマイチわからん。
——で機体の調子が良かった結果——
「……A取っちゃったよ」
なんでこんなことになったんだ?
それにしても悔しい。俺は前のままでAランク取りたかった。機体スペックに頼ったら俺の腕じゃなくて機体のおかげじゃん。
そんなんRPGで最速クリア目指すのにチート使うのと変わないじゃん。
そもそも俺の腕が上がらないと意味がないっての!相手が弱くなるわけじゃないんだし!
と悶々としながら自室へ移動。
とりあえず報酬を受け取——おお、もうちょいで2000万に届くぞ。
それと開発ゲージは25ももらえたぞ。何に影響するか……ん?そういや前回で105になってたな。
もしかしてこれか?今回の機体の変化?可能性としては十分だな。
残りゲージ:19713889G