第七十六話
MS6小隊が急展開している最中の敵MS部隊と有効戦闘距離へと到達した。
あっちが展開できたのは12機、つまり数の上では3小隊と1機……かと言えば実際はそうではない。
なぜなら1小隊という数は1隻の艦に載せられたMSの部隊単位であり、決して数が揃えれば小隊というわけではない。
今出撃しているのは2・2・2・1・1・4と最後の4機は船足が遅く、逃げる俺達の追跡に遅れてしまっているパプワ級のもので、他がムサイ級の出撃機数だ。
つまり1小隊を除けば小隊としては成立しないってことだ。もちろん軍人であれば所属が違うからと連携できない、ということはない。しかしできるできないの話はともかく、信頼や練度が落ちるのは当然の話だ。
「そもそもハウンドに個人技で負けている以上は数で劣ればどうなるかなんて想像力乏しくともわかる結末しかないな」
それにパプワ級からの出撃はムサイ級の簡易カタパルトによる発進に比べてMSが自身で加速しなきゃならんからその速度は遅く、今回は短期で決着がつくから関係ないが継戦能力に乏しいことになるし、方向転換のために行うスラスターの噴射の回数にも影響が出る……つまり12機中4機は今の段階では戦闘速度まで加速しきれていない。
更にムサイ級から発進したMSだが、俺達のカタパルトに比べて簡易であるためそもそも加速度が違う。一部の熱狂的なスピード主義者(ニュータイプ)達の支持によりパイロットでも慣れていない者が使えば失神してしまうような加速と比べるのもどうかと思うが……簡単に行ってしまえば最初から速度が違う。
宇宙空間での速度の違いは減速が逆噴射でしかないため、戦闘能力に大きく影響する。
余談だがその気になれば加速し続けられるため、速度を出さないようにするというのにも気をつけて開発しているぐらいだ。
「さすがニュータイプという呼称が使われるようになっただけのことはあるな」
距離が詰められ、これ以上母艦に近寄らせないように防衛を軸に置く教導隊だが、ニュータイプ8人とそのリーダー1人が防衛の弾幕を速度を落とさず華麗に躱して防衛網を突破する。
もちろんそれに追い縋ろうとする教導隊だが、シーマが指揮する他のMS3小隊が妨害に入る。
ニュータイプ部隊の武装は開発したてほやほやの対艦ライフルだ。
MS相手にも使えないことはない……が速射ではなく単発仕様であることから命中率の悪いため今回はそんなものでも当てることができるニュータイプ達が装備することになった。
「あんなものに狙われるのは御免だがな」
言っている傍からメガ粒子砲が次々と潰されていくように苦笑いをする。
「俺達が抜ける前に決着がつきそうだな」