第一話
「ハハハハッハハハッハハ!!!これが科学で進化した次世代の人類の力か!」
ああ、なんて強欲、なんて傲慢、なんて堕落、なんて罪悪、なんて不遜、なんて甘美。
この作り出された肉体は間違いなく人間のもの。
なのに俺は自分の身体が人間のものなのか疑ってしまう。
ほぼ思い通りに動く身体、知識を積むだけなら軽々と熟す頭脳、病気とは無縁、ついでに言えば整った容姿に自然ではありえない髪や瞳の色までしている。
しかし――
「こんな力を得てなお人間の本質は変わらない、か」
やはり人間が人間たるのは優れた知能や身体能力ではなく、その精神性から来るらしい。わかっちゃいたけど救いがないな。
結果、戦争に辿り着くんだからこの世界の人間も間違いなく前世の人間と変わりがない。
まさか子供の頃にみたアニメ……ガンダムの世界に転生するなんて思いもしなかった。
「しかもSEEDなんてなぁ。コーディネイター側だったからまだいいんだが」
ナチュラルに生まれたなら下手をするとニュートロンジャマーがバラ撒かれた時のエネルギー問題で貧困で餓死する可能性がある。前世の世界ですら78億人の内極度の貧困層は7億人以上いたし、各国の相対的貧困層なら倍どころじゃ済まない。つまりナチュラルに転生すると相対的貧困が貧困層の倍だと仮定しても14億人、大体18%の確率で貧困層に生まれることになる。
そしてこの世界では戦争に加え、地球にはニュートロンジャマーが降らされ、エネルギー不足で貧困層が増大するのは目に見えている。つまりランダムで転生するとなると貧困層に生まれる可能性は高かったはずだ。
貧困層を脱出するのはかなり難しい。学歴が物を言うのは世界が変わっても変わりない真実だからな。
戦争のこともあって手っ取り早いのは軍人になることだろうが……アニメ中のナチュラルの兵士ってコーディネイターの前では一束いくらというぐらいに安い存在だったからあまりいい未来はないだろう。
戦時中を貧困層として生きるか超ハイリスクな軍人(しかも時期的には選べないor歩兵という可能性も)になるかという嫌な選択肢が濃厚な人生なんて願い下げだ。
それに比べてコーディネイターとなった今の俺は我が事ながら前世と同じ人類なのか疑いたくなるほどの身体能力を有する。
これが新たな可能性にして新たなる火種となるコーディネイターというものなのか、と納得できるものではある。しかし、前世で極々普通の新米社会人まで歩んだからこそこの異常性と驕らないように自戒をすることができるが、生まれながらのコーディネイターはそれがわからない……わかるはずもない。むしろそれがわかるなら人類はコーディネイターは新たな進化への1歩となっていたはずだ。
そして現状では能力が劣る旧世代の愚物に能力が勝る者が奴隷のように扱き使われ続け、にも関わらず旧世代……凡百のナチュラルは競争に敗れるという歪な社会が形成された。
旧世代呼ばわりされるナチュラルが危険視するのも当然と言える。
まぁ人類の歴史を作り上げてきたのはナチュラルで数もナチュラルが多いのだからマイノリティーは虐げられるのもある意味通りではある。
だからこそ戦争になるのは必定。
どんな英雄がいても、どんなに世論が戦争を望まなくても、早いか遅いかの違いはあっても間違いなく戦争は起こる。
肌の色が違うだけで格差が、差別が、争いがあった。
更に宗教なんて誰が始めたのか、誰が何を信じようが自由だというのにそれを押し付け合って争う。
そして水面下では富を貪ろうとする者達が暗躍することで増長させてゆく。
それなのに生まれから違う……母親から生まれるのは同じでもその経緯と結果はかなり違って、しかも通常の人間ではありえない髪の色、肌の色、瞳の色を服の色のように好きなように選ぶ――たまに違う色になって訴訟が起こったりするそうだが――なんてこともできる。
ナチュラルにとってコーディネイターは全く別の生物のような気持ちになるのも頷けるほどの違いができた。
だからこそ戦争は起こる。
そして俺はその最前線に立つことを厭わん。
なぜなら――
「可愛い弟が少しでも過ごしやすい世界にするために」
弟は病弱だ。
遺伝子操作されているコーディネイターなのに、だ。
医者に詐欺られたとかではなく、実のところ俺や弟は厳密にはコーディネイターではないことが原因だ。
まぁコーディネイターではないというのは定義によって変わり、俺的な観点から言っての話だ。
俺の両親がコーディネイターで、俺と弟はコーディネイト、つまり遺伝子操作をせずにコーディネイター同士から普通の営みで生まれた存在だ。
社会的地位の観点からは能力的にはコーディネイターと同等であるためコーディネイター扱いされているが、親はコーディネイターではあるがコーディネイターの定義であるコーディネイトはしていない事実的にはナチュラルだと俺は思っている。
だが、そのコーディネイター扱いとなったために超健康体な俺はいいとしても病弱な弟に向ける周囲の視線は冷たい……そして何よりも問題なのは母すらもその色があることだ。
そしてこれがコーディネイターはただの人間にしか過ぎないと断じたきっかけでもあった。
もちろん全員が全員そんな存在ばかりではない……が、それはナチュラルにも言えることだからな。
全く、家族だぞ?自分の子供だぞ?体がナチュラル基準すら病弱であるとは言っても家族は家族だろうに……まぁ誕生してから間もない動物的には弱い遺伝子を遺したくないというのは本能があるのかもしれないけど、そこは無視だ。
だから……守るべき存在と見下す、弱者を守るのは強者の努めなど驕ったことを言うつもりはないがせめてある程度成長して独り立ちができるまでは助けてやりたい。
そのために俺は――この手を汚すことになったとしても――
「……とりあえず、手を洗ってくるか。服は……よし、血はついてないな」
コーディネイターなのに病弱だからと弟をイジメていた子供を殴り倒して汚れてしまったからな。
万が一弟に気づかれたら怒られるし…怒った顔も可愛いんだが下手をすると接触禁止令が発令される可能性もある。要口封じ――んん、要警戒だ。
……ところでミゲルってやつ、SEEDで出てこなかったよな?
俺、ミゲル・アイマンって言うんだが……声がDestinyで出てきたハイネと同じなんだが?確かハイネって主題歌を歌ってる西川さんが声優してたよな?
まさか俺……原作キャラなのか?でもそんなキャラいたっけ?
んー、アニメはSEEDもDestinyも1回見たきりだしゲーム類はやってないしガンプラはよく組み立ててたけど……フリーダムとかアカツキとかカラミティとかいいよな!……でもザクウォーリアとグフイグナイテッドとドム……ドム……なんだったか忘れたが、この3機は許さん。
オリジナルに失礼だ。制作陣はもうちょっと考えろ。
せっかくジンとかシグーとかディンとか格好いいMSに、ガンダム界のアッガイに次ぐペット枠バクゥなんてMS……MAだっけ?……まで生み出したのにほんとアレは萎えた。どれぐらい萎えたかというと結局SEED系は1回しか見てないぐらいにな!……本当はちょうど社会人になってアニメとかゲームとかの時間が確保できなかっただけなんだけどな。
ガンプラはちょろっと動画配信で小遣い稼ぎしてたから後のDestiny以降の作品、00とかageも知っているけどストーリーは全く知らん。キャラ名ぐらいはガンプラに記載があればって程度だ。
「問題は直接関係してくるだろうSTARGAZERとASTRAYだっけ?はガンプラでしか知らないからプラントの敵か味方かもわからん」
主要機体はガンダムヘッドだから連合側……と言いたいけどZAFTはフリーダム系、ジャスティス系、プロビデンス、Destinyに入ったら結構なガンダムヘッドが出てくるからな。
あ、そういえばオーブの可能性もあったか……ってASTRAYはまんまM1アストレイの影響がありそうだからオーブの所属かね?
ちなみに口封じに失敗してしこたま母親に怒られた。
弟を害する者は子供であろうと許す気はないので反省する気は0だがな。