原作突入まで少しあります。
基本、主人公は事なかれ・平和主義です。
第壱話 カレとカノジョの出会い
ある日のこと、僕はいつも通りに目を開けた。すると、
「おはようございます、マスター」
超が付くくらい綺麗な女の人の顔があった。それも
黒い瞳が、僕の顔を映している。
「あぁ、君が従者か」
「はい、私が従者です」
「名前は?」
「マスターの意のままに」
「え? いいの? 適当でも」
「意のままにと適当はイコールではありません、というより
「成程、日本語の文法は完璧か」
「はい、日本語の文法は完璧です」
この会話の間に、腕時計の長針が一回りした。
僕はベットに寝ている。というより寝かされている。
少しだけ顔を持ち上げ、周りを見ている。
すぐ左に窓があった。木漏れ日が気持ちいい。窓の外には何かの樹の枝が見える。葉っぱの色は青青しい。勘だけど、たぶん初夏。日差しからしてそう思う。あと、ちょっと空いた窓から風が入って来てカーテンが揺れている。
何かイイ。
そんでもってそのベットに半分乗っかるように、長身の美女がちょうど僕の顔を覗き込むような態勢で僕の顔をじっと見ている。
美女は黒と白のメイド服を着ていて、細身だがでるべきところはすっごく出ている。ていうか当たっている。
純白の長髪をストレートにしている。たぶんだけど膝裏くらいまであるだろう。嘗て見たことが無いくらい長い。いや、女性の髪を凝視した事なんてないけど。
肌はとっても白い。肌色というより白色だ。白磁のように輝きそうな白。
凄くイイ。
「僕の名前は知ってる?」
「
ハイ正解。前世(でいいのか?)と同じ名前だ。やっぱりいいね、しっくり来る。
ていうか、フルネームで呼ばれたのは出席確認で名前を読み上がられた時以来だと思う。結構珍しい名字だと思うけど、なぜかフルネームで呼ばれた。
ちなみに家族からはハル、友達からは名字で呼ばれるのが僕の日常。いや、前日常。
だからマスターと呼ばれるのは新鮮だ。当たり前か。
「君の名前、
「
「じゃあ
「巡洋戦艦改造の空母も止めてください。いっそフネから離れてくださいマスター」
「じゃあハク、綺羅川 ハクで」
「何の脈略もありませんが、それでお願いします」
「宜しくハク」
「はい、マスター」
従者の名前が決まったところで、上半身を持ち上げる。相変わらず我が従者は零距離言葉のキャッチボールが好きらしく、一向に僕から離れる気はない。
めっちゃ見つめられている。おまけに頬を
「ところで、ここは何処?」
「マスターと私の
「オーケー、君の英語の発音がとっても素敵だということはよくわかった。詳しく頼むよ」
「はい、ここは日本国、
「へぇ、で、この部屋……というか家は?」
「私が建てました」
「……は?」
「私がこの家の建築を計画・実行しました」
「……
「マスターはここに来た時——つまり昨夜の深夜ですが——お休みになられていたので、マスターを固く汚い地面に寝かせるわけにはいきませんので、造りました」
「……どうやって?」
「樹を斬り、錬金し、造りました」
「そんな事が出来るんだね」
「マスターのために必要な力です」
知らなかった。最近の従者は建築が必須科目なのか、凄いな。
「ていうか、錬金って?」
「石やら土やらを元に、金属などを創造する術です。埃からでも金を造れます。生命以外なら何でも可能です」
なにそれ凄い。
想像よりずっと万能なんですが。神様、貴方の基準がわかりません。
「で、今は何時?西暦で頼むよ」
「はい、西暦1835年です」
「え、マジで?」
「はい、マジです」
「江戸末期って……。ていうかここ、普通に水道とかあるんだけど。盗賊とかこないかなぁ」
「結界を張っております。太陽が直撃しても
そいつはすごい、本当にハイスペックだな。
神様、予想以上もいいところです。
というか、先刻一瞬目が怖かったんだけど。あと、そろそろマジで零距離会話止めてほしい。あと頭を撫でないでほしい。
なまじハクの方が背が高いから、やりたい放題やられてしまう。おまけにこっちは下半身はベットイン状態。
「これから百年、十世紀、ずっとここで暮らしましょう」
……聞き逃せない単語が入ったんだけど。
うん、普通ヒトの
「私という不老不死の従者との
ちなみに私はそもそもダメージを受けるということもありません。この『世界』の
そして私が生き残っている限りマスターは死にませんし、その逆も然りです」
……リアリー?
神様、貴方と再会できる日は来ないかもしれません。
「地球が滅んでも、また別の星に移れば良いだけの話です。さぁ、
……だから、零距離言葉のシグナルビームはほどほどにしてほしい。
まぁいいか。気楽に、気長に、長閑に過ごさせてもらいますか。
ハクが作ってくれた朝食を食べながら、そんなどうでも良いことを考える。
めちゃくちゃ美味かった。
ちなみに食材も自在に生み出せるらしい。といっても野菜とか果物とか穀物とかの種を生み出し、植えて、成長させたそうだ。家の裏に畑やら水田やらがあった。
あと肉や魚は生み出せないので、ハクは直接うさぎを狩ったり川に行って釣ったりしてきてゲットしたそうだ。
要領が良すぎて泣けてくる。
というか本当に万能で僕のすることが無い。
ため息をつきながら、前世から持っていたイルカのペンダントを弄んだ。
転生生活一日目、飯食って風呂入って終了。
基本ほのぼのです。
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