第56話 演習内容の確認
学院に来た翌日。
俺は特に予定もなかったので、ミスト先生が残してくれた資料を読むことにした。
「水の魔法は攻撃には向いておらず、回復や防御にこそ真価を発揮する。
また戦闘のサポートにも向いており、水のメイジがいるのといないのとでは大分状況が異なる」
ここら辺は常識か……まぁ水も使い方次第で攻撃に向くと思うんだけどなぁ。
お?
ここから先は教えるべき初歩魔法一覧か?
コンデンセイション:大気中の水蒸気を液体にする魔法。
ヒーリング:怪我や病気を治すことが出来るが、より高い効果を得たいなら秘薬と合わせて使えば良い。
スリープクラウド:雲を作り出して、それに包まれると眠ってしまうが、術者よりも位が高ければ耐えられる。
アイスウォール:文字通り氷の壁を作り出す。
ウォーターシールド:水の壁を作り出す。
ウォーター・ウィップ:杖に水を絡ませて鞭を作り出す。
「学院で習ったのはここら辺だな……。
まぁスリープクラウドは実習じゃなく知識だけだったけど」
って言うか俺も実習の監督とかするんだよな?
うわぁ嫌だなぁ。
昔実習の時アイスウォールを制御しきれなかったやつがいた。
下の部分の強度が足りなかったみたいで、術者の方に倒れてきたのだ。
その時ミスト先生はいつもの眠たい目ではなく、鋭い目で倒れてきた氷の壁にウォーター・ウィップを巻きつけて反対側に引っ張り倒した。
あの時はミスト先生すげぇとだけ思ってたけど、今思えば反射神経と魔法を使うスピード共に凄まじいものだったのではないか?
「もしかしてミスト先生ってかなり高位のメイジだったのか?
今度学院長に聞いてみるか……」
俺はとりあえずミスト先生への考察は後に回して、資料の続きを読んでいった。
俺自身この学院では水の魔法を使わなかったので、水の攻撃魔法とヒーリング位しか使えない。
そう言えばヒーリングってまだ試したことないんだけど、俺のヒーリングってどの位の効果があるんだろう?
スクウェアクラスが使えば、切断された腕をくっつけることも出来ると教わったが……トライアングルになってそんなに経ってない俺なら?
これはいくらなんでも試せないしなぁ……機会があったら使ってみよう。
俺自身だったら装備してから自己再生の方が効率は良いんだけどね。
「あぁそうだ!
この学院にいる間ずっとツボツボを装備していよう……いつ何が起こるか分からないし!」
俺はそう思い、思い立ったが吉日とばかりに速攻でツボツボを装備した。
試しに机に思いっきり脛をぶつけてみたが、その程度の打撃ならデコピン位のダメージしか受けないようだ。
「流石ツボツボ!
まぁこれで少々の事故なら巻き込まれても大怪我しないだろう」
とりあえず今日は資料にある魔法試してみるとしよう。
まずは……アイスウォールかな?
さてどの位の大きさの壁が出せるかな?
「アイスウォール」
ピキピキピキという音と共に目の前に氷の壁が出来上がる。
厚さ50センチ縦横ともに3メートルの壁ができた。
「こんなもんか?
とりあえず寒い……もっと着込んでくれば良かったな」
俺は寒さを堪えながら目の前の壁を崩すと、氷の塊はみるみる溶けていった。
「じゃあ次はスリープクラウドか……これは普通に使い勝手がいいからしっかり確認しておかないと」
目の前に出てきた人の頭よりも少しだけ大きい雲を色々と動かしてみる。
予想以上に自分の思い通りに動かせるようだ。
そこにタイミング良くウサギが現れたので、ウサギにスリープクラウドを掛けることに。
すると3秒もしないでウサギは眠ってしまった。
雲は役目を終えたというように静かに消え、残ったのは横たわっているウサギだけ。
「これは……即効性だな。
人間がどのくらい耐えるか分からないけど、30秒は掛からないだろう」
俺はこの魔法の予想以上の有用性に驚きつつ、危険性を危惧した。
「相手に使われたら厄介だな……水のスクウェアクラスを敵に回す予定は無いけど、もしこれを使われたらかなりキツイ戦いになるな。」
俺はそんなことを考えながら、不眠持ちのポケモンを頭の中で探していく。
しばらく思考し続けていると、もう辺りが夕焼けで赤く染まっていることに気付いた。
「今日はこの位にしておくか……。
まぁこれで教えるべき魔法は使えることが分かったから大丈夫だろう。
後はどうやって教えていくかだけど……普通に教科書通りに教えるのが妥当だな。
それで質問を聞きながら、それに応える形にして授業をすれば生徒の頭にも入りやすいだろう」
そんな風に授業構成を考えながら、俺は歩いて部屋へと戻って行った。
部屋に帰ってから資料の続きを読み進めて、やっと最後のページまで来た。
「これで最後か……結構俺自身のためにもなったな。
学院でやったときより覚えやすいのは、水の魔法を使えることを隠さなくてもいいということも大きいのかな?」
俺は資料を机の上において、ベットに横になった。
天井を見ながら考えるのは、俺が今後どうするか……。
「(原作開始まであと2年弱……決して長くない。
それに新学期はもう直ぐだ。
そうなれば主要メンバーが入学してくるだろう)
はてさてどうなるかな?」
俺はもうすぐ入ってくる妹分とモンモランシ家の女の子のことを思い浮かべて、如何対応しようか考えながら眠りについていった。