まだ五巻の冒頭にたどり着かない和人。
それと追加ヒロインですが……
のほほんさん 19
山田先生 3
どっちもヒロインにしない 3
と、まあ圧倒的なのほほんさんの勝利が決定しました。そのうち絡み始めます。
二十二話
……あのあと、千冬さん、じゃなくて、織斑先生の殺気立った目に睨まれながらどうにかこうにか自己紹介を終えると、ホームルームは織斑先生(さすがに学習した)が必要事項を告げて終わった。
女子達は即座に取り囲もうと……しない。さっきの強烈な自己紹介(打撃付き)が効いているようだ。
「おい、カズ! 久しぶりだな!」
「……ん、そうだな。正確には一ヶ月ぶりだが」
ちなみに俺は先ほどの打撃のダメージで机に伏している。
ヤバい、まだ頭がくらくらと………。
「………大丈夫か?」
「一番いい頭痛薬を頼む」
「外部からの衝撃に頭痛薬は効かないぞ」
「……無念………!」
俺達の昔と同じようなやり取りを聞いて、女の子達が何人か寄ってきた。
「久しぶりだな、和人。相変わらず最初から馬鹿をする」
「織斑先生の連打を受けた人など初めて見ましたわ……」
「あ、あはははは……一夏が言ってたのってこういうことだったんだ……」
「変声術は見事と言える領域だったが、やりすぎたな」
どうにかこうにか起き上がり、一夏と、その近くにいる女の子四名を見て一言。
「一夏」
「何だ?」
「この人達の紹介を頼む。あの時に一応顔は合わせたし、だいたいの外側の情報は持ってるから、お前が仲間として過ごしての印象を、な」
「代表候補生とかってのはわかってると。だったら確かに俺からのほうがいいかもな」
一夏はうんうん、と頷き、
最初にポニーテールの黒髪の少女を指し、
「こいつは篠ノ之ほう……」
スパーン!
俺と箒の打撃に一夏はサンドイッチされた。美味しくなさそう。当然だが。
「幼なじみの顔ぐらい知っとるわ」
「お前にも和人の馬鹿が感染したのではないか?」
「じょ、ジョークだ」
ならいいが。というか箒よ、馬鹿ってなんだ。
「あの人の真似を自己紹介で最初にやる時点で馬鹿だ」
そうですか。
「ぐ……」
サンドイッチ攻撃に涙目になっていた一夏は、それでも復活して、金髪の長髪を持つ少女を指した。
「セシリア・オルコット。印象は、そうだな……プライドが高い一方で、それに見合う努力を怠っていない」
その評価に頬を染めたオルコットが、こちらを見て一礼。
「セシリア・オルコットですわ。これからよろしくお願いいたします」
「よろしく」
で、次に短い金髪の少女を指し、
「シャルロット・デュノア。ほら、電話で話した」
「ああ、あの薄幸少女」
「薄幸って……間違ってはいないけど」
そう言えば相談を受けていた。俺の言葉にデュノアは苦笑している。
「印象は……機転が利くっていうのと、気が利くっていうのが大きいかな」
「あはは……よろしくね」
「うん、よろしく」
デュノアが一礼するのに俺も答える。
「私はまだか?」
「これからするって」
銀髪の少女を一夏が諌め、こっちに向き直る。
「ラウラ・ボーデヴィッヒ。戦いの時とかは常に冷静で、いつも苦戦させられる」
「……お前の夫という紹介が抜けているぞ」
「だからそれはおかしいだろって………、それはもうあとでいいや。とにかくそういうことだ」
どういうことだ。まあいい。
「桜井和人だ。よろしく」
「はっ! よろしくお願い致します」
いきなり敬礼された。
「え、どうした、ラウラ?」
一夏も戸惑ったように問う。それに対しボーデヴィッヒは大真面目に答える。
「この人はアメリカで中将クラスの権限持ちで、私は佐官だからな」
「……学園内では関係ないだろうし普通にしてくれればいいよ」
あっさりと言葉を返すと、あっさりとボーデヴィッヒは頷く。
「うむ、わかった」
その後、学食へ向かう。
その途中、
「ああそうだ、箒」
声をかけると怪訝そうな表情を浮かべて箒は答える。
「なんだ?」
「あれ、ちゃんと使っているか?」
箒は俺の質問に複雑そうな表情を浮かべた。
「……いや、まだ使っていない」
無論、誕生日プレゼントとして送った香水のことだ。
「まあ機会があったらちゃんと使ってくれよ。使わない方がもったいない」
「……わかっている」
「ん? 何の話だ」
一夏が振り向いてこちらに聞いてくるが、
「「なんでもない」」
俺と箒は声を揃えて答えた。
「そ、そうか……」
一夏は気圧されたように頷いた。
と……向かった先、食堂で、
小柄な少女が手を腰にあて、ふんぞり返って立っていた。
「遅いわよ、一夏! 何やってたの……げっ」
おいおい、人の顔見ていきなり『げっ』は酷いだろ。
「一ヶ月ぶりだな、鈴?」
「……そうね」
苦虫をかみつぶしたような表情で鈴が頷く。
「紹介とかしてて時間かかったんだ。悪いな、鈴」
一夏が謝るのに対し、鈴はそっぽを向いた。
「い、いいわよ別に」
俺達のやり取りを見ていたデュノアが訊いてきた。
「鈴とは知り合いなの?」
「アメリカ行ったあとも時折日本には帰ってきていたからな。その時に顔を合わせた」
「納得しましたわ……。ですが、なんで鈴さんはあのような態度を取るのですか?」
オルコットは頷いたあと、再度疑問を浮かべた。
「うーん、第一印象の問題かな?」
「第一印象? どういうことだ」
ボーデヴィッヒも首をひねる。
「俺もよくわからんが、あいつ俺と会うなりいきなり……」
「こらあ! 何話してんのよー!」
鈴に怒鳴られた。
………余談だが、皆、あとで鈴から事情を聞いたらしく、その時は結構複雑そうな表情だった。
「で、お前はどうしてここに来ることになったんだ?」
昼食が終わる頃、一夏が切り出した。
「前後の状況は機密に関わるから省くけど、コアに触ったら反応した」
「なるほど、一夏と似たようなものか」
箒が頷く。
「まあな。その後自分でIS作って……」
「ちょっと待ちなさい」
「何だ鈴?」
「マンダリンみたいに言うのやめなさいよ。じゃなくて……」
「自分で作ったの? 自分のISを? 設計とかも全部やって?」
デュノアが鈴のあとを引き取って訊いてきた。
「ああ、まあな」
頷いたが、呆然としている。
「……普通そういうのって何年かかるものじゃない?」
「まあ、一応俺も天才だし。アイデアはもともとあったから」
「そういうものか……」
ボーデヴィッヒが渋々頷いた。
「まあ、実戦訓練の時に見せることになると思うよ」
「試合、楽しみにしてるぞ」
一夏が笑みを浮かべ、この話は終わった。
昼食を終えたあと、皆でこれから暮らす学生寮に向かった。
………のだが、妙に寮が騒がしい。
「可愛い〜!」
「お持ち帰りしていいかな? いいよね!」
……あ。まさか……。
「今度は何をやらかした?」
俺がダラダラ汗を流し始めたことに気づいた箒がジト目になった。
「いや、まだ俺と決まったわけじゃ、ない、……よ?」
「ほう」
箒はそれだけ言って前に進む。
先ほど織斑先生に、俺は一夏と相部屋だと指示されたので、そのままついて行くことにすると、
部屋の前に、俺のものと思われる荷物と、それを守ろうとせんばかりに仁王立ちしている沢山の………
二頭身半デフォルメメイドロボがいた。
「……やはりお前だったか」
箒が呆れたようにため息をつく。
こっちを発見するなり、ロボ……プチネウスは『ひょこっ』と看板を掲げる。
『おにもつおもちしました』
「……ご苦労」
『なかにはこびいれますか?』
「頼む。鍵はこれだ」
ぽーんと鍵を放ると見事にキャッチ。
ジャンプして鍵を鍵穴に差し込んで開け、
『ねうす、ねうす、ねうす……』
妙なかけ声を挙げ、荷物を次々と運んでいく。
『可愛い〜!』
たちまち近くにいた少女達が詰め寄ってきた。
「あの子達桜井くんが作ったの!?」
「私にも作って!」
「私にも!」
「……すげえ金かかるけど」
「まけて!」
「たくましいなオイ!」
大騒ぎになったが、どうにかこうにか逃げ切った。
転校初日から大変だったな……
『大変にしたのはあなたですが』
「全くだ。ってあれ!? 今の声、何だ!?」
エーネと一夏に俺は反論できなかった。
そういや、エーネの紹介忘れてたな……。
やっと始業式編が終了。
次は実戦訓練……のはずなのに、またなんかあります。
感想誤字脱字等あればよろしくお願いします。