学園祭準備編に突入。大丈夫なのか、これ………?
二十七話
翌日、SHRと一限の半分を使って全校集会が行われた。内容は今月中旬にある学園祭についてだそうな。
「学園祭……確か、女の子達がチアガールの格好をしてアニソンに合わせて体育館でダンスを踊るっていうあれか」
「………それ、あるかもしれないけどほんの一部だからな?」
「じゃあバニーガールや魔女っ子になってバンドで凄まじい技巧を見せたり、いまいちよく分からん映画を撮ったりするやつ?」
「ちょっと待て、どう考えたっておかしいだろお前の学園祭に関する知識の偏りっぷり! というか落ち着け、色んな人に怒られる!」
ここは二次創作だから問題ない。
まあ、メタな発言は置いといて。
生徒会長のお出ましだ。
一夏が俺の袖を引っ張ってくる。
「おいカズ、あの人」
「ああ、昨日お前が初対面ですぐに仲良くなった……」
「そのネタはもういい! ……生徒会長だったんだな」
「らしいな」
俺達がひそひそと会話をしていると、楯無さんの威勢のいい声が響いた。
「名付けて、『各部対抗織斑一夏争奪戦』!」
「え……」
「えええええええええ〜〜〜〜〜っ!?」
なんか大騒ぎになった。ハウリングで頭がクラクラする。
「ちょっと待て、俺の了承とかないし、第一カズはどうなるんだよ!? お前も男子だろ!?」
「え、昨日のほほんさん経由で生徒会入ったけど? 取り敢えずこっちの仕事もあるから名前だけってことで」
楯無さんとの縁もあったため、放課後に「さくらんのスペックならお仕事楽勝だよ〜」と誘われたのだ。部活、特にやりたいのとか浮かばなかったし。
「はぁっ!?」
「ちなみにこの企画俺の提案」
「………え?」
ぽかん、と一夏がもう一度口を開ける。
「いや、会長に『遺恨の残らない形で一夏の所属決めさせるにはどうしたらいいか』って聞かれたから、『本人はどこに所属する気もないみたいだし、もういっそ争奪戦でもさせてみては?』って。まさかマジでやるとは思わなかったけど」
「………裏切り者ぉ!」
ホールでの一夏の叫びは、興奮した女子達の声にかき消された。
放課後の特別HR。クラスの出し物を決めるために皆とってもテンションが高い。
「……却下」
クラス代表の一夏の疲れ切った声に皆がブーイング。
アイデアとして書かれているのは、
ツイスター、ポッキーゲーム、王様ゲーム、ホストクラブ………
なるほど、女子の発想ってどこの国でも変わらんもんだな……
俺はアメリカのIS研究所にいたときのことを思い出して苦笑した。
「頑張れ一夏、男子の命運はお前に預ける」
「それ単なる責任放棄だよな!? ………とにかく、もっと普通の意見をだな!」
「メイド喫茶はどうだ」
言ったのはボーデヴィッヒ。なんか皆ポカーンとしてる。
「客受けはいいだろう。それに、飲食店は経費の回収が行える。確か、招待券制で外部からも入れるのだろう? それなら。休憩場としての需要も少なからずあるはずだ」
「え、えーと……皆はどう思う?」
「いいんじゃないかな? 一夏達には執事か厨房を担当してもらえばオーケーだよね」
戸惑いながらの一夏の問いにボーデヴィッヒの援護射撃のように答えたのはデュノアだ。
「織斑君、執事、いい!」
「それでそれで!」
うんうん。ここまでは原作通り。俺は普通に執事キャラを全うするとしよう。
………が、それだけでは済まなかった。
「ねえねえ〜」
「うん? どうしたんだ、のほほんさん」
「さくらんってさー、声変えるのじょーずだし〜、顔も肌も男の子としてはそーとーきれいだよね〜?」
うん、設定上では早乙女アルトだし。……この言葉何回繰り返してるんだろうな?
「……肌とかは俺にはよくわからないけど、それがどうしたんだ?」
いぶかしむような一夏の声。………え、あれ、何を言おうとしてるのかなのほほんさん!?
「さくらん、メイドやっても似合いそうだよね〜」
再び、空気が固まった。
「…………え?」
「だからー、さくらんにはあえて執事服じゃなくてメイド服を着てもらうのはどーかなーって」
ほんわかしたのほほんさんの口から恐ろしい提案が飛び出した。
まずは深呼吸。そしてのほほんさんをまっすぐ見て、
「ちょっと待とうかのほほんさん。まずは落ち着いて深呼吸」
「む〜、私はいつでも落ち着いてるよ〜?」
だったらなおさら問題だ。俺はクラスの別の一角へ振り向いた。
「あのさ、オルコット。メイド服ってどんな人が着るもんだっけ?」
「ど、どうしてそこでわたくしに振りますの!?」
わたわたと俺の突然の質問にオルコットは戸惑う。
「いや、お嬢様オーラ出てるから、家にメイドの一人や二人いてもおかしくはないかな、と」
「確かにいますけど! もっとたくさんいますけど!」
じゃあいいじゃん。
「それで、メイド服はどんな人が着るもの?」
「……メイドに決まっているでしょう?」
「メイドの性別は?」
「女ですわ、何を当たり前のことを訊いて……」
「つまりだ。メイド服って女が着るものなのに男の俺が着るっておかしいだろ!」
これが言いたかっただけである。
しかし俺の渾身の言葉はのほほんさんの次の一言に容易く打ち砕かれた。
「えー、でもきっと可愛いよ〜」
「桜井君のメイド服……」
「涙目でご奉仕……」
「………イイ」
あ、あれ? ちょっと!?
なんかのほほんさんの一言に女子の一部が熱に浮かされたような目でこっちを見始めた。まずいまずいまずい、なんとかしなければ!
さ、最後の頼みの綱!
「なあ一夏! 男がメイド服っておかしいよな!?」
それに対して一夏はにっこりと笑みを浮かべ……
「俺はともかくお前は似合うんじゃないか? 小学生の頃、違うクラスの男子に告白されてたろ?」
しまったぁああああああ! さっきの恨みがあるっぽい!
「っていうか俺のトラウマを掘り返すなぁあああああああ!」
救いがないのは、そいつがずっと俺のことを男勝りな女子と思っていたことだ。しかも一夏と付き合っているかもって設定だったらしい。それでも告白しようとした勇気は認めるが、それを聞いた時箒は涙目だった。俺だって涙目だった。一夏は爆笑していたので二人掛かりでボコった。
「さくらんのメイド服見てみたい人ー?」
『はーい!』
のほほんさんの提案に、俺以外全員が手を挙げていた。……っておい
「よし、じゃあ多数決でカズの当日衣装はメイド服に決定な」
『イェーイ!』
「……………マジかよ」
ちょっとがっくり膝をつきたい気分になった。
『落ち着いてくださいご主人様』
「……どうした?」
『いっそやりすぎるぐらいやってはどうでしょう? メイドになりきって、むしろ女子の心を折るのです』
「………おお」
理解した。その手があったか。
「エーネ、やはりお前は最高だ」
『何を今更当たり前のことを?』
うわ、褒め言葉に動じもしないし。
まあいいや。
「………やってもいいけど。一つだけ、条件がある」
「ん? なんだ?」
久しぶりに俺をやり込めたことに一夏のテンションは上がってるっぽかった。イラッ☆としながらも、
「執事抜きでメイドの人気投票をすること。最下位になったらもう二度とやんない」
ネタ扱いされて来年も同じ轍を踏むのはごめんだ……と暗に匂わせる。
………本当は、こいつらに「もう二度とやりたくない」と思わせるための秘策だけど。そして来年もやるけど。
「………まあ」
「……それぐらいなら」
「いい、かな? 最下位とかとりそうにないし」
……よし、上手くいった。
俺にメイド服を着せたこと、後悔するがいい。ふふ、ふふふふふふふふふふふふふ…………!
………取り敢えずですね、一つ前のあとがきを確認してください。
ええ、72ページまで行くといいなあとか書いてあります。
で、原作持ってる方、確認してみてください。
現実。37ページまで。
申し訳ありません!(土下座)
無理でした!ここのシーンはどうしても入れたかったのでいじってたらこんなことに…………。
顔の設定をアレにしたのはこのためっていうのが大きいのです。
とはいえ、次回、楯無さんの修行を受ける受けないで揉める一夏を傍観します。え、主人公? ………さあ?