更新速度が足りない………!
今回はギリシャの神様登場編。しかし、今まで見た神々の感じから予想すると……。
第三十九話
階段を上って行った先には、まさにギリシアの典型的な神殿を彷彿とさせる荘厳な建物があった。……いや、事実神殿だったな。
しかし、その場にそぐわないものも一部あったりする。
「ねえ、あれってさ………ケーブルじゃない?」
「ええ、私もそう思っていた所です……」
歩きながらひそひそと後ろで裕美とリリィが囁きあう。所々に配線が見え隠れしているのである。荘厳さがぶち壊しだった。何のケーブルなんだろうな。
と、ニンフが振り返った。どうやら聞こえていたらしい。
「ええ、天界だけに光を繋いでいます。ご安心ください、自然に優しい太陽光発電です」
インターネット、しかも自家発電かよ!
……ゼウスの雷を利用するとか神様パワー的な何かとかそう言う発想は無いのか。どんだけ俗っぽいんだ。
どうも思っていた以上にオリンポス十二神は残念な面子な気がしてきた。
「……ところで」
「あれ、体はもう大丈夫なのか、ミオ?」
俺の言葉にミオはむっとした顔をした。
「それはもう大丈夫。じゃなくて、どうしてそんなに警戒してるの? 味方だし手を出さないって言ったはず」
「ああいや、……単純にギリシャ神話の話を聞くに好きになれなそうだなって思っただけ」
「……どういうこと?」
「人妻にすら手を出す主神に、嫉妬深くて、手を出された方に呪いをかける女神。美貌のことで驕ったから呪うとかはまだ分かるが、それでもあいつら身勝手すぎだろ」
「さ、流石に今は時代が違うし自重くらいはしてる…………はず」
「そう祈りたいね」
肩をすくめ、警戒心を含んだ微妙な気分のままで神殿の奥に進む。
最奥部には十二の座席が円をなしていた。
………勿論至る所に這い回っているケーブルが見えて台無しである。
ケーブルの先には最新式のパソコンがあった訳だが、十二の座席の一つに座る、女性が何やらニヤニヤしながら画面を眺めている。
あれ、十二の座席に座ってるってことは………。
よく見ると、席の横に大きな楯が立てかけてあった。楯の真ん中には蛇の髪を持つ鬼女の首が張り付けられ、壮絶な表情で正面を睨んでいる。……え、メデューサの首が張り付けられてるってことは、あれは………絶対防御と名高いアイギスか?
と、いうことは。「PKKは正義」とか画面見てニヤニヤしながら言ってるのは、その使用者、
…………戦女神の、アテナ?
………だめだ、ここでくじけたら駄目だ立花剣太! オリンポス十二神が残念なのは来る前から予想がついていただろう!
アフロディーテーが女性向けのギャルゲをやっていようと!
アレスが邪気眼を発動していようと!
アルテミスがショタ同士が絡み合うBL同人誌を眺めていようと!
ヘパイストスがフィギュアの造形をしていていようと!
デメテルがSMグッズの手入れをしていようと!
ヘルメスが椅子の上で逆立ちをしていようと!
アポロンが占いサイト眺めつつ神託を作っていようと!
ヘスティアがのんびり船をこいでいようと!
ヘラが浮気発見用の探偵社を運営していようと!
平常心を保っ………………………いや、誰がどうみても無理だろこれ。
誰一人として会議をやる気がないじゃねえか!
残念だろうとは分かっていたがよもやここまでとは思ってなかったよ!
席に座っている10人を見ていると頭痛がしてきた。
ため息をつきたくなるのを必死でこらえていると、足音が聞こえてきた。この感じだと二人……ちょうど空いてる席は二人分だな。
やってきた二人が大きな音を立てて扉を開き、発した第一声は、
「ガハハハハ、ようやく来たようだな!」
「グハハハハ、待ちかねたぞ!」
………………………。いや、遅れてきたのはそっちだろ。
必死で突っ込みを我慢していると、変な予想が思い浮かんだ。
………以前、ハーデスは凄い性悪で嫌な神だ……と悪魔の幹部が漏らしているのを偶然聞いたことがある。
けど、確か今バカ笑いしているポセイドンとゼウスはそれぞれハーデスの弟らしいのだ。ちなみにポセイドンが上でゼウスが下な。………骸骨と目の前の筋肉がどうしても結びつかないけど。
それで、くじでどこを担当するか決めたらしい。結果、ハーデスが冥界、ポセイドンが海、ゼウスが地上となったというのだが……。
……ひょっとして、ハーデスがそういう嫌な性格してるのってこいつらが単純馬鹿なせいじゃないか?
ハーデス、あんたも苦労してるんだな………。
しかし、潜在的な敵に対して多大な同情を寄せるという現実逃避は長くは続かなかった。
「お、お待たせ致しました。では、情報交換などを……」
ミオが若干引きつつも話を始めようとした時、
「なっ!?」
「むっ!?」
雷が近くに落ちた時………その十倍以上の大きな音と衝撃が神殿を揺らしたのだ。
「ぎゃあああああ!」
突如として上がる男の絶叫。何事かと思って振り向くと、
ヘパイストスが手にしていたフィギュアの一部が欠けていた。どうやら今の衝撃で天に召され……もとい、ご臨終だったらしい。
………気持ちはとてもよく分かる。分かるのだが、今はフォギュアについて熱く語り合っている時間はないのだ。
「むう、事前に聞いていた通り仕掛けてきおったか。しかし、このオーラは………!」
「遥か昔に封印したはずの………!」
ゼウスとポセイドンが唸る。気がつくと残りの10人も真面目な顔で席から立ち上がっていた。………最初からそういう態度でいてほしかったな。
どうもヘパイストスの目が憎悪で爛々と燃えているように見えるのだが、それは俺には一切関係のないことである。きっと。
さて、どうやら荒事らしい。皆で頷きあい、十二神と共に神殿の外に出ると、
そこには、想像を絶する光景があった。
はい、そんな訳で残念極まりない神様でした。
次回から戦闘ですよ!