第153話−再会
「どうもお久し振りです、クロッカスさん!」
「……確かにな。お前さん、ブルックか」
リヴァースマウンテンを下り、その麓にある灯台にエース達は辿り着いていた。
以前ならば、ラブーンの治療の為にいるとは限らなかった灯台守のクロッカスだったが、ラブーンが旅立った今は当たり前のように灯台に住んでいた。
そこへやって来た小型船に、当初は「また、新たな連中が来たか」程度の感覚だったが、まさかそこから降りてきた着飾った骸骨がルンバー海賊団のブルックと名乗るのは予想外だった。
アフロを生やした骸骨という姿ではさすがに当初は半信半疑という印象のクロッカスだったが、話をしてみれば確かにブルックと納得するしかなかった。
そうなると次に疑問なのはラブーンと出会えたかどうかだ。
「ラブーンとは?」
「ヨホホホ、無論会えましたとも!」
とすると、今いないのはどういう事だろうか、と繋がる。
ブルックが見捨てたという可能性はありえない。
そこら辺は信頼している。
しかし、そうするとはぐれた、という事だが……ここで疑問が生じるのはブルックがリヴァースマウンテンを下ってきた船に乗っていたという事だ。
ブルックが遭難したと聞いたのはグランドラインの中間点近く、霧の海での事だとクロッカスは聞いていたし、ブルックから聞いた話もそうだった。では、何故グランドラインの外から来た船に乗っているのか?
グランドラインの周囲にはカームベルトがある。
海王類の巣であるそこを抜けるのは命がけだ。1匹や2匹ならともかく、大量に来られては手が回らず対処しきれない。
「それがですね、実は……」
(中略)
「……という訳なんですよ」
既に、アスラを通じてあの巨漢の正体をブルックは教えられていた。
アスラにしてみれば、あの肉球のような着弾痕を見れば、誰の仕業か一目瞭然だった訳だが。
「成る程な、王下七武海の一角、バーソロミュー・くまか……」
それを聞いて、王下七武海の事を知っているエースとサボは納得した。
が、納得しきれない者もいる。ブルックだけではない、ゾロやたしぎ、サンジも王下七武海という存在についてよく知らないからだ。
いや、ブルック以外はサボのこの一言であっさり納得した。
「七武海の名前の通り七人いて、ミホーク師匠もその1人だ」
「成る程、凄く強い海賊って事か」
「世界政府公認の物凄く強い海賊って事ですね」
「成る程、物凄く強いのはよく分かった」
何しろ、他ならぬミホークが海軍本部中将と目の前で真っ向やりあった挙句、島1つ壊滅させてしまったのだ。これで、王下七武海が雑魚だ、などと思う奴はいない。
ブルックはどうにも現在の感覚からはずれていたが、それでも王下七武海の1人が海軍本部中将と真っ向やりあって、引き分けたと聞いて、その強さに納得した。それでよく助かったものだと、「ああっ、何だか今になって胃がキリキリと痛み出しました、って私胃、ありませんでした!」と、それでもボケをかましていた訳だが。
空を飛ばされた結果として、東の海へとブルックは飛ばされた。
幸い、はぐれた場合の合流地点はこの双子岬と約束していたから、しばらく滞在させて欲しいとのブルックの言葉にクロッカスも喜んで了承してくれた。
久方ぶりに会う2人だ。積もる話も多かろうと、その夜エース達は船へと戻り、2人で話しこんでいた。
ブルックはクロッカスが自分達を探す為にゴール・D・ロジャーの船に乗り込み、現在伝説で語られる海賊王のクルーの1人となっていた事にブルックは驚くと同時に、そこまでしてくれた事に感動して礼を述べたり、逆にクロッカスから、その時にルンバー海賊団がグランドラインから逃げ出したとの話しか掴めず、恥ずかしながらつい最近までそう思っていたと謝られたり、いやいや、病気でヨーキ船長がグランドラインを離れる事になっただけじゃなく、全滅して消息が途絶えてしまった自分達のせいだからとブルックが止めたりと話は止まる事がなかった。
もちろん、本当の事情を先だって会ったばかりの海軍本部中将アスラが教えてくれたという事を知り、びっくりする場面もあったが。
——さて、話合い、ラブーンを待つのは一週間と決まった。
短いように感じるかもしれないが、東の海からリヴァースマウンテンに回り、ここまでやって来るまでにもそれなりの日時を消費している。それと合わせるとそれなりの時間を待つ事になる。
もちろん、ブルックは一週間を過ぎようが、今度は自分が待つ番だと、この地に残る事を宣言しているから、その場合は残念だがここで別れるしかない。
そうして——その一週間はあっとういう間に過ぎた。
「……それじゃあ残念だけど」
「ヨホホホ、仕方ありません。というか、どうも私の都合につきあわせて申し訳ありません!」
もちろん、それはエース達が決めた事だから文句を言うつもりはないし、仲間を待ちたいと願うブルックの気持ちも分かる。
共に後ろ髪が引かれるものを感じつつも、エース達は出航していった。
その船の姿をブルックは見送っていた。
エース達は今の自分を受け入れてくれた人達だった。一緒に行きたかったという思いはある。だが、それ以上に今の世ではただ1人、ではなく1体の仲間であるラブーンを見捨てる訳にはいかない。
次第に小さくなる船の姿を見送っていたが、クロッカスがうながし、ブルックも踵を返して戻ろうとした。
その時。
ぶおおおおおおお———!
はっと振り向いたブルックの視線の先で。
ストルツ・フランメ号が浮き上がってきた巨大な鯨の口の中に、エース達の叫び声と共に消えていった。その光景にブルックは。
「お帰りなさい!ラブーン!」
無事に戻ってきたラブーンの姿に歓声を上げた。
ラブーン帰還です
クロッカスさんとラブーン、2人との再会でした
きっと、2人は夜を徹して語り合った事でしょうw