第15話−出会い
SIDE アスラ
さて、スモーキーマウンテン、じゃない、不確かな物の終着駅か。
着いたはいいが、臭い。
「……海軍だ」
「……ああ」
「……一体何の用だ…?」
ざわざわと周囲が煩い。
まあ、仕方ないだろう。ここは物も人も不要になったものが集まるとされている。すなわち無法地帯。そんな所に海軍将校の制服を着た人間が来れば、それは周囲から警戒もされるだろう。
そう思っていたら。
「おい……手前、何の用だ」
「ここはお前らの来る所じゃねえ。とっとと帰れ」
どうやらここをねぐらとするチンピラらしい。
まあ、気にしても仕方がないので、放っておいてエースを探す。とはいえ、結構広いからな、この中から子供1人を探すとなると……結構手間だ。
「おい、聞いてんのか!」
怒鳴り声を上げてくる、さっきからんできたチンピラ。
まあ、周囲の人間がびくついてたり、武器持ってる所を見ると、そこそこ使える方なんだろう、きっと。
「ああ、ちょうど良かった。おい、お前らエースって子供を知らないか?まだ4歳ぐらいなんだが」
ぶち切れたのか、2人して襲い掛かってきた。
……いかん、少しいい気になってしまってたか。
とりあえず、片方は俺がぶちのめし、もう片方はこっちが手を出す前にアリスがノックアウトしてた。というか、あの様子からすると、臭いから近づくな!って感じだな、まあ、まともに風呂も入ってないんだろう、確かに匂いが凄いのは否めない……。
なので、アリスに関してはここで待ってるように伝える。
寂しそうに、『みゅぅ……』と鳴いたが、悪臭の辛さには勝てなかったらしい。素直に頷いて、少しでも匂いの元から離れようとしたのか、少し離れた木の上へと駆け上っていた。
……あれ?虎って木登れたっけ?と思ったが、まあ、月歩で空駆けれるアリスには関係ないだろう、そう思い、ゴミ山へと足を踏み出した。
ああ、無論、先程ノックアウトした2人にも聞いたが、2人ともエースの事は知らなかった。
さあて、どこにいるのかね……というか。
「しまった、俺、エースの外見知らない」
漫画と現実じゃ実際の顔立ちは違うからなあ。
とりあえず、それらしき子供なり捜して、確認するしかないか……。
……彼はこの時、自分がどこまでONE OIECEの原作を読んでいたか、自分が読んでいた話の段階でこの地が出ていたか、思い浮かべる事はなかった。
そう、この地の事を彼は当たり前のように原作に出ていたと感じていたのだが、それに違和感を覚える事はなかったのだった。
SIDE エース
海賊になりたい。
自分の親は世界的に有名な大海賊、海賊王ゴールド・ロジャー。
けれど、自分はそんな親父はまるで敬意など払えない。
母には感謝している。
母は父を愛しただけの、普通の女性だった。けれど、俺を守る為に命を賭けて、自らの内に隠しとおした。普通、子供は妊娠してから出産までの期間が多少の違いはあれど、42週を過ぎれば過期妊娠と呼び、母体に深刻な影響を及ぼしかねない。
だが、エースの母、ポートガス・D・ルージュは実に20ヶ月、85週以上もの間エースを自らの内に隠し通した。……そして、それと引き換えに自らの命を失った。
だからこそ、俺は母には大恩を感じているし、母の姓を名乗っているのも別に父を嫌っているとか、父の姓を名乗れるような世界情勢ではないとかいう事以上に、母に感謝しているからだ。
ガープに関しては、まあ、当人のやる事は無茶苦茶だが、感謝はしている。
最初は俺が事故で死ねばいいのかと思っているのか、と思っていたが、最近単なる素だって分かってきた。
英雄とも呼ばれる海軍中将でありながら、親父ことロジャーの最期の頼みを受けて、母を匿ってくれたし、俺が生まれても海軍に突き出したりはしなかった。
……ただ、矢張り父とは違う気がする。
感謝はするが、尊敬はしてない、て所か?出来なかったとも言うんだが。
それでも俺は海賊目指している。
最近、俺は友人が出来た。この地に住む、ストリートチルドレンの1人で、サボっていう。
妙にこいつとは気があった。
ひょっとしたら、俺も1人で寂しかったのかもしれないな……。
2人で今日も相談している。
「……だからさ、海賊になるには何が必要かって話なんだよ」
「そうだよなあ。矢張り船じゃないか?」
海賊、一言で言ってしまえば、海の犯罪者。
裏を返せば、海に出て、犯罪をすれば海賊。
逆に言えば、海に出れなきゃ、そいつは海賊じゃなく、山賊って事だ。
この大海賊時代、山賊は海賊に比べ大体質が劣る。質の高い奴はまず海へ出て、ロジャーの財宝を目指すからだ。……何たって、海賊王の残した財宝だ。並大抵のもんじゃないだろう。
けれど、船は高い。
ちょっとそこらで買うって訳にはいかない。
「……まずは、そうなるとやっぱし金だよな」
「ああ……」
ただ、貯めるといっても、普通の方法で貯められるものではない。
手っ取り早いのは矢張り奪う事だが、2人だって真面目に働いてる一般市民の皆さんから強奪ってのはどうにも気分がよろしくない。それに何より、そういう人から奪った金じゃはした金だろうし。
かといって、4歳の子供が銀行襲った所で、返り討ちにあうのがオチだろう。
仮に上手くいったとしても指名手配されるだろうから、船を造ってもらうにしても、果たして誰が作ってくれる事やら。金さえ出せば調達してくれるような奴らがいるのは2人も知ってるが、そういう場合は通常の船の入手手段以上に余計に金もかかるし、そうやって手に入れた船は欠陥がある可能性もある。……どこの世界でも、海賊でも調達屋でも情報屋でもそうだが、少数の『本物』の陰には多数の『偽物』がいるものだ。
「体鍛えて、犯罪やってるような奴らから掠め取っていくしかねえな」
「ああ、それしかねえだろ。可能なら奪うのが一番だけどな」
犯罪者から奪えば、その金を狙ってくるのは、奪われた当人だけ。
犯罪者が官憲に『盗まれた!』って言える訳もない。
それに、そういう奴らなら上手くいけば、普通の猟師とか漁師なんかの市民とは桁違いの大金を持ってる事もある。まあ、そんなに上手く行く事は滅多な事じゃないだろうが。
だが、彼らのそんな予定は、予定で終わる。
ダン!
突如として、彼らの立つ枝に振動が走る。
はっとして、2人がそちらを見ると、そこには海軍の制服を纏った男が1人。
「お前がポートガス・D・エースか?」
そう言って、男は自分達に視線を向けてきた……。
SIDE アスラ
さて、スモーキーマウンテン、じゃない、不確かな物の終着駅か。
着いたはいいが、臭い。
「……海軍だ」
「……ああ」
「……一体何の用だ…?」
ざわざわと周囲が煩い。
まあ、仕方ないだろう。ここは物も人も不要になったものが集まるとされている。すなわち無法地帯。そんな所に海軍将校の制服を着た人間が来れば、それは周囲から警戒もされるだろう。
そう思っていたら。
「おい……手前、何の用だ」
「ここはお前らの来る所じゃねえ。とっとと帰れ」
どうやらここをねぐらとするチンピラらしい。
まあ、気にしても仕方がないので、放っておいてエースを探す。とはいえ、結構広いからな、この中から子供1人を探すとなると……結構手間だ。
「おい、聞いてんのか!」
怒鳴り声を上げてくる、さっきからんできたチンピラ。
まあ、周囲の人間がびくついてたり、武器持ってる所を見ると、そこそこ使える方なんだろう、きっと。
「ああ、ちょうど良かった。おい、お前らエースって子供を知らないか?まだ4歳ぐらいなんだが」
ぶち切れたのか、2人して襲い掛かってきた。
……いかん、少しいい気になってしまってたか。
とりあえず、片方は俺がぶちのめし、もう片方はこっちが手を出す前にアリスがノックアウトしてた。というか、あの様子からすると、臭いから近づくな!って感じだな、まあ、まともに風呂も入ってないんだろう、確かに匂いが凄いのは否めない……。
なので、アリスに関してはここで待ってるように伝える。
寂しそうに、『みゅぅ……』と鳴いたが、悪臭の辛さには勝てなかったらしい。素直に頷いて、少しでも匂いの元から離れようとしたのか、少し離れた木の上へと駆け上っていた。
……あれ?虎って木登れたっけ?と思ったが、まあ、月歩で空駆けれるアリスには関係ないだろう、そう思い、ゴミ山へと足を踏み出した。
ああ、無論、先程ノックアウトした2人にも聞いたが、2人ともエースの事は知らなかった。
さあて、どこにいるのかね……というか。
「しまった、俺、エースの外見知らない」
漫画と現実じゃ実際の顔立ちは違うからなあ。
とりあえず、それらしき子供なり捜して、確認するしかないか……。
……彼はこの時、自分がどこまでONE OIECEの原作を読んでいたか、自分が読んでいた話の段階でこの地が出ていたか、思い浮かべる事はなかった。
そう、この地の事を彼は当たり前のように原作に出ていたと感じていたのだが、それに違和感を覚える事はなかったのだった。
SIDE エース
海賊になりたい。
自分の親は世界的に有名な大海賊、海賊王ゴールド・ロジャー。
けれど、自分はそんな親父はまるで敬意など払えない。
母には感謝している。
母は父を愛しただけの、普通の女性だった。けれど、俺を守る為に命を賭けて、自らの内に隠しとおした。普通、子供は妊娠してから出産までの期間が多少の違いはあれど、42週を過ぎれば過期妊娠と呼び、母体に深刻な影響を及ぼしかねない。
だが、エースの母、ポートガス・D・ルージュは実に20ヶ月、85週以上もの間エースを自らの内に隠し通した。……そして、それと引き換えに自らの命を失った。
だからこそ、俺は母には大恩を感じているし、母の姓を名乗っているのも別に父を嫌っているとか、父の姓を名乗れるような世界情勢ではないとかいう事以上に、母に感謝しているからだ。
ガープに関しては、まあ、当人のやる事は無茶苦茶だが、感謝はしている。
最初は俺が事故で死ねばいいのかと思っているのか、と思っていたが、最近単なる素だって分かってきた。
英雄とも呼ばれる海軍中将でありながら、親父ことロジャーの最期の頼みを受けて、母を匿ってくれたし、俺が生まれても海軍に突き出したりはしなかった。
……ただ、矢張り父とは違う気がする。
感謝はするが、尊敬はしてない、て所か?出来なかったとも言うんだが。
それでも俺は海賊目指している。
最近、俺は友人が出来た。この地に住む、ストリートチルドレンの1人で、サボっていう。
妙にこいつとは気があった。
ひょっとしたら、俺も1人で寂しかったのかもしれないな……。
2人で今日も相談している。
「……だからさ、海賊になるには何が必要かって話なんだよ」
「そうだよなあ。矢張り船じゃないか?」
海賊、一言で言ってしまえば、海の犯罪者。
裏を返せば、海に出て、犯罪をすれば海賊。
逆に言えば、海に出れなきゃ、そいつは海賊じゃなく、山賊って事だ。
この大海賊時代、山賊は海賊に比べ大体質が劣る。質の高い奴はまず海へ出て、ロジャーの財宝を目指すからだ。……何たって、海賊王の残した財宝だ。並大抵のもんじゃないだろう。
けれど、船は高い。
ちょっとそこらで買うって訳にはいかない。
「……まずは、そうなるとやっぱし金だよな」
「ああ……」
ただ、貯めるといっても、普通の方法で貯められるものではない。
手っ取り早いのは矢張り奪う事だが、2人だって真面目に働いてる一般市民の皆さんから強奪ってのはどうにも気分がよろしくない。それに何より、そういう人から奪った金じゃはした金だろうし。
かといって、4歳の子供が銀行襲った所で、返り討ちにあうのがオチだろう。
仮に上手くいったとしても指名手配されるだろうから、船を造ってもらうにしても、果たして誰が作ってくれる事やら。金さえ出せば調達してくれるような奴らがいるのは2人も知ってるが、そういう場合は通常の船の入手手段以上に余計に金もかかるし、そうやって手に入れた船は欠陥がある可能性もある。……どこの世界でも、海賊でも調達屋でも情報屋でもそうだが、少数の『本物』の陰には多数の『偽物』がいるものだ。
「体鍛えて、犯罪やってるような奴らから掠め取っていくしかねえな」
「ああ、それしかねえだろ。可能なら奪うのが一番だけどな」
犯罪者から奪えば、その金を狙ってくるのは、奪われた当人だけ。
犯罪者が官憲に『盗まれた!』って言える訳もない。
それに、そういう奴らなら上手くいけば、普通の猟師とか漁師なんかの市民とは桁違いの大金を持ってる事もある。まあ、そんなに上手く行く事は滅多な事じゃないだろうが。
だが、彼らのそんな予定は、予定で終わる。
ダン!
突如として、彼らの立つ枝に振動が走る。
はっとして、2人がそちらを見ると、そこには海軍の制服を纏った男が1人。
「お前がポートガス・D・エースか?」
そう言って、男は自分達に視線を向けてきた……。