最初の一歩
4月、それは出会いの季節。
温かな光に誰もが笑顔を浮かべ、桜吹雪が舞うこの季節を心待ちにする。
そして新学期、新たな新入生を迎えたり、クラス替えがあったり学生にとっては一つのビッグイベントである。
そしてそれは自分にも当てはまり、中学二年生になる私は新しいクラスメイトに思いをはせている。
今年から少子高齢化の影響で母校である私立聖祥大付属中学は共学になり、クラスメイトに女子が増えるのだ。
楽しみでないはずがない。
そして私は名簿から自分の名前を見つけ教室に入る。
新たな出会いに心躍らせながら。
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「鈴木裕也です。
卒業までよろしくお願いします。」
無難な言葉を並べ、当たり障りのない自己紹介をする私は転生者である。
2度目の生と特殊な才能を与えられた存在それが転生者。
つまり2度目の中学2年生である。
おそらく自分ような存在は自分以外にもいるだろう。
いや間違いなくいる。
そうであろうという人間がこのクラスにいるのだ。
整った顔立ちに銀髪、まるで猫のようなオッドアイそして名前が
「|御神零《みかみれい》だ。
まあよろしく。」
厨二神にでも愛されたような容姿の少年がそう言ってほほ笑み、目くばせする。
容姿に対して厨二的な名前。
それを見た瞬間私は笑いに腹筋がよじれるかと思いながら笑いをこらえた。
しかし、周りの反応は違った。
女子から黄色い声援が上がったのだ。
聞こえてくるなかにもかっこいいや、クールなども聞こえてくる。
しかし、その中に混じって何人かが顔をしかめてひそひそ会話をしているのを発見した。
内緒話が気になるのは人間の性である。
そう耳を澄ましてしまったのだ。
「フェイトちゃん、なんだか今ものすごく気持ち悪い視線を感じたの。
だからかえっていいよね。」
その声が聞こえた時点で話を聞くのをやめた。
それだけでわかってしまったのだ。
そこがどんな人間の集団なのか。
主人公グループ。
そして今の声は間違いなくこの世界における主人公のものだった。
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その後は特に特質すべきことはなかった。
いや正確にいえば自分の自己紹介の後はすぐに眠ってしまっただけなのだが。