第六歩
始業式より一日たった今日、我らがクラスの中は静かであった。
理由はただ一つ。
教室に入ったときに黒板に書かれていたある言葉を見てしまったからだ。
その言葉は過半数の生徒に絶望を与えた。
その中でショックを受けることもなく平然としていたのはごく少数である。
そしてその黒板に書かれていた言葉とは
『抜き打ちの学力確認テストの実施について』
我らが私立聖祥大付属はいわゆる進学校である。
それゆえにこういうこともごく稀にあるのだ。
そして、黒板にはこう続いていた。
『なお問題は春季課題を解いていれば解けるレベルに設定されており、50点未満のものは追試、それで駄目な場合補習授業を行う。』
これを見たときは少し驚いた。
『補習』この文字を中学校で見ることになろうとはと。
しかし、前世において自分は大学受験目前の高校生だったし、今でもちゃんといつでも大学受験できるぐらいに勉強している。
この世界と今の余裕たっぷりの状況ならエリート人生も夢ではないのだ。
だからテスト事態にはあまり恐怖を感じることはなかった。
それゆえに自分にとって一番困るのはテストなんかではないのだ。
1から5時間目は主要5教科のテスト。
そして6時間目『学級活動』。
6時間目において行われるのは前日に作文だと先生が言っていたのは聞いている。
だが、この学校において作文とはちょっと適当に書いて終わる生半可なものではないのだ。
原稿用紙の枚数は最低数が設定されそれ以下は提出が認められないのだ。
そしてその枚数は400時詰め原稿用紙6枚以上。
最低でも2000文字は書かなくてはいけない。
問題は自分が完全に理系であり、作文などが苦手ということだ。
前世でも小論文の練習の時間は憂鬱なんてものじゃなかった。
もう叫びだしたい気分である。
もういっそ6時間目に逃走でも図ろうかと現実逃避をしていると
「テスト・・・やと・・・・・・?」
「フェイトちゃん。
どうしよう私全く勉強してないの・・・。」
そんな声が聞こえてくる。
どうやら隣は絶望組のようだ。
「大丈夫だよなのは!
問題は宿題と同じぐらいらしいしまだ希望はあるよ!」
「これ見て。フェイトちゃん。」
そう言ってなのはの手にはあるものが握られていた。
それはまばらにしか解かれていない課題プリントだった。
それに対してフェイトは唖然としながら
「なのは・・・。」
名前を呼ぶことしかできなかったようだ。
ちらっと見て書いてあるのは4割。
全問正解でも4割。
「なのはちゃんのそれならまだましや。」
そういってはやての手に握られてるのは白紙の課題プリント。
「はやてちゃん・・・。」
なのはも唖然としている。
それで確定したようなものだ。
そしてもう駄目であろう二人は向かい合い
「なのはちゃん!」
「はやてちゃん!」
「「追試一緒に頑張ろう!」」
誓いを立てるのであった。
隣で行われるそれを見て吹き出しそうになった自分は何も悪くない。
そう悪くないのだ!