第9話 入学とリトルリーグ
前回の決意の結果、あまりに良い子になり過ぎて小学校が私立に入れられてしまいました。
あれ、おかしいなー?
普通の小学校で良かったのに……。
両親曰く、メジャーリーガーになるんだから英語とかしっかり学べる私立の小学校にしたとの事です。
両親のそんな思いもあるなら頑張ろうかな。
一応入試みたいなのはありましたが、流石に享年30歳ですから余裕でしたよ。
ちょっと勉強し直したのは内緒ですけどね。
意外と小学校の入試って難しいんだな。
もし息子が生きていたら俺が教えていたんだろうか……。
妻のほうが勉強はできたから任せておいたかもしれないけど……。
いかん、もうあれは失われた過去なんだ。
俺は今を生きなければ、今の両親に申し訳が立たない。
気を取り直して行こう!
あ、小学校は私立聖祥学園というところです。
初等部から高等部までを備えた名門の女子校らしいのですが、初等部に限り共学という訳の分からない学校です。
まぁ、小学生は男女の区別はあまりないからと言うことなのかな?
そして小学生になったので、リトルリーグの入団許可をもらいました。
そしてこのメジャーリーガーのスペックのせいなのか、それともやりすぎたトレーニングのせいなのか、エースで4番をすぐに手に入れてしまって…。
なんだか申し訳ないけど、練習や特訓が楽しく毎日やっていたらドンドンと野球スキルが上昇していく始末。
これ、既に小学生のレベルじゃないかも?
まぁ、特典でメジャーリーガーを求めてしまったから、メジャーリーガークラスじゃないと相手にならないよね……。
そして野球以外のスポーツをやろうとすると、何故かそっちのほうが才能豊富のような感じです。
試しにサッカーをやってみたら、某翼並の事ができてしまったり、テニスをやってみれば某テニヌ並のことが出来たりと、この体のスペックが半端無いんですけど……。
逆に野球はそこまでひどい才能ではないようなので、野球をやるのが丁度良さそうと言う結論にたどり着きました。
と、とりあえず、人に迷惑かけない程度に加減しつつ野球を楽しみましょう。
加減して野球をやっていると、突然監督に呼び出されました。
監督の本名は良く分からないんだけど、みんなにはノムさんと呼ばれている人です。
「イチ! ワレ、手加減して野球やっとるやろ」
えっ……?
初めて他の人に気が付かれた!?
動揺する俺を見ながらノムさんは更に言葉を重ねる。
「ワシの目を舐めるなよ。練習が終わった後、残ってワシに本気を見せてみぃ」
そう言い立ち去られてしまった。
そして練習が終わり片付けも済み解散になった後、ノムさんと二人きりになる。
「ワシがキャッチャーやるさかい、思い切り投げてみぃ」
「で、でも……」
俺の返事も聞かずにキャッチャーのプロテクターを付けるノムさん。
そしてキャッチャーポジションに着き構える。
「一球でええ。ほら、投げてみぃ」
俺はイメージ負荷はある程度残しておきつつも、加減なしに思い切り投げ込む。
ズバン! ズルズルズル……ドン!
そのボールを受けたノムさんは、そのままの体勢で後ろの押され、バックネットの壁にぶつかる。
しかし、ボールはちゃんとキャッチしていた。
「ええ球、投げるやないか。しかし、このままやっていたら誰とも全力で野球はできんのぉ。それだけ力がありすぎるっちゅうこっちゃ」
俺は驚いていた……。
イメージ負荷があるとはいえ、俺の全力球を受け止めることが出来るなんて……。
驚く俺に対しノムさんは更に言う。
「力は制御せなあかん。ワレはそれは出来てるとはいえ、それでは全力で野球を楽しめんやろ。」
無言で頷く俺に対し言葉を続ける。
「そんなワレにワシのID野球を教えよう。ただ個人の実力があっても野球は勝つことが出来ん。敵味方のチーム全体を把握し、観客の心も把握し、時にはピンチを、時にはチャンスを演出し、試合の流れすら支配する野球や」
「ノムさん……」
「さぁ、今日はもう帰れ。明日からは厳しいぞ」
「ありがとうございます! 明日からもよろしくお願いします!」
それから毎日厳しい指導を受け、野球がまた一層楽しくなった。
もう、転生特典がメジャーリーガーとか関係なく野球を楽しみながら、もっと練習にトレーニングを頑張るぞ!