第30話 温泉卓球
フェイトの疲れを取るために、頭を撫でていたら、気持ち良さそうだ。
僕の撫では動物だけではなく、人間にも効果があるんだね。
今度はバルディッシュとかも撫でてみようかな?
「さて、僕はそろそろ宿に戻るよ」
「あ……うん」
撫でるのを止めると、残念そうな顔をするフェイト。
「それじゃ、また後でね」
「え?」
「いや……だって、ジュエルシードが見つかれば、僕も見に来るし、宿も一緒だから夜にはどちらにしても会えるだろ」
「そ、そうだね」
「じゃあ、あまり無理しない様にね」
「うん。タローも」
「僕は無理なことはしないさ。それじゃあね」
「うん。また後で」
さて、結構長話しちゃったな。
そろそろみんな温泉から出て来た頃だろう。
んじゃ、急ぎ気味で戻るとするか。
お、渡り廊下の所に三人娘とユーノがいるな。
あれ? アルフもいるね……。
何を話しているのかな?
「君かね、ウチの子をアレしちゃってくれてる子は……。あまり賢そうや強そうには見えないけど?」
「あなたは、どなたですか?」
アルフの言葉に、ユーノが答える。
ちゃんとなのはの前に出るなんて、しっかりしてるじゃないか。
2人は軽く睨み合い、ちょっとした緊張が走る。
僕はその隙に近くに気配を消し、みんなに気が付かれず到着っと。
「あーっはっはっは。ごめん、ごめん。人違いだったかな? 知ってる人に良く似ていたからさ」
沈黙を破ったのはアルフだった。
でも、その言葉で明らかにホッとするみんな。
(今のところは挨拶だけ。忠告しておくよ。子供はいい子にしてお家に居ることだね。おいたがすぎると……がぶっと行くよ)
((!?))
「さーて、もうひとっ風呂行こうかね〜」
(なのは……)
(うん……)
念話で語りかけ、そして去って行くアルフ。
僕はとりあえずアルフの方に行くか。
みんなの方からは、アリサの大声とすずかの声が聞こえる。
「なーにあれ! 昼間っから酔っ払ってんじゃないの?」
「お酒を飲んじゃいけないわけじゃないけど……」
「だからと言って節度ってもんがあるでしょ、節度ってもんが!」
うん、ごもっとも。
さてさて、アルフは……っと、いたいた。
「やあ、アルフ」
僕の声に反応して瞬時に間合いを取る。
あ、気配消しっぱなしだった。
僕の顔を見ると警戒を止める。
「なんだい、タローじゃないか。おどかさないどくれよ」
「ごめんごめん。アルフがなのは達に威嚇してるから、気が付かれないように見ていただけなんだ」
「あれを見ていたのかい? 何だか恥ずかしい所を見られたね」
「ん? でも、あれってなのは達のために言っていたんだろ。ジュエルシードを今後取り合うなら戦わざるを得ないって」
「うっ……」
「要するに怪我をさせたくないから、邪魔をしないで欲しいって事だよね」
「ま、まぁ、フェイトと同じぐらいの子供と戦いたい訳じゃないから……。で、でも、こっちはジュエルシードを手に入れなきゃなんないんだ。また出て来るなら戦うよ!」
「優しいんだね」
「か、からかわないどくれよ」
照れた様にそっぽを向くアルフ。
フェイトの使い魔だけあって、優しくてイイ子なんだよね。
「あ、あたしは温泉に行くから……。くれぐれも、タローはジュエルシード探索の邪魔はしないどくれよ」
「うん。邪魔はしないよ。近くで見てるかもしれないけどさ」
「……タローは相変わらずだねぇ。あたしは諦めたよ。それじゃあね」
「うん、また後で」
さて、みんなと合流するかな。
合流したらアリサがアルフの愚痴をわーわー言っていたけど、割愛っと。
とりあえず頭を撫でたら大人しくなってくれたよ。
その後、アリサが卓球をしたいと言うから、みんなで卓球コーナーに移動する。
移動の合間にユーノに卓球のルールを教えておいたよ。
まぁ、ルールって程のものはないんだけどさ。
卓球コーナーに着くと、恭也さんと美由希さんが卓球をしている。
いや……2人とも、軽く人間の反応速度を超えてるから。
どんだけ激しいラリーなの!?
なのはとすずかは……いつもの風景なんだと流してるけど、アリサとユーノは引いてるよ!
そんなのを見ていると念話が聞こえてくる。
(あーもしもしフェイト? こちらアルフ)
(うん)
(ちょっと見てきたよ、例の白い子。まぁ、どーってこと無いね。フェイトの敵じゃないよ)
(うん。今度は油断しないから負けない。ジュエルシードは今晩には見つけられると思うよ)
(さすがはあたしのご主人様。一応、白い子には警告しといたけど、出て来たら手加減しないならね!)
(うん。一緒に頑張ろ)
アルフからフェイトへの連絡か。
今晩にはジュエルシードが見つかるのか。
夜に出ることみんなに言っておかないとな。
(あと、旅館でタローと会ったよ)
(え!? 同じ旅館なんた……。私もさっき探索してたら森の中で会ったよ)
(そっか。邪魔はしてこないと思うけど、見には来そうだね)
(うん。間違いなくタローは来るよ。こっちはタローに気を取られない様にして、白い魔導士に全力を出すだけ)
それで念話は途切れた。
フェイトは探索をしつつ念話をしているけど、大変じゃないのかな?
僕も念話使いたいなー。
まぁ、今は卓球を楽しもう。
まずは美由希さんと僕がやるんだけど、全てネットに当てて相手のコートに落としていたら怒られた。
仕方が無いから、卓球台の角に全て当ててたらいじけちゃった。
「まだまだだね」
その後は恭也さんとやる事となったけど、向こうは大人げなく神速を使って来た。
こちらも対抗して回転をかけて弾まない球を打ち返したり、分身魔球や波動球で攻撃開始!
某庭球王子の様な試合になってしまった。
忍さんとすずかは、身体能力の高さで常人以上のラリーを繰り返している。
なのはとユーノは何だか仲良く、ゆっくりとしたラリーをしているね。
さて、僕は高町兄妹に勝利したので、アリサとやるか。
「アリサ、僕と卓球やろうよ」
「あたしにあんな動きは出来ないわよ!」
「別に試合じゃないんだから、仲良くラリーしようよ」
「な、仲良くね。うん、それならイイわ」
その後は2人でずっと打ち合う。
アリサの打ちやすい場所に僕が打つから、ラリーが長く続いたよ。
「タロー、ハンデ有りで勝負よ!」
「別に良いけど、堂々とハンデ有りとか言われても……。とりあえず目を瞑って、利き腕じゃない方でやるね」
そんな訳でハンデをつけたけど、やっぱり僕が有利だよね。
仕方が無いから回転をかけて打ち返し、アリサが打つ球を全て同じ場所に飛んでくる様にした。
これならアウトにならないよね。
でも、これだとずっとラリーが続くんだけどさ。
とりあえずアリサが疲れた所で終了。
結局みんな汗をかいたので、また温泉に逆戻り。
そんなこんなでゆっくりしてたら、あっと言う間に夕飯になってしまいました。
夕飯は部屋出しの美味しい料理。
借りた部屋は4部屋あり、部屋自体はフスマで遮ってはいるものの繋がっている。
ちなみに部屋分けは子供グループで一部屋、なのはを抜かした高町家で一部屋、すずかを抜かした月村家で一部屋となり、残りの一部屋はリビングのように使っている。
みんなでリビング部分に集まり、一緒に舌鼓を打ちながら美味しく食べたよ。
僕にはちょっと上品過ぎるから、口に合わないと言えば合わないかな。
その後はカードゲームをしたり、お喋りをしたりとのんびりと過ごす。
夜になると早めの時間だが、明日も遊ぶんだからと寝かしつけられる。
まぁ、長距離ドライブと温泉による湯疲れがあるから、思った以上に疲れているんだろうけどさ。
そして、みんなで一部屋なのは子供だからなんだろうな。
アリサとすずかは早々と寝てしまった。
なのはとユーノは念話でお喋りをしている。
(昼間の人、この間の関係者かな? またこの間みたいになっちゃうかな?)
(うん。お互いにジュエルシードを探しているならぶつかっちゃうよね。なのは……今ならまだ引き換えせるかもしれないよ)
(ううん。私だけ引き返しても、ユーノ君はジュエルシード探しを止めないんでしょ。)
(まぁ……僕が発掘したものだからね)
(ジュエルシード集め。最初はユーノ君のお手伝いだったけど、今は私がやりたいからやってるんだよ。だから、私を置いて一人でやるとか言ったら怒るよ)
(ありがとう、なのは。また今夜にも何かあるかも知れないから、眠れるうちに寝ておこう)
(うん。おやすみなさい)
(おやすみ)
そう言って2人は寝てしまった。
まぁ、最近はジュエルシードが見つかってないから、そういう意味でも疲れているんだろうな。
直ぐに寝息が聞こえて来たよ。
さて、僕も寝ておくか。
おやすみなさい。