001 転生? するみたいです
「突然だが、お前には転生してもらう」
本当に突然ですね。
「うむ。……ところで、質問とかはないのか? 他の奴らは喜び勇んでヒャッハーするか死んだことを受け入れられずに暴れるかのどっちかだと聞いているが」
え? 僕、死んだんですか?
「死んだの。なんじゃ、死んだときのことは覚えとらんのか?」
死んだ時も何も記憶が全くないんですが。
「何? ……ふむ、これが死んだ時の状況じゃが見るかの?」
その言葉に肯定の返事をすると、自分の死んだ時(と思われる)映像が頭の中に流れ込んできた。
うわー、これはグロいですね。
「……自分の死体だと言うのにずいぶん落ちついとるの」
いや、頭完全に潰れてて誰だかわからないし、そもそも記憶がないから見えたところで自分だと実感できる気もしないんですが。
「ふむ。頭が潰れたからその影響でここまで記憶が残っていないのかの」
ですかね? まあどうでもいいですが。ところで転生の話はもういいんですか?
「おお、そうじゃったそうじゃった。お前さんにはこれからある世界に転生してもらう」
どこだかわからないんですか?
「いわゆる物語の世界じゃ。その世界に関する知識を持っていれば名前くらいは教えられるが……お前さん分からんじゃろ?」
まあ記憶ないですしねぇ。
「本当にマイペースじゃな……」
いえいえ、何も分からないから流されてるだけですよー。で、何すればいいんです?
「その割にはずいぶん馴染んでるように思えるがの。……まあやってもらうことは一つだけじゃ。——元々の話を、原作を、改変するのじゃ」
今更重々しい雰囲気を作ろうとしても完全にぐだぐだですよ?
「誰のせいじゃと思っとる!?」
もしかして僕のせいですか?
「もしかしなくてもお前さんのせいじゃ……」
それはすいませんでした。でも僕元々の話って知らないんですがどうやって改変するんです?
「まあ別に無理にとは言わんよ。お前さんを含めて10人の転生者がおるからの。その中で誰が一番変えられるかを競うんじゃ」
はぁ。で、一番になると何かメリットってあるんですか?
「うむ。大体の願いなら何でも叶えてやる。まあ、大体の奴は他の世界に行きたい、というがの」
うーん、まあ向こうで何か欲しいものがあったら貰えばいっか。ところでデメリットはあるんですか?
「いや。一番でなかったらそのまま一生を送ってもらうだけじゃな」
へー。まあ何をどうすればいいのか分からない僕に勝ち目なんてないですが。
「いや、一応ストーリーが始まるまでは原作の知識を持っているやつは干渉できんように設定しておるからの。それに、知識がない奴らは主要な人物の側に行きやすくなっとるからの、その時に先んじれば勝つことは可能じゃ」
なるほど。まあ何も分からないんで、結局好きに生きるしかないんですけどねー。
「……まあ、好きにしたらええ。で、じゃ。この転生の際にこちらから何らかの特典を与えとるんじゃが何がいいかの?」
それって何でもいいの?
「うむ。元々その世界にないものでもこちらですり合わせて適応させるから何を言っても構わんぞ」
じゃあ安心して成人出来る家庭に生まれさせて下さい。
「……これまた随分と欲の無い希望じゃの」
だって「世界最強にしてください」って言って生まれた直後に死亡とか嫌ですよ?
「マイペースな割にしっかり考えておるのじゃな……。あーっと、じゃが成人までは生存に致命的な問題には巻き込まれないように設定されておるからの。元々の話に関しては例外じゃが」
つまり、僕の希望は特典にはならない、と?
「うむ」
でも基本的にってことは生まれることもあるんですよね?
「ないとは言わんが、特典の設定で、世界全体の改変を伴うような希望を言わない限りは起きぬな」
へー。じゃあ僕からは特にないので無しじゃ駄目ですか?
「全員に付けること、となっておるから無理じゃな」
じゃあ適当に決めといてください。
「適当にって……それでいいのかの?」
ああ、でも僕にデメリットがある様なのはやめて下さい。寿命が縮むとかそーゆーのは勘弁してほしいです。
「ふむ……まあこちらで適当に決めておくかの。ではこれで終わりじゃが、何か聞きたいことはあるかの?」
そうですね……そう言えば、あなたは誰なんです?
「神じゃ! 分かっておったんじゃないのか……」
へー神様なんですね。声を出してないのに会話が成り立ってたから、てっきり僕の妄想の中の人かと思ってました。
「もう少しまともなやつの担当になりたかった……」
担当とかあるんですね。
「うむ……。もう終わっていいかの?」
どうぞどうぞ。
「まあ期待はしとらんが、せいぜい頑張ってくれ」
わかりましたー。