俺達二人は、校長に言われて、ハンガーに向かっていた。だがしかし、向かっても向かっても一向にたどり着かない。
ある程度歩いていたら、突然光成が話しかけてきた。
「ねぇかっつん」
「どうしたてっつん」
かっつんというのは克影の頭文字から取っている。本人曰く、こっちの方が呼びやすいかららしい。
だったら俺もと、鉄《くろがね》を訓読みにして鉄《てつ》と呼んでいる。
さて、話題を戻そう。
「ここさ、さっき来たところだよね?」
「そうだな」
「何回目だっけ?」
「4回だな」
「「………迷った」」
弱冠15歳二人組みは、年に似合わず、私立高校と思われる校舎にて、迷子と化していた。
校内図を探しても見つからず、それぞれの直感でハンガーに向かっていた。
よくよく考えてみると、迷って当たり前だったのかもしれない。
「よし、次あっちに行こう!」
「いや、こっちだな」
二人とも左右別々の方向を指差して、意見が分かれてしまった。
そこからは、あっちだこっちだとぎゃあぎゃあ騒ぎあって、一向に意見がまとまらなかった。
「あ、あの!」
「ん?」「はい?」
二人であっちだこっちだと話しているうちに、後ろに同じぐらいの年の女の子がいる事に気が付かなかった。
服装からして、この学校の生徒なのだろう。と、迷っている二人に名案が浮かんだ。
「呼ばれて早々悪いが、ハンガーの場所を知ってるか?」
「は、はい。知ってます」
「出来たら、案内を頼んでもいいかな?恥ずかしながら道に迷ってしまってね。」
ハハハと、二人して頭をかきながら、恥ずかしそうにそう言った。
そもそもこんな所で声を掛けられる事自体が、疑問な所だったが、ここは武家の学校である。
一般市民の格好をしている二人組みが、廊下で騒いでいる事に違和感を持っても、普通だと思われる。
まぁ、この学校が武家の学校だという事を知らされたのは、後の話ではあるが。
「分かりました!こちらになります」
「こっちの道であってたじゃん!」
「るっせ!」
移動中も騒いでいる二人組みであった。
途中光成がはっと何かを思い出して、案内してもらっている子に話しかけた。
「そういえば、名前をきいてなかったよね?僕は鉄光成、よろしくね!」
「あ、はい。よろしくお願いします」
「俺は、黒鋼克影だ。苗字の読みは一緒だが、こいつとは兄弟でもなんでもないからな。」
慧にも間違えられそうになったが、よく兄弟と勘違いされてしまう事もある。
外見もそうなんだが、苗字の読みが一緒なだけでこうも間違えられやすいとは思わなかった・・・
「私は篁唯依と申します。」
「よろしくね、篁さん」
篁は、聞いたところ今年で卒業をして、衛士になるらしい。最近は女性も兵士にさせるとはな・・・
なんつーか、現実主義というか、利己的というか、この世界はどんだけやられてるんだよと、つくづく思う。
「そういえば、お二人はなぜこのような場所に?」
「ちょっと、志願をしようと思ってな」
「知り合いに頼んでみたら、テストをする事になって、ハンガーに行こうとしてたんだよ~」
テスト、というところに少し反応をした彼女は、妙な顔をしてこちらを向いた。
「鉄さん達は、戦術機に乗った事があるんですか?」
「あるよ~」
質問の解を得た彼女は、何かを決意した顔で、再度こちらを向いて、こう言った。
「教えてほしい事があります。」
篁さんの案内によって、何とかハンガーに付いた僕達は、現場にいた先生の指示に沿って、戦術機に乗った。
「操縦法などは分かりますよね?」
「えぇ、大丈夫です。」
「では、御武運を」
そして僕と克影はハッチを閉めて、ハンガーのシャッターが開くまで少しの間機器の操作に慣れるため、色々いじってた。
やはり、俺達があの作戦で最初から使っていた機体—————禍具鎚とは勝手が違うのか、コマンド入力が違っている。
どう違うかと言われても、少し説明に困ってしまうが、簡単に言うと『省略キーはあるのだが、コンボが存在しない』といえば分かるだろう。
機体慣れをしているうちに、シャッターが開いて視界がゴツゴツの機械から地面と草のある景色に移り変わった。
「これより平地での
「テストの相手は?」
「彩峰准将の命により、名を明かす事は許されていません。」
詳しい説明を聞き終えて、ちょっとした考えから相手の名前を教えてもらおうかと思ったが、やはり何か考えがあるのか、愁閣が伝えるのを許してない。
また、いつもみたいに何かを考えての案だろーが…今回ばかりは時間が悪かった。
さっき篁からいわれた言葉が頭から離れない。
『血の巨人』を知ってますか?————と、そう言われた。
詳しい話を聞いてみると、2週間前ぐらいから世界で噂されているたった一機の戦術機の事らしい。
BETAとの戦闘になると、血のような赤いオイルをメインカメラから流すそうだ。
しかも彼が現れる場所は、世界のどこにでも現れるらしい。
たとえばモスクワだったり、ドイツだったり、ギリシャだったり、それはもうハイヴにも現れたらしい。
もしそんなのが今回の相手だと想像していると…こちらも本気にならなければいけない。
「他にご質問はありますか?」
「いいや、特に何もない。ありがとうございます。」
「いいえ、ではご武運を」
オペレーターがそう告げると、テスト開始のアラートが鳴った。
そして目の前に現れたのは、二機の真紅の機体『瑞鶴』だった。
機体の色が赤色、そしてここが日本という事は—————と、答えに辿り着きそうなところで、それを片方の瑞鶴に阻まれた。
「!?チィ!」
少し反応が遅れたため、突撃砲が犠牲になったが機体自体に損傷は無かった。
だが、初手で遠・中距離の攻撃手段が無くなってしまったのは痛手であった。
『克影!』
「んだよ!」
突撃砲を長刀で斬られ、その後瑞鶴の連撃に反撃の隙を窺っていた所に、同じく突撃砲が斬られてないものの、もう片方の瑞鶴によって反撃が出来ないでいる光成から
突然の通信が入ってきた。
『片腕でも、戦闘ってできるよね!』
「あぁ!俺をなんだt…って、それかよ!?」
光成の質問に、当然と答えた俺が少ししてからその質問の意味に気づくのには、そうそう時間は掛からなかった。
だが戦術機と呼ばれるこいつで、やるとは思わなかったが、まぁ言われたからにはやるしかない。
さぁて、今からやるのはちょっとしたマジックだ。
まず最初に別々に戦闘している俺と克影が、背中を合わせるようにして集まる。
そしたら瑞鶴は警戒して相対するように俺達の正面に立つ。
隙を見計らって俺の何も持っていない腕で、克影の長刀を抜いて、そのまま前方の瑞鶴に切りかかる。
「シッ!」
機体を止まらせないようにして動き、そして徐々に力を上げていく。
速さもそうだが、長刀を片腕で振るっているので、そこに重さが掛かる。
つまり、威力が重く普通に切りかかるよりも速い長刀が左右から切りかかってくることになる。
さて、どう出る?
、
瑞鶴01side in
でたらめだった。
とにかく、動きがでたらめ過ぎた。
まるで戦術機を自分の体のような機動で、左右からものすごい速さで長刀が襲い掛かる。
片方を防ぐものの、すぐにもう片方から襲い掛かってきて、徐々に押されかかっている。
いや、徐々にというのはおかしい。すでに押されている状況だ。
圧倒的過ぎるその力の前に、長刀は持たなくなり、ついには砕け散った。
「!?クッ!」
後ろに下がり、柄を投げ捨て、武装を突撃砲に換装し、次の攻撃の嵐に備え、銃口を敵に構えた瞬間———陽炎の片腕が飛来した。
「チィ!」
飛んできた腕を上に上がって回避し、片腕だけの
「なんだと!?」
推力の均衡を失った機体は、そのまま地面に機体を擦り付けるように墜落した。
「ウッ」
当たり所が悪かったのか、頭を強打した私は、視界がぼやけて見えた。
そして戦闘中に最後に見た光景は、片腕を失った陽炎が私の前に立っている姿だった。
瑞鶴01side out
紅い瑞鶴との戦闘に勝利した俺だが、正直危なかった。
機体が俺の速度に追いつけなくなり、両腕の耐久が持たなくなって、片腕どころか両腕吹き飛ぶ所だった。
もし突撃砲で投げ飛ばした腕を撃ち落したら、早めに終わっていただろうが、上に逃げられた時はもう片腕を捨てる事になると思ってヒヤヒヤした。
まぁ腕がなくても、戦闘は続けられるんだけどねぇ・・・
ちょっとした芸当をしたけど、多分武士道精神の人にはめちゃくちゃに怒られるんだろうな~
だって、ほらねぇ・・・
光成の方も何とか勝ったみたいだし。判決でももらいに行こうかな。
・・・・・・多分落ちるけど。
どうも、陽炎です!
忙しすぎてハーメルンの方でしか投稿できませんでしたが、やっと復帰しました。
近いうちにもう一話投下します。