初投稿です。
生暖かく見守って下さい。
プロローグ
それはテンプレと言うには、あまりにもあまりな展開だった。
不慮の事故死によって神が不手際を無かった事にする為に、転生をさせてくれるという。
無宗教で敬虔な信者でも無い自分に、そんなサプライズが有る訳が無いだろうと思う、普通なら。
しかし現実に目の前で起こっている事は……
「状況説明乙!
で、そろそろ現実を受け入れてこちらの提案を真剣に考えてくれないかな?」
なんて話しかける、いや直接頭に響くように聞こえる声の主の、のんびりした口調に現実に戻された。
「いや、受け入れるもなにも神などいない。
この頭に響く声は事故のショックで幻聴が聞こえるだけだー」
こんな重力を感じない自分の体も見えない真っ白な空間で、テレパシーみたいな会話をしてるだけでも、もう俺の体も長くないのだろう。
最後の記憶は建設現場の足場から足を滑らせ、地面に落下する直前の映像。
6階の高さから下の駐車場に頭から落ちたのだ。
妄想や願望が走馬灯の如く巡っているのだろう。
短い一生だったな。
脱童貞も出来なかったし。
いや、童貞30年越えの魔法使いに成らなかっただけ良かったのかな。
「あー自己完結して成仏させる訳にも行かないから、信じないなら強制的に適当な条件で転生させるよ?」
おいおい現実逃避もさせてくれないのか。
「ちょっと待てや!
どんな世界に飛ばすつもりなんだ?」
「全然こちらの話を聞いてくれないなら、今までいた世界に近い所で中産階級の長男として能力・容姿は十人並みで記憶を無くしての転生かな」
今の人格を形成している経験や記憶が全く無いなんて、俺が俺でなくなってしまうんじゃないのか?
「それはそれで平凡な幸せかも知れないが、今の自分を形成してる記憶が無いなら別人じゃないのかな?」
「やっと返事をしてくれたと思えば駄目出しかい?」
これは放っておくと本当に適当な対応をされかねないから、この状況を受け入れる事にする。
「この読み漁った転生SSのような展開が、自分の身に起こっているのは死に掛け傷ついた脳が見せる刹那の幻想なのか。
又は集中治療室で植物人間の様になっている自分が見ている夢かは知らないが、その提案を受けさせて頂きます」
「うん。
じゃあ詳細を詰めようか。
希望の世界に送る事も出来るが、特殊な力が欲しいならその世界に沿った力の素養を与えよう。
複数可だが取得する努力も其れなりに増えるよ」
「但し、容姿に関しては両親の良い所取りの遺伝子を調整するから、金髪碧眼とかオッドアイとか希望するなら、そういう両親が居る家庭環境の子供になるよ。
遺伝子の合わない子供が生まれて、両親が離婚するとか捨て子になるとか考えられるからね」
んー結構現実的だな。
チート乙とか俺様無双とか難しそうだし、無茶すると直ぐに生死に係わる世界とか駄目だな。
「ねえ。
どんな漫画やアニメの世界でも可能なの?」
「可能だよ。
ただその世界の一部になるので、漫画とかで見えている部分だけでない裏設定の様な物もあるよ」
「例えば?」
「ゼロの使い魔に貴族として転生すれば、容姿は外人。
記憶を残すなら今覚えている言語以外知らないから言葉は最初から覚えなくてはならない。
それに……」
「それに?」
「貴族が平民の上に君臨する世界。
当然、平民は虐げられている。
君の新たな両親も当然その考えだよ」
「つまり転生先は非道い差別や貧困という現実が有る。
平和なこの時代の価値観や正義感は通じない。
君に耐えられるのかな?」
「つまり平成の世とのギャップに良心が耐えられるのかって事か……
でもなんで、第一候補がゼロ魔だと分かった?」
「これでも神の一柱だよ。
君の意識下の考えだって分かるさ」
「神は絶対で間違いはしない。
誤って死んだ者の魂を受け入れる場所は無いんだ。
この転生話も、そんな傲慢な考えに基づいた救済措置さ」
「信者でも無い自分に対してなら慈悲深いんだろうな」
「消滅させて無かった事にするのは忍びない。
そういう訳だから拒否権は無いから、サクサク決めてくれ」
少しは慈悲深い?
有り難くない、ぶっちゃけ話を聞かせてくれた。
「でも何で、姿が見えないのかな?
この真っ白な空間に独り言を呟く自分って恥ずかしいんだけど」
「偶像崇拝が禁止なのでね」
「はぁ。
深くは聞きません。
やはり世界はゼロの使い魔でお願いします」
「条件はどうする?」
原作に介入する・しないどちらもメリット・デメリットが有るけど、原作の動きを把握した方が動きやすいだろう。
少し引いた位置から原作組を見つめ必要ならば接触する。
「では原作組と同じ年齢で国はゲルマニアの貴族が良いな。
出来れば伯爵家の長男を希望」
「それ位なら問題は無いな。
では中程度の領地を持つ伯爵家の長男にしよう。
その他の能力的な希望は有るかい?」
素質だけなら貰えるけどゼロ魔の世界観に添ってなら4系統スクエアや虚無とかは無いよな。
戦闘介入なら風か火
戦闘補助や治療なら水
領地経営なら土が便利かな。
「では土と水の系統で努力すればスクエアになれる素質有りでどうかな?」
「両方スクエアは無理だ。
どちらかはトライアングル止まりだな」
「では土をスクエアで」
「良かろう。
容姿はドイツ系金髪碧眼の十人が見て七人が美男子と思うようにしてあげよう。」
「下手すると二枚目半?了解。
あとは体を鍛えて貴族太りにならない様にするよ」
「後はサービスで今の記憶が戻るのを5歳の誕生日にしてあげよう。
幼児プレイや羞恥プレイは嫌だろ?
それに5歳までの記憶を引き継ぐから会話位なら出来る様になってるね。
文字は……
5歳児だし一から覚えるしかないけどね」
確かに……
そんなプレイに目覚めてしまったら……
マリコリヌ?の扱いになってしまう。
それと言葉が喋れるのは嬉しいよね。
正直英語も話せないレベルなのに、全く知らない言語を覚えるのはキツいし。
「助かる。それでお願いします」
「もう良いかい?」
「転生してしまったらもうヘルプは無いんですよね?」
「向こうの神はブリミルになるから管轄外だからね」
神様も縄張りとかあるんだ…
良く考えないとな。
最後のチャンスだし。
でも領地経営を目指すと決めたが、ガテン系アニオタの自分には役立つ知識が少ない、てかない!
「こちらの使える知識を向こうに持っていけないかな?」
「医療・建築・経営・農業・機械工学とかの専門知識かい?
君の記憶しか持って行けないから無理だね」
内政チートの夢も散ってしまった。
でも今ある朧げな現代知識でも、向こうの文化レベルからすれば十分チートかな。
「最後に一つ。
魔法世界なら他の漫画だけとこの〇〇〇〇○の才能は貰えないかな?」最後に駄目元でお願いしてみた。
「〇〇〇〇までは無理だけど可能だよ。
〇〇を特化すれば出来るようになるよ。
但し原作よりも効果は当然低い」
まぁ当たり前かな。
変に突き抜けると異端審問とかに引っ掛かりそうだし、あまり欲張っても努力前提だし、能力が開花する前に原作突入とか有り得そうで怖いし。
「もう無いです。
それではお願いします」
「ではセカンドライフを楽しんでくれたまえ」
どんな神様から最後まで分からなかったが、その神様の気楽な言葉を最後に意識が薄れていった。
流行の転生SSの主人公になるのか。
それとも集中治療室で見る妄想という夢なのか、僕のセカンドライフが始まった。
何話か書き貯めてますのでチェック次第投稿していきます。