第90話
風の変態紳士兄弟現る!
おはよう諸君。
「男の浪漫本ファンクラブ・変態と言う名の紳士の集い」
上級カリスマ会員の……
ワルド&カステルモールだ!
ここでポージング!
そして効果音が、ドーン!
爆炎が上がり2人のマントがはためき、チラリと内側の模様が見える。
2人共、風を極めし変態紳士。
最近、トリステイン魔法学院のギトーなる者が、風は最強の変態紳士!
とか、騒いで我らに弟子入りをしてきた。
素養は有るが情熱の何割かが、風魔法に向いている為にイマイチだ。
精進せいや!
彼は巨乳派だが、我らは大いなる乳の元に集う仲間ゆえ、弟子入りを許可した。
昔なら、異教徒呼ばわりしたのだが……
ツアイツ殿に感化、いや彼の思想に共鳴した為に、乳の大小については不問!
我らもひと皮剥けた変態紳士に進化したのだ!
さて我ら2人、ミス・タバサをガリアに送る為に現在同行中だ!
どちらの相棒に乗せるかで、熾烈な争いをしたがタバサ殿が風竜に興味が有ると言う事で、我が相棒ブリュンヒルデに乗る事になった。
しかし、余りのワルド殿の落ち込みように帰りはグリフォンに乗る事で解決。
そろそろ、プチトロアに到着の予定だ。
今回のド・モンモランシ領復興の手伝いの報酬として、新作男の浪漫本(フィギュア付)を貰った我ら……
第1弾で有り、一般にはまだ普及してないブツだ。
しかも、ツアイツ殿の計らいで我らグリフォン隊員及び竜騎士団員には、初級会員の権利を得ている。
このカタログを見せて、特典のマントを選ばせるのだが……
エラい事になるだろう。
イザベラ様にとっては!
このカタログには、ツンデレプリンセスとして表記しているが……
どう見てもイザベラ様だ!
彼女の意趣返しで、ツアイツ殿に送り込んだ竜騎士団員達は……
更なる進化を遂げて帰ってきた!
そう、名もないモブの隊員でもあの台詞が言える位に……
「ふははははー!
プチトロアよ、私は帰ってきたー!」
お留守番の隊員達にもみくちゃにされながら、カタログを渡し今迄の事を報告する彼らは……
まるで、凱旋してきた英雄の様だ。
「タバサ殿、ワルド殿。
イザベラ様に報告に行きましょう」
カステルモールの呼び掛けにより、竜騎士団員達を生暖かい目で見ていたタバサと、暖かい目で見ていたワルド殿が動き出す。
「そうですな。
私が会うのは問題が有るが……
例の件の許可を貰わねばならないからな」
チラリと意味有り気に、カステルモールを見る。
彼も黙って頷く。
何かを企んでいるみたいだ。
「…………?」
「何でも有りませんよ。
タバサ殿、急ぎましょう。
イザベラ様がお待ちです」
阿吽の呼吸で、タバサの疑問をかわす2人。
頭の中はエターナルロリータで一杯だ!
しかし、顔には出さずにタバサ殿を中心に左右に分かれて歩いていく。
まるで、タバサ殿が2人を従えている様にも見える。
コンコン!
「イザベラ様。
カステルモール隊長及び北花壇騎士団7号殿。
それに、トリステイン王国魔法衛士隊隊長ワルド子爵がおいでです」
「中に入れな!」
ぞんざいな口調で返事が有り、豪華な執務室の扉が開いた……
三人は中に入る。
SIDEイザベラ
執務室に入ってきた面々を見て少し驚いた!
「これはこれは……
今をときめくアンリエッタ姫一番のお気に入り。
ワルド隊長では有りませんか!
ガリアへようこそ。
ロリコンのドーテー!」
エラい表現が来た。
「お初にお目に掛かります。
トリステイン王国魔法衛士隊隊長ワルドです。
ツアイツ殿から聞いた通り砕けた御方ですな」
しかし、この変態は気にも止めてない様子……
「エレーヌに手を出した怖い物知らずの隊長さん。
私に何か用かい?」
更に、棘を含んだ言葉を投げかけるが
「実は、カステルモール殿より応援の依頼を受けましてな。
共に国は違えど理想は同じ!
ならば、お手伝いをと思いまして……
一応許可を頂きたいのです」
全く堪えた様子は無い。
イザベラは、考え込んだが……
「ド・モンモランシ領復興も手伝ったのに、今度はウチかい?
ツアイツ絡みはお人好しが多いねぇ……
良いだろう。
問題をおこすなよ。
く・れ・ぐ・れ・も、だぞ!」
「「ははっ!
有り難き幸せ」」
頭を垂れながらニヤリと笑う2人……
この時私は気が付かなかった。
普段からそう言う態度なら良いのに、と思って……
何だかんだと、この2人を甘く見ていた。
このとんでもない変態達を……
「それで、報告は?
エレーヌどうだったんだい。
アイツのド・モンモランシ領の復興は?」
タバサは、考え込みながらポツポツと喋る。
「……復興は成功。
水の精霊の件、彼は既に原因まで突き止めていた。
水の精霊は、彼に力を貸すとまで言ったが……
ミス・モンモランシーに譲った。
彼女が交渉役だと認めさせ水の指輪を貰った。
序でに、干拓の助力まで約束させた」
驚いた!
何だって?
水の精霊相手に、そこ迄の援助を引き出すなんて……
どれだけの対価を払ったのか?
「それは、あの縦ロールも感謝感激したんだろうね?
何たって家の悲願の全てを叶えて貰った訳だ!
一体どれだけの対価を提示したんだい?」
「……何も渡してない。
ただ無くした物を取り返す約束をしただけ」
思わず黙り込んでしまった……
何だって?
そんな口約束で、そんな条件で、先に働かせるなんて?
嘘だろ……
相手は精霊なんだよ!
「おい!
エレーヌの言ってる事……
本当なのかい?」
ワルドとカステルモールに問う。
2人は頷く。
「そうです。
水の精霊の秘宝の情報をいち早く掴み、そしてそれを取り戻すと約束した事で信頼を得たのです。
己の命を賭けて……」
「指輪はレコンキスタの首魁、オリヴァー・クロムウェルが持ってます。
彼に勝てば指輪はお返しし、負ければ自身が死ぬ……
条件はそれだけです」
なっ何だって……
己の命を賭けて、恋人の為に動く。
しかも、悲願の実家の復興……
失っていた交渉役を取り戻し、家宝となる水の指輪を貰い干拓の助力まで漕ぎ着けた、か。
これは、ド・モンモランシ伯爵も落ちたね。
でも、水の精霊の加護まで譲るとは何て気前が良いんだろうね。
水さえ引けば、ハーナウ家の財力なら復興は簡単だ。
逆に財力では叶わないのが、水の精霊の加護のはず……
「ツアイツ殿は、水の精霊に個別認識されましたな」
「そうそう!
我らは全て、単なる者扱いでしたが」
「「流石としか言えませんな」」
個別認識?
水の精霊が気に入った?
んー何とも不思議な男だねぇ……
「……イザベラ。
これが最新版の男の浪漫本とオマケとカタログ」
エレーヌから渡された、彼の著書は全て集めろとお父様からも言われているアレ……
オマケ?
うわっ!
精巧な人形だね……
こりゃ欲しがるアホが多いよ。
カタログ?
ペラペラと捲る……
ふーん。
会員になるとランクに応じてマントが貰えて、この人形も買えるのかい。
マントのページで捲っていた手が止まる。
ツンデレプリンセス……
なっなっなっ何だいこりゃ?
どー見ても私じゃないか!
はっと三人を見る。
エレーヌ……
目を逸らしたね。
「ばかー!
こんな物が広まったら、お嫁に行けないわー!
責任者を呼べー」
ツアイツのガリア訪問は、この夏かも知れない。