第91話
ド・モンモランシ領を出発しレンタルグリフォンにて、ヴァリエール領へと向かっています。
おはようございます。
ツアイツです。
今、ガリア方面から美少女の雄叫びが聞こえた様な……
気のせいかな?
ド・モンモランシ領復興に目処がたち、これよりカリーヌ様から、直々の手紙で招待されたヴァリエール領に向かっています。
送迎用員のグリフォン隊と竜騎士団員達は、休暇が終わるので、各々帰りました。
両隊長は、ミス・タバサを送るとガリアへ!
とっとと送り狼となり、逆襲されてしまえ!
レンタルグリフォン……
実家に帰る時に使いましたが、最近シェフィールドさんと二人乗りが当たり前になってる様な気がします。
そして、何時も僕が前で後ろから抱き締める様にシェフィールドさんが手綱を握る……
男としては、どうなのかな?
お姉ちゃんの過保護にも、加速がかってきたし。
はっ!
まさか、ジョゼフ王の使い魔だけに虚無魔法の加速に掛けてるのか?
などと、アホな事を考えて高所恐怖症を押さえていたら……
ヴァリエール公爵邸が見えてきました。
前回は、シェフィールドさんと2人きりの訪問だったが、今回はキュルケとソフィアが増えている。
特にカリーヌ様を怒らせる事はしてないから、平気だと思うけど……
手紙の件が気になります。
先に僕達が降りてから、竜籠が到着した。
今回も何処で察知したか分からないけど、ヴァリエール公爵とカリーヌ様。
えーと、エレオノール様にカトレア様迄……
ヴァリエール一家総出でお出迎えです。
ルイズが
「ちい姉さまー!
お久しぶりです!」
と、抱き付きに走って行ったが……
エレオノール様が、インターセプトして両手でホッペタを引っ張っている。
僕は、背中が何故かチリチリする感覚を抑えてヴァリエール夫妻の前に行く。
何だろう?
この危険信号は……
「お久しぶりです。
ヴァリエール公爵、カリーヌ様。
それとカトレア様も……」
「おじ様、おば様。
お久しぶりです」
キュルケも優雅に挨拶をする。
ヴァリエール夫妻は上機嫌だ。
「良く来たな2人共。
歓迎しよう!
立ち話も何だ。
まぁ入りたまえ」
「そうですよ。
それとお義母様で良いですよ。
ド・モンモランシ伯爵も貴方を正式に婚約者と発表しました。
なれば、我が家も遠慮する必要性も無いのです」
ヴァリエール夫妻に両脇を固められ、屋敷に入る。
意味も無く逃げ出したくなるのだが……
少し拗ね気味のキュルケも後に続く。
「シェフィールド様には別室をご用意致しました。
其方でお寛ぎ下さい」
と、丁寧にカトレア様自らが案内を申し出た……
シェフィールドさんは目線で僕に伺いをたてるが
僕は頷いて了承する。
「ツアイツ様、札はお持ちですね?」
と、結構前に貰った、三点セットの有無を確認しカトレア様の後に付いて行く。
「「さぁさぁ此方へ」」
ヴァリエール夫妻に連行される様に応接室に入る。
シェフィールドさん平気かな?
カトレア様もヤンデレ素質が有りそうだし、まさか私室の動物達を紹介しなければ良いけど……
不安一杯でソファーに座る。
何時の間にか、両脇にルイズとキュルケが自然な感じで座っている。
「さて、先ずはド・モンモランシ領の件を教えてくれるか?」
僕は一連の話をする。
ラグドリアン湖の水の精霊との交渉は成功。
新しい交渉役にモンモランシーがなり、水の指輪を貰えた。
干拓事業の協力も請け負ってくれたので心配は無い事を……
それと、ド・モンモランシ伯爵から宜しく言ってくれと伝言された事を。
「流石は私達の義理の息子です。
考えられる内では、最高の結果ですね」
カリーヌ様のべた褒めは、嬉しいのだが……
何時も、良くないオマケが付くんだよな。
「これで、グラモンのエロ呆けの攻略も目処がたったな」
「その……
お三方は、交流が有ったのですか?」
ヴァリエール公爵は笑いながら
「昔の話だ。
1人では説得出来なかったが、アヤツも一緒なら話を聞くだろう……」
「大変でしたね。
暫くは我が家と思い寛ぎなさい。
明日にでも手ほどきをしてあげます。
これからの事も考えて、鍛え直してあげますから!」
凄い笑顔だ!
昔の特訓と言う名のシゴキを思い出した……
キュルケとルイズが僕の手に抱き付きながら
「「なら私達が、手当てをしてあげるわ」」
と綺麗な笑顔でニッコリと言ってくれた。
「ありがとう。
カリーヌ様も程ほどにお願いします」
そして、そっと2人を引き離す。
「時にツアイツ殿?
最近、アンリエッタ姫から貴方の事を良く聞きます。
随分と信頼関係を築いたのですね?」
嗚呼……
アンリエッタ姫には苦労しか貰ってないな。
「少し不味いと思うのですが……
何とかなりませんか?」
カリーヌ様に一縷の望みを掛ける。
「無理ですね。
でも、利用し易くなるから良いでしょう。
それにアンリエッタ姫には……
これからの計画の為にも、立場を強くして貰わねば駄目でしょう?」
「はぁ……」
「今日はゆっくり休むと良い。
ルイズ、久々にミス・キュルケと共にツアイツ殿に甘えて来なさい。
それと折角、ミス・キュルケと一緒なのだ。
久しぶりに、水の人形劇を見せて欲しい」
そう言って、僕とルイズとキュルケを応接室から押し出した。
SIDEヴァリエール夫妻&エレオノール
三人を追い出した後、何やら難しい顔をして話だした……
ヴァリエール公爵が、話を切り出した。
「ツアイツ殿の作戦は順調だな。
これでグラモンも取り込めて、宮廷での発言も強くなるだろう」
「あなた!
この調子なら、アンリエッタ姫のツアイツ殿に対する依存度は……
高まるばかりですわね。
防国の聖女、国力の落ちたアルビオンに嫁ぐ、か。
両国の膿みを出し切った後なら、トリステイン軍を率いてきたアンリエッタ姫の発言力は馬鹿にならないわ。
私も現役時代の烈風のカリンとして参戦しますから」
カリーヌは極悪人の笑みだ!
「ツアイツ殿は、影から操り自分は一切表舞台に顔を出さずに、全てを終わらせるつもりだろう。
しかし、混乱後の疲弊した2つの国をあの母娘が治められる訳がないのだ……
正直言って力不足。
トリステインの為に、もう一手欲しい」
ヴァリエール公爵は、何かを悩んでいる様に両手を握り締めている。
「ツアイツ殿には、正当な評価と報酬を受ける権利が有るわ。
他国の貴族、始祖の血を引かぬ蛮族と見下したヤツらに甘い汁を吸わせる必要は無いわね。
でも、彼が嫌がる事をするのは私も嫌よ」
どこまでも、ツアイツに甘いエレオノール。
「ですが、このままアンリエッタ姫が聖女となり、アルビオンに嫁いだ後のトリステインは……
マリアンヌ王妃では上手く治められず、また逆戻りよ。
この国には、強力なカリスマが必要なのよ。
ツアイツ殿には本当に悪いのですが、ね」
「なれば……誰っ?」
突然カリーヌが杖を抜いた!
その瞬間に、暗闇から滲み出るように……
黒衣の魔女が転移していた。
「面白そうなお話をしてるのね。
私にも聞かせてくれないかしら?」
壮絶な笑みを浮かべたシェフィールドが話し掛ける。