第122話
幸せワルド計画……
この難問に立ち向かうのは、本体ワルド+遍在殿+ロングビルさん。
そして見守る、僕とテファ……
しかし、テファの提案は不可能になった。
あれから、暫くして閣下から至急の鷹便が来た。
内容は、レコンキスタ討伐に関して……
アルビオンのウェールズ皇太子が向かっているので、可能な限り協力する事。
閣下からの直筆の親書だ……
んージェームズ一世ってもっと石頭じゃなかったかな?
アルブレヒト閣下に、こんな柔軟な対応を仕掛けてこれる行動力が有ったなんて……
ちょっと驚いた!
そして、親書の到着から暫くして、アルビオン国旗を靡かせた軍船がハーナウ領に入り、先ふれの竜騎士が到着した!
「ツアイツ・フォン・ハーナウ殿、近くまでアルビオン王国ウェールズ皇太子が来られています。
会見を求めているが、宜しいか?」
素早い行動だ!
きっと近くまで来て待機していたのだろう。
この世界のアルビオン王国は有能なのかも知れない。
「我が閣下からも連絡を頂いています。
会見、受け賜りました」
型に嵌った挨拶の後に、竜騎士殿はにこやかに握手を求めてきた。
「ツアイツ先生にお会い出来るとは光栄です。
出来ればこちらの著書にサインを頂きたいのですが……」
男の浪漫本「おっぱいジョッキー」を差し出す。
流石はウェールズ皇太子の直属!
彼は巨乳派なのか……
サラサラと園遊会以来、慣れてしまったサインとイラストを書く。
「有難う御座います。
アルビオンで最初に直筆サインを貰えました!」
あれ?
園遊会では、ガリアとクルデンホルフ関係者だけだったかな?
暫くして、イーグル号?らしい船が見えたが残念ながらウチには空中船を繋留する場所も適当な湖も無いので、ウェールズ皇太子御一行は竜籠にて降りてきた……
物凄い笑顔でイケメンが近付いてくる。
「ツアイツ殿、今回は無理を言って申し訳ない。
かなり複雑な問題が発生して、至急相談をしたいんだ!」
フレンドリーに接してきますね……
「いえ、こちらこそご足労願いまして申し訳ないです。
急な連絡故、満足なお持て成しも出来ないとは思いますが、どうぞ此方へ……
お付きの方々もいらして下さい」
先ずは応接室に案内する。
「では失礼する」
妙に丁寧な態度だ……
レコンキスタに対して、僕が関係する程の事態にはなってないよね。
まだ戦力は拮抗してるし、報告ではジェームズ一世が最前線にて指揮を執っている。
兵の士気も高いだろう。
応接室に通して、最上級の紅茶でもてなす。
両親の紹介&挨拶と礼儀的な行事を一式こなしてから本題に入る。
両親は席を外して貰った。
此には驚いたが、ウェールズ皇太子が頭を下げて頼んだのだ!
他国とは言え王族……
此処までされては、否とは言えず両親は席を外してくれた。
「ウェールズ様。
お国が大変な事になっていますが、それに関係した事でしょうか?」
優雅に紅茶を飲む彼に質問してみる。
「多分知っていると思うが、順序だてて話そう。
レコンキスタ……
元ブリミル司教オリヴァー・クロムウェルを首魁とした軍事クーデターだ。
お恥ずかしいが、既に北方とロサイスは墜ちた。
今はダータルネスを防衛線として小競り合いの最中だね」
今、大事な事をサラッと言ったよね?
「元と言われましたが……オリヴァー・クロムウェルはブリミル教より破門されたと思って宜しいのですか?」
ウェールズ皇太子は、ニヤリとして
「ロマリアのヴットーリオ殿とは話をつけた。
彼は異端として扱われる」
優秀だし、行動も早いな。
これは介入しなくても、大丈夫かな?
「それは……
問題は解決したも同然ですよね。
何故、私に相談など?」
ウェールズ皇太子は目を瞑って黙ったままだ……
「オリヴァー・クロムウェルは美乳派閥として我らを取り込もうとした。
しかし男の浪漫本による、乳を争いに使うな!
大いなる乳の下へ集え。
この思想に影響を受け、殆ど裏切り者は出なかった。
これは凄い事だよ!
オリヴァー・クロムウェルも焦っただろうね。
誰も彼の言う事を聞かなかった。
ヤツの周りには金目当ての連中と傭兵ばかりだ。
しかし傭兵は戦闘のプロ、油断は出来ない。
しかも二万に届く数を用意してきた」
原作は七万だったけど、今回は二万か……
これなら、アンリエッタ姫が率いるトリステインは五千位か?
で、勝てるな。
「二万ですか……
しかし烏合の衆が幾ら集まっても正規軍なら」
「その正規軍だが……
この度の戦争が、美乳派絡み……
つまり、乳を争いに用いてしまったと動揺しているんだ。
この通りだ!
ツアイツ殿の志を曲げてもレコンキスタはオッパイ戦争では無いと言っていただきたい……」
言うやいなやウェールズ皇太子が土下座した!
「ちょ、何をしているのですか?
部下の方々も見てい……」
応接室に入っていた護衛の2人も見事な土下座をしている。
この居たたまれない気持ちを何と表現したら良いのだろうか……
「頭を上げて下さい。
王族たる者、軽々しく頭を下げてはいけません」
「私の謝罪一つで、ツアイツ殿の信念を曲げさせる事は出来ないかもしれない。
しかし、国の為、国民の為に何卒お願いしたい」
ウェールズ皇太子の覚悟……
原作では、誇り高く死ぬ事に酔っていた感じがしたのに。
此処までされては、何も言えないか……
「頭を上げて下さい。
ウェールズ様の覚悟は分かりました。
微力ながら、全面協力させて頂きます。
お付きの方々も……」
しかし、ハルケギニアに土下座文化が有ったのか?
「有難う。
ツアイツ殿……
これで、レコンキスタなど粉砕してみせます!」
しかし、僕の広めたオッパイが予想を超えた影響力を持ってしまった。
「ウェールズ様、それでは詳細をもう一度教えて下さい。
王党派は、常備軍が居る筈です。
彼らはどうなのですか?」
「竜騎士団は風竜・火竜合わせて百人は居る。
歩兵隊は王都及び周辺警護で三千人だ。
彼らの忠誠は確かだが、全てを戦いに投じられない……
問題は諸侯軍なんだ。
参戦すれども士気が低い」
王族直轄部隊は思想も忠誠心で抑え付けられるが、諸侯軍……
つまりロングビルさんがレコンキスタの取込工作を邪魔した連中の事か。
すると原因は、どうみても僕だね……
「実は昨日、レコンキスタから刺客が来まして撃退したばかりなのです」
当初の計画をそのまま進める事は不可能となった。
ならば、修正するのみ!
ツアイツの謀は覚醒したウェールズに通用するのか?