第121話
レコンキスタ本部
盟主となったオリヴァー・クロムウェルは、集まった自称将軍達と今後の作戦について話し合っていた。
作戦と言っても、ひたすら王都を目指すしかないのだが……
「それで……
兵の様子と補給はどうなのか?」
「はっ!
兵達は休息を終え準備万端であります。
補給も周辺の集落からかき集めた物で倉庫は溢れておりますれば……」
「順調だな。
我が神の軍団は!」
「少し気になる事が……」
末席に座る男が、おずおずと発言してきた。
彼は物資調達係として、実際に周辺集落に赴いた男だ。
「なんだ?」
平民からの略奪時には強気の癖に、この集まりには何時もおどおどしている……
使えない男よ!
「それが、廻った村々に平民が居ないのです。
どうも周辺の領主が保護をしてるらしく……
今までにない対応です。
運びきれない物資は置いてあるので問題は無いのですが……」
「問題無いなら、それで良いではないか!
いらん報告だぞ」
周りの自称将軍達からも責められている。
大方、女性を攫おうとして居なかったのが気に食わないんだろう……
「皆の者、落ち着きたまえ!
我が神の軍団は、次の行動に移る。
ダータルネスを攻略するぞ!
準備にかかれ」
私の号令により、皆が散っていく。
周辺の集落に人が居ないのは、情報は早く回っているんだろう……
しかし、問題は無い!
ダータルネスを落としたら次はサウスゴータだ。
ふふふっ!
もう直ぐアルビオン全土は我が手の内に……
「あーっはっはっはー!
男の娘などと、ほざく狂った教皇め。
正しき道を叩き込んでやるわー!
私が、私こそが教皇に相応しいのだー!」
SIDE名も無きモブ平民の方々……
またブリミル教の神官さまと貴族さまの無理強いが始まった。
ただ、今回は
「男の浪漫本何たらの集い」
の方々が、色々と便宜をはかってくれている……
今までに無い事だ!
貴族さまが、我々平民を助けてくれるなんて。
何でも、大いなる何とかの下に集まれ!
とか、素晴らしい教えを守るために、全ての女性に優しくなければ、会員剥奪だか何とか……
こんな素晴らしい教義を考えたのは、ゲルマニアのツアイツさまって言う偉い人だそうだ。
今まで酷い事をしてきた貴族さまを改心させるなんて、何て凄いお方だ!
今日だって、教えを守る為に私達を領主さまが匿ってくれた。
有難や有難や……
ツアイツの勧めるオッパイ教義は、全ての女性が対象だ。
故に信者は貴族・平民を問わず、程度はマチマチだが救いの手を差し伸べる事になる。
特にトリステインのモット伯など、別人の様に平民の女性に優しくなった。
勿論、全ての貴族がではない。
しかし、今までに10の理不尽が8の理不尽と2の優しさになれば……
その変化は大きい。
ツアイツは裕福層しかオッパイ教義を普及出来ないと思っていたが、思わぬ効果を平民に対してあげていた。
彼らは、己が上級会員を目指す為に必然的に平民の女性にも優しく対応する。
けして善意からでは無いが、平民達にはツアイツはブリミル教よりも、確実に幸せを与えてくれくれる教祖になっていった!
その頃のオッパイ教祖様……
書斎にて、本体ワルド及びワルドA。
そしてテファとロングビルを交えたワルド改造計画を実行していた。
「ワルドさま、それでは女性は引いてしまいます。
そこの対応は……」
「アンタ、本当にマダオだね!
ヤレヤレだよ」
テファとロングビルのダメ出しの後に、自分の偏在から肩をポンポンと叩かれる本体ワルド殿……
「くっ……
何故だ!
何故私の選んだ選択肢は駄目なのだ!」
酷い落ち込み様だ。
「ワルド殿……
ミス・ジョゼットは生まれて直ぐに孤児院に預けられたのです。
周りは断崖絶壁の海の孤島……
そんな彼女の心を開くのは、何ですか?」
「はい、ツアイツ先生!
サクッと攫って、自宅に連れて帰ります。
それから色々話をs」
何を自信あり気に、攫ってとか言うかな!
「ブー!
それでは、ただの人攫いです。
正解は、自然に出会いを演出するのです!
出来れば、ミス・ジョゼットが助けるシュチュが理想的ですね」
ベタな出会いを演出させる……
この手の頑固な女性は、自分が感じた事を優先する。
だから、自分が助けた相手には強い思いを残す。
「一番大切なのは、出会いのインパクトです!
そして次はお礼として再度訪ねて、外の世界の話をするのです!
二度目は自分から訪ねて改めてお礼をする。
彼女の外へ出る渇望を煽り、ならば私がお礼にと誘う……」
パチパチパチとテファとロングビルさんが拍手をする。
「それなら、ジョゼットさんも気を許すと思います!」
「ツアイツのタラシ振りが分かるね。
悪くないアプローチだよ!」
女性陣は気に入ってくれたみたいだ。
ベタベタなベタだけど……
「なるほど、良くは分かりませんが、言う通りにすれば上手く行く事は理解しました。
それで、決行は何時?」
そのアンリエッタ姫みたいな理解力はやめて下さい。
そう言えば、アンリエッタ姫を放置してるけど平気かな?
まさか一週間程度で問題を起こさないよね……
「作戦は来週にでも決行しましょう。
僕も偏在殿も同行し、陰ながらフォローします。
てか、フォローしないと成功する気がしないから……」
「「…………」」
「ツアイツは行っちゃ駄目だよ。
私が、替わりに同行するよ。
大丈夫だよ、その偏在とは暫くコンビを組んでたし安心しとくれ」
ロングビルさんが、胸を叩いて同行を申し出てくれた。
「しかし……
もはや普通の手段では」
それでも不安が残る。
ロングビルさんに恋愛問題を解決出来るのか?
失礼な思いがよぎる……
「ツアイツが行くと、ジョゼットを口説き落としてしまいそうだからね。
任せな!
お姉ちゃんにさ」
バンバンと肩を叩かれた!
別にミス・ジョゼットは好みではないから安心して欲しいんだけどな……
「ほら支度しな!
来週とかじゃなくて、とっとと行くよ」
本体の首根っこを掴んでズルズルと引っ張って行く!
そして、ぺこりと頭を下げて付いて行く遍在殿。
物凄く不安だ……
ジョゼットは原作でも重要な役割を担っていた。
しかし、ロングビルさんを止めるのは不可能か……
テファを見れば、目を輝かせて僕を見ている。
何だろう?
「心配なら、私達も後をつけませんか?」
と、とんでもない提案をしてきたー!