挿話25話・元気なお爺ちゃん生涯現役じゃ!
ここは、トリステイン王国の最高学府、魔法学院の筈だ。
なのに何故、東方の内装仕様の和室が学院長の部屋に設えてあるのだ?
しかも本棚には、私が買えずに悩んでいた本が雑然と並んでいるし……
全て売り払えば、末端価格でトリステイン郊外に屋敷が買える金額だ。
これは、公然とした賄賂じゃないのか?
本人は、生徒の手作り本だと言っているが……
何故、この学院のTOPと王宮勅使の会話が私の脳の処理速度を超えているのだ?
そもそも、この2人仕事の話をしていないのでは……
コルベールの毛髪は微風(そよかぜ)にも耐えられない程、毛根にダメージを与えられた。
ハラハラと数本が床に落ちる。
私が、妻を貰う前に髪の毛が生き残っているか?
コルベールは真剣に、親戚筋か知り合いに見合いのセッティングを頼もうと考えた。
出来れば、ミス・ロングビルの様な知的美人が良い。
オッパイが大きければ最高だが、高望みはしまいと思う。
チッパイだって、こんな研究馬鹿に嫁いでくれるなら喜んで貰おう。
「いやしかし、尻は心のオアシスじゃから」
何か変な声が聞こえたが、もう此処に居る必要を微塵も感じないコルベールは学院長室を出た。
これから、親戚に手紙を送る為に……
僅かに残った頭髪で、ブリミルっぽい電波を受信した!
アイツに頼むのが最短距離だと……
しかし、何故だろう?
彼には二つの意味で貸しが出来ている気がする。
※原作ではキュルケをゲット出来たし、彼女の実家のバックアップでオストラント号も作れたからだろう。
しかし脱毛と引き換えに得たカンが、彼に係ると匂いフェチを押し付けられそうなビジョンを思い浮かばせた。
「私は普通が良いのです……
なかった事にして下さい」
敬虔なブリミル教徒の彼が、ブリミル様を否定した!
元白炎×炎蛇!
ラウラさんとのフラグは立たなかった。
この後、暫くして親戚からの見合いに全滅した彼は……
数年後に教え子に手を出す事になる。
この淫行教師め!
それは別のお話で……
話をオールド・オスマンとモット伯に戻す。
「黙りなさい!
大体何ですか?
上級会員たる私でさえ、中々ツアイツ殿と話が出来ないのに。
この学院で3ヶ月近くも一緒に居て、彼の漢道に影響を受けないなんて……
アンタ少しオカシイんじゃないのか?」
さらっとセクハラ好き発言にイラッときたのか、モット伯が吼える。
「お前、自分が親子程の年の離れたツバサっ娘とラブラブだからって言い過ぎじゃ!」
「ああ……私のマイエンジェル!
ツアイツ殿と知り合えて、まさかこの歳で恋愛経験をさせてもらえるとは……
天にも昇る気持ちだ」
しかし惚気で返された!
「そもそも何故、波濤のエムさんは……
あのロリ巨乳のツバサっ娘を口説けたのじゃ?」
急に真面目な顔をするオールド・オスマン。
「ふっ……私と彼女との出会いは、そう!
彼女の一族がトリステインの在る村からの依頼で、森の伐採の件で揉めていると訴えがあった。
たまたま知った私が、勅使として……
別に人間以外と交渉してはいけないと、決まりも無いので赴いたのだ」
まさか、モット伯が亜人との交渉に自ら出向くなど!
「お主、かわったな。
昔なら考えられないぞ、貴族以外の連中の為に働くなど」ふっ、と男臭い笑みを浮かべる。
「全ての女性に貴賎はないのです、生涯現役さん。
貴殿の悪い所、それは自分だけが楽しめば良いと思っている事ですぞ。
女性にも喜びを与えなければ、漢では無いのです。
そもそも尻を触るなど、その前に踏まねばならぬステップが幾つかあるでしょう?」
SIDEオールド・オスマン
こやつ、本当に変わったのう……
昔の面影が全く無い、訳でもないか。
相変わらずロリコンだし、ツバサッ娘はロリ巨乳だし……
ワシ、なんでこんなリア充に説教喰らってるの?
「聞いていますか?
貴殿に足りないもの……
それは相手を敬う事と思いやりの心。
欲望丸出しだから、相手に不快感を与えるのですぞ!」
「女体への飽くなき渇望が有るから長生き出来るんじゃ!
欲望なくして、何が人生楽しいんじゃ?」
全く、ワシが長生き出来るのも内なる煩悩を精神力に昇華しているから肉体が活性化しておるのじゃ!
尻を撫でられぬ位なら、潔く性犯罪者になるわ。
こやつ、溜め息をつきよったぞ……
「嫌がる女性を撫でて憎しみの篭った目で見られるのと、撫でられて恥かしがるが照れながら怒るのと、どちらが良いので?」
「むう?それは……
いやーん、マイッ○ング!の方が百倍ええのう……」
ワシが撫で捲くると、黄色い歓声があがる訳じゃな?
「それは素晴らしいのう……
しかし、そんな状況が作り出せるのか?
ワシ、エロを取ったら何も残らんのじゃが?」
何だ、今度は卓袱台に伏せおって……
「私の屋敷には、私が手を出しても構わないと言うメイドが何人かいますぞ。
先ずは女性の好感度を上げ捲ってから、自分がエロエロでしょうがない男なんだと告白するのです。
それでも愛してくれる女性なら、撫でても問題無いのです」
うーむ?
難しいのう……好感度か。
ミス・ロングビルは最初は尻を撫でても怒らなかったんじゃが、何が悪かったのか?
「分かった!
好感度を上げてからセクハラすれば、ええんじゃな?」
しかしセクハラにはトコトン拘る。
「好感度が上がったら、セクハラでなくスキンシップですぞ!
兎に角、女性に優しく!
これに尽きますぞ、良いですね?」
「モチのロンじゃ!
生まれ変わったワシのセクハラ人生はこれからじゃ!」
どうしてもセクハラは譲らないオールド・オスマンにモット伯はヤレヤレといった感じで苦笑いを浮かべた。
こうして少しだけオールド・オスマンのセクハラ被害が減った。
彼もまた教え子や学院の使用人の女性に優しくなった。
しかし下心が見え見えの為に、イマイチ成果は上がらなかったそうな。
「ワシからセクハラを取ったら、只のジジィじゃからな!
生涯セクハラは止めんよ!」
まだまだ先の長い、彼の辞世の句だった。