第14話
オールドオスマン?
駄目だこりゃ。
先生の前に立たされて叱られるなど、何時くらいからだろう?
この時期はまだロングビル(マチルダ?フーケ?)さんは秘書として働いてなく、モブな男性秘書がいました。
「君たちは伝統あるトリステイン魔法学院の入学日に何故、問題を起こしているのかね?」
「いや友人同士の魔法の研鑽だよね。
決闘なんてしてないですよ、なぁギーシュ?」
「大分差を付けられているけど訓練だよね。
決闘なんてしてないですよ。
なぁツアイツ?」
「「僕ら友達だし、そんな決闘なんてしないですよ」」
いけしゃしゃと、言ってみました。
頭を抱えるコルベール先生に、鼻毛を抜いて聞いているオールドオスマン。
こら!
鼻毛こちらに飛ばすな!
「それに怪我人も出ていないし、広場だって元通りじゃないですか」
「当人達もこんなに反省してますし、互いに研鑽する気持ちが溢れ出てしまっただけです」
更に弁解してみたけど駄目かな?
どうせ監視していただろうし、ならば奥の手をだすか。
「そうそう……
オールドオスマンに渡そうと思って、忘れてました。
私が書いた小説ですが」
そっとフルカラー18禁版「マイフェアレディ」
挿し絵&サイン入りを差し出す。
「こっこれはモット伯が自慢していた、最近人気のマイフェアレディ18禁バージョンではないか!
しかもフルカラー挿し絵にサイン入り!」
「先日書き上げたばかりの新作です。
良ければお納め下さい」
ニヤリとオールドオスマンの眼を見て言う。
「オオ…サイン入りとは。
これは宝物庫に収めないと。
いや今から熟読しなければ」
「あーコルベール君、二人とも反省しているのでもうしないと思うのじゃ。
教室に戻してあげたまえ」
「オールドオスマン、宜しいのですか?
てか色ボケジジイ!
ちゃんと指導しろや!」
なにか白熱した教育論を話し合っている二人をその場に残して、さっさと教室に戻る事にした。
「ツアイツがあの名作の作者なのかい?
実家でも父上が偉く感動して読んでいたよ。
なんでも男の浪漫だとか何とか」
「ギーシュだって可愛い女の子を自分好みに育ててみたいだろ?
そんな内容の小説さ」
「それは……
確かに男の夢と浪漫が詰まっているね。
今度貸してくれよ」
ギーシュも好きだねぇ。
「趣味で書いているから一般では中々手に入らないからね。
今度部屋に来なよ。
貸すから」
「それは楽しみだ」
「でも他の奴には言うなよ。
男も女も色んな意味で五月蝿そうだからさ……」
「そうだね……じゃ内緒にするよ」
教室に戻ると、担任であるコルベール先生が戻るまでは自習だ……
次の授業は、風馬鹿ギトー先生か。
大人しくしておこうかな。
イチャモン付けられそうな気がするんだけど。
見渡すとキュルケとルイズの間の席が不自然に空いていて、二人がニコニコ手招きしているのでそっとフライで席に着いた。
ギーシュはヴィリエとマリコルヌの間か……
男子には人気あるんだよな。
席に着くと早速キュルケが
「どうだった?
謹慎とか罰とか言われなかった?」
と心配そうに尋ねてきた。
「僕もギーシュもお咎め無し。
んで、彼とは友達になったから苛めないであげてね」
「えー半裸気障男イヤなんですけど」
ルイズ……ツン絶好調!
聞こえたギーシュが、落ち込んでるよ。
「コルベール先生戻ってこないのね?」
あれモンモン近くに居たんだ。
「オールドオスマンと教育方針についてディスカッションしてるから、授業は自習じゃないかな?」
僕がそう言うと
「じゃ少し時間有るのね。
ちょっと聞きたいんだけど、巷で噂の巨乳の担い手ってミスタツアイツなの?」
近くに座っている女の子達の耳が一瞬でダンボになる。
「計算された栄養と効率的な運動で女性らしい体型を得られる事について、研究した事は本当だよ。
でも誰にでも効果がある訳じゃ無かったんだ。
ヴァリエール公爵夫人とその長女エレオノール様には効かなくてね。
現在封印中……」
「じゃ教えて貰う事は出来ないの?」
モンモン必死で訴える。
トリステインであの二人を知らない者は居ないし、彼女らが駄目だといったら逆らえる人は居ないのかな?
でもこれをネタにすれば、ルイズをクラスに溶け込ませる事が出来て、少なくてもクラスで孤立する事ななくなるだろう。
「僕は口止めされたけど、ルイズはされてないから聞いてみれば?
ヴァリエール一族で効果が唯一有ったから」
「なっなによ?」
皆が一斉にルイズの胸を見て、納得してから殺到した。
「ミスルイズ!
是非お友達になりましょう」
「今晩お部屋にお邪魔して良いかしら?」
「そうですわ!
お茶会にご招待します。
是非来て下さいな」
失敗魔法の件で貴族の女の子とは余り友達が居なかったルイズは、当然のことにアワアワと僕を見たけど
「ルイズ、まだ毎日実践してるんだろ?
皆で一緒に仲良くやればいいだろ。
教えてあげなよ」
「きゃいきゃいと話が弾んでいるわね!
ルイズ嬉しそう」
キュルケが優しい目でルイズを見ながら、話しかけてきた。
「彼女には失敗魔法というハンデが有るから……
このトリステインでは蔑みの対象になっちゃうし。
これを切欠に……ね」
僕らは笑い合うと目聡く見つけたルイズが
「あー何か良い雰囲気ズルーイ」
と騒ぎ出した。
これで原作と違い、クラスで孤立しないで済めば良いんだけどね。
彼女と共に励んで巨乳になった娘達なら、彼女に恩義を感じ悪くは言わないだろう。
その辺の結束は凄いから、女の子ってさ。
そんな我々をじっと見詰めるチビッ子が一人……
SIDEタバサ
また貴族の馬鹿騒ぎかと正直面倒臭かったけど、片方が今年入学した中で唯一のスクエアと聞いて見に行った。
気障の方の金髪は雑魚だった……
ドットとしてはまぁまぁだけど、所詮ドットだし問題なく倒せる。
しかしゲルマニアの金髪は、正直ゴーレムの練成スピード・精度・操作技術・大きさ全てが凄かった。
完全鋼鉄製のゴーレムなどあの大きさでは有り得ない事、しかも武器を操っている。
単体で砦に突っ込んでも、砦が粉砕されるだろう。
接近戦闘能力は解らないけど、遠距離で攻められたら勝てない。
勝負はあっさりとついた。
いや勝負と言えない圧倒的な差があった。
でも怪我人が出ない様に手加減してた。
一度、戦ってみたい。
烈風のカリンの弟子ならば、戦って得る物もあるだろう。
※タバサは純粋に自身の戦闘力向上に興味が有り、巨乳の方には興味が無しです。
SIDEモンモン
モンモランシ家は伯爵家とは言え、事業で失敗し赤貧に喘いでいる。
私も少しでも家計に貢献しようと、香水作りや秘薬作りを頑張っているけど思わしくはない。
そんな中で、ヴァリエール公爵家が宿敵ゲルマニアのツェルプストー辺境伯と組んで次々と新規事業を成功させ更に羽振りがよくなっていると聞いた。
正直羨ましい。
聞けば、中心的な役割をしているのは同い年の少年らしく、烈風のカリンのお気に入りだとか。
あんな伝説の化け物に気に入られるなんでどんな筋肉馬鹿かと思えば、トリステインでは入手困難だけと貴族の見栄として何冊か購入した物語の作者だ。
一度だけ見せてもらった演劇も手掛けている、多彩な領地持ちの長男だとか。
これを狙わずに、極貧からの脱出は有り得ない。
今日始めて本人を見たが、美男子だったし魔法の腕は、なんと言うかミスタ・グラモンが可愛そうだった。
私なんかじゃ、あの高みには登れない。
でも色んな秘薬を改良して、安価で平民に渡しているって聞いたけど系統が違う?
恐る恐る本人に聞いたら、土がスクエアで水がトライアングルだなんて凄すぎ。
お話しても紳士だし優しいし、これは打算無く狙っても良い良物件だわ。
いやコレを狙わずに、誰を狙うのだ!
両脇のデッカイのとチッチャイの邪魔だけど頑張ろう。
ギーシュを彼氏に……
なんて電波が来たけど、それは有り得ないわね。
無理だわ無理無理。
SIDEコルベール
今年の新入生にはトライアングル2名・スクエア1名それとラインが何人か入学する情報を得ています。
15歳でスクエアまで登り詰めるとはどんな才有る若者なのだろうと少し調べるだけで……
出るわ出るわ、物語の執筆や演劇の監修。
あの問題だったヴァリエール公爵家とツェルプストー辺境伯家を暫定とは言え、協定を結ばせる政治的才能。
そこから商売でもかなりの成功を収めている。
どんな完璧人間かと思えば……
許婚だと言う美女・美少女を両方に侍らせ、入学式は遅刻、その後に決闘騒ぎを起こしている。
しかし相手に怪我を負わさない配慮とその後の復旧作業は完璧ですし、決闘したミスタグラモンとも仲直りしています。
問題児には変わりが有りませんが、悪い子ではないのでしょう。
申請書を読めば魔法学院の近くにヴァリエール公爵を通じて屋敷を購入していますね。
領地経営にも参加している為、学院内以外に執務室が欲しいのが理由でしたが……
確かに機密を扱う事も有るし防諜という面でも、学院外からの侵入は防げても基本的に個人の部屋には友人等が自由に出入り出来てしまいますからね。
噂ではその屋敷にはヴァリエール公爵家から送られた、巨乳メイドが20人いて自身の領地からも過分な位の人数が来てると言います。
若いのに大したものだ!
と褒めるべきか、他国にまで大勢のメイドを連れ込むな!
と言うべきか……
注意は必要でしょうね。
しかし羨ましいですな。
共に大貴族の令嬢で、甲乙付け難い美人ですからね。