第162話
僕とシェフィールドさん。
カステルモール殿とエルザちゃん。
不思議な取り合わせで朝食を食べる。
カステルモール殿もエリート集団の団長だけあり、屋敷も立派だが食事も質量共に中々だ。
「カステルモールお兄ちゃん、アーン!」
今日はエルザちゃんが食べさせる方か。
仲が宜しい事で。
シェフィールドさんが、チラチラ此方を見ている。
これは……
して欲しいんだろうか?
貴族的マナーでは有り得ないんだけどな。
付け合わせのポテトをフォークで刺してシェフィールドさんの口元へ運んでみる。
「お姉ちゃん、アーン!」
満面の笑みで食べてくれました。
「はいツアイツ、アーン!」
うわっ!
思った以上に恥ずかしいぞコレは……
給仕のメイドさんが、クスクス笑っているし。
結局、朝食を食べきるまでアーンを交換した。
何て羞恥プレイ?
夜迄は暇だ……
そして僕以外は準備やら何やらで忙しい。
「ツアイツお兄ちゃん暇だよ!
エルザと遊ぼう!」
実年齢は年上なんだが、結局エルザをちゃん付けで呼ぶ様に懇願された。
まぁ見た目幼女に僕が敬語を使っては、どんなお嬢様なんだと話題になるからね。
エルザちゃん相手にミニゴーレムで劇を見せる。
好評だったよ。
暫くすると、シャルロット様とジャネット殿が訪ねてきた。
「ツアイツ様、こんにちは!」
「ミスタ・ツアイツ、こんにちは……」
シャルロット様とは久し振りに会うな。
「シャルロット様、ジャネット殿、久し振りですね」
取り敢えず貴族的作法に則り挨拶をする。
「私は2日程盗み見てましたよ」
「タバサで良い。
学院に戻った時にボロがでるから……」
えっと?
「もしかしてジャネット殿は……
覗いていたの?」
ニッコリと可憐な花の様な笑顔で覗きを肯定してくれました。
「ではミス・タバサで良いですか?」
此方は、無表情で頷いてくれた。
「それで、今日の来訪の目的はなんでしょう?」
「「背中の幼女を下ろしてから!」」
アレ?
随分軽いんだけど?
「よっと!
だめだろエルザちゃん、カステルモール殿以外の背中によじ登っちゃ。
てか随分軽いけど?」
エルザちゃんの脇の下に手を入れて持ち上げる。
「へへへっ!
これも魔法なんだよ」
高い高いな格好だが、足をぶらぶらさせて喜ぶ。
ヒョイと飛び降りて部屋の外へ走って行った。
「ツアイツ様は子供好きなんですか?」
何だろうニヤニヤだが?
「性的な意味で好きでは有りませんよ。
それにエルザちゃんは、カステルモール殿のご内儀様ですし」
何故かホッとしている?
「イザベラから聞いた。
ミスタ・ツアイツがお母様の病を治せるって!
本当なの?」
流石はイザベラ様、行動が早いな。
「本当だよ。
条件は幾つか有るし、場合によってはミス・タバサの身分を偽って別人として暮らすかも知れないけど……
確実に治してみせるよ」
頭に手を乗せてポンポンと叩く。
彼女は、透き通った涙を流しながら僕の手を取り頬に添えた……
「あ、ありがとう……」
取り敢えずハンカチを差し出して、手を抜いた。
「お礼ならイザベラ様とシェフィールドさんに……
僕は大した事をしてないから」
何か照れ臭いよね?
お礼を言われるってさ。
ジャネット殿が、人の肩をバンバン叩いて
「かーっ!
何、何が大した事をしてないだって?
ツアイツ様が一番苦労したんでしょ?
もっと恩に着せて従姉丼喰っちゃえって!
何なら私も付けるから。
その方が絶対楽しいから」
この娘って、こんな性格だっけ?
何となくムカついたので、胸をムギュっと揉んでみた。
「ん……
Cの82いや83かな?」
彼女は真っ赤になって、胸を押さえ後ずさると
「ツアイツ様のエッチ!
イザベラ様に、有る事無い事言い触らしてやるー」
そう言って走って行った……
「反省してないが、後悔はしている。
イザベラ様、すみません」
プチトロアの方に向かい頭を下げる。
「ミス・タバサ、何を?」
僕の手を掴んで、グイグイ自分の胸に押し付けようとしている?
「……お礼。
小さくてツマラナいかも知れないけど……」
「いやっ駄目だから!
君はそう言う扱いをしては駄目な娘だから!」
急いで手を引っ込める。
危なかった……
危うくアレでナニな連中を敵に回す所だった。
ミス・タバサは、何やらご不満のようだ!
「お礼は心配しなくても大丈夫だから、ね?」
「でも、気が済まない」
こんなに律儀な娘だったかな?
「じゃ貸し1つで!
何か困った事が有ったら頼み事を聞いてね」
初めて彼女の笑顔を見た!
はにかむ様な、それでいて心の底から嬉しい感じで……
彼女には、もう1つプレゼントが有るんだ。
双子の妹、ジョゼットの件だ!
でも未だ言わない。
準備が整って、オルレアン夫人が納得してからだ。
ジョゼットだって家族と暮らした方が良いだろう。
でも引き合わせるのは、ジョゼットが会いたいと言えばだね。
これは言葉は悪いが、捨てられた方に決定権があるからさ。
ミス・タバサとは、余り会話は進まなかった。
元々無口だし、仕方ないのかな?
彼女は、暫くして帰っていった。
これで原作と違い、早い段階でオルレアン一家は幸せになれるだろう。
しかし不自由な生活が待っている。
どうしたら良いかな?
イザベラ様は任せろって言ったけど、ガリアよりゲルマニアで爵位を買って暮らした方が楽かもね。
さて、夜に備え暫く眠ろうかな……
SIDEイザベラ
黒衣の魔女シェフィールド……
お父様が召喚した使い魔で有り、ツアイツが姉の様に慕う女。
恋敵にはならないが、身内然とした立場は危険な感じがする。
「何ですか、イザベラ様?
私を睨んで?」
何故か私の政務室に座ってお茶を飲んでいる。
「いや、何故一緒に艦隊司令部に行ってくれたんだい?
アンタはお父様から直接の手伝いを止められているだろう」
この女は、お父様とツアイツ以外の為には動かない筈だ。
「レコンキスタ……
もう要らないの。
だから壊す手伝いをしてあげるわ。
それにガリアにツアイツを呼ぶには貴女とも協力しないと……
知ってる?
トリステインのヴァリエール一族もね、ツアイツを狙ってるの」
「ああ、婚約者の1人が居るんだろ?
でもツアイツの身内に手を……」
何だ?
手を上げて言葉を遮るとは不敬な!
「分かってるわ。
ツアイツは身内に甘い。
だから私と貴女でガッチリ捕まえてしまうの。
どう?
手を組まない。
ツアイツを半分こしましょう」
ああ、この女も謀略系か……
しかし悪くない。
基本的に、この女はお父様狙い。
ジャネットやシャルロットより頼りになるし、敵でもない。
「お母様と呼んでやる。
しかし、ツアイツの第一夫人は誰にも譲らない」
シェフィールドに向かい手を差し伸べる。
「それで良いわ。
あの子はガリアで私達と暮らすのが幸せなのよ」
艶然と微笑みを称え、ガッチリと握手する2人。
この凶悪コンビに立ち向かえるのか!
ヴァリエール一族よ?