メリークリスマスです。
何時もこの妄想小説にお付き合い下さいまして有難う御座います。
KH様よりクリスマス企画の希望が有りましたので、即興で書いてみました。
世間はクリスマス一色!
自分も今晩から新潟までスキーに行きます。
帰りは月曜日になりますので、感想の返信は月曜日以降で……
明日・明後日の定時掲載分は予約してあります。
では、皆さんも良いクリスマスで有ります様に……
挿話27話・ハルケギニアでクリスマス
クリスマス特別企画
ツアイツが前世の自我を覚えた五歳の初めての冬……
年末に初雪が降った。
他の子供ならはしゃぐだろうし、去年の彼もそうだった。
しかし今年は違う反応になった。
添い寝当番で先に起きてカーテンを開け外一面が銀世界になっている事を教えたルーツイアは……
「ツアイツ様、起きてください。
お外が雪で真っ白ですよ」
そう声を掛けて布団にくるまっている彼を優しく揺する。
「んー寒い……
あと五分、いや十五分寝かせて下さい」
ツアイツは低血圧だった。
そんな様子をヤレヤレとした顔で見ていたが、朝食に遅れると彼女もお叱りを受ける。
ツアイツのくるまる布団を顔の部分だけ捲り、自分の豊満な胸でパフパフする。
「さぁ起きて下さい。
そろそろエーファが来ます。
起きてないと叱られます」
ツアイツは、この方法だと言う事を良く聞いてくれた。
案の定、巨乳を甘噛みしてから起き上がる。
「んーおはよう、ルーツイア……
五歳児は十時間以上寝ないと大きくなれないんだよ」
両手を上に上げて、大きな欠伸をしながらとても五歳児とは言えない理屈で反論する。
巨大なベッドの上に胡座をかいて座っている。
天蓋の付いた樫の木の一刀彫りで彫刻を施した四方の柱にフカフカのクッション。
レースをふんだんに使ったカーテンと普通なら一生涯使えないだろうベッド……
ツアイツと添い寝をする様になり3日に一度は寝ている。
「おはようございます、ツアイツ様。
外が一面の雪ですよ」
カーテンの開けてある窓の方を指差す。
「だから寒いのか……
もう年末だし向こうはクリスマス真っ只中だろうな?」
また不思議な言葉を!
クリスマス?
向こうは?
ツアイツ様はたまに何処か違う国の事を詳しく話します。
まるで住んでいた様に……
「クリスマスとはなんでしょうか?」
のそのそと起き出し、用意してあるボールで顔を洗っている彼に尋ねる。
顔を洗い終わったのでタオルを差し出しながら……
「ん?
東方の国の偉人の誕生日を祝うお祭りだよ。
子供達に赤い服を着て煙突から屋敷に無断進入しながらプレゼントを配る老人が居るんだ。
後は恋人同士のイベント……
アレ?
全然キリスト敬ってないな」
また不思議な事を言い始めた。
彼は起きがけとか眠い時など注意が散漫な時だけ、こんな不思議話をしてくれる。
今も
「誕生祭なのに、ケーキしか関連無いし……
日本じゃホテルの予約率が高い……
ああだから子供を仕込む誕生祭か、くっくっく」
と、不穏な独り言を言う。
「そのクリスマスとは何時なのですか?」
寝間着を着替えさせながら聞いてみる。
彼の不思議話は、聞いた事もないが理に叶っていたり辻褄が合っていたりと面白いから……
「その年の終わりの月の25日だよ。
前日はイブと言ってプレゼント交換をしてケーキとか食べて祝うんだ」
鏡で身嗜みを確認しながら聞いてくる。
彼は殆どを御自分でこなしてしまう……
本当に五歳児かと疑う時も有ります。
ドアがノックされエーファが入ってくる。
「おはようございます、ツアイツ様。
良くお眠りになられましたか?
では食堂までご案内します」
そう言ってツアイツ様を伴い部屋を出て行く。
私は頭を下げて2人を見送る……
私の仕事は此処まで。
後はナディーネが部屋の掃除に来るので、一旦朝食をとりに従業員用の食堂へ向かう……
先程の話。
クリスマスか……
子供に赤い服を着た老人が、煙突から不法侵入をしてプレゼント?
何者なんだろう……
しかし、子供にプレゼントか。
何時もお世話になっているツアイツ様に、何か贈りましょう。
これはエーファとナディーネに相談ね。
仕事を終えて夕食を頂いた後の僅かな自由時間に先程の件を相談する。
「ふーん、クリスマスね。
誕生日のお祝いですか?
しかし当人が参加しなくても良いし関係者じゃなくてもプレゼントするの……
変なお話ね?」
「ナディーネさん、違います。
偉人だから死んだ人を祝うのですよ。また
誕生祭になるのかしら?
でも子供を仕込むから誕生祭とか言っていたわ……」
自分で言ってから真っ赤になる。
聞いていた2人も真っ赤だ……
「でっでもプレゼントは贈りましょう。
何が良いかしら?」
皆が悩む……
まだ五歳児、普通なら玩具だろう。
しかしツアイツ様は普通じゃない。
何を欲しいのか分からない……
「今夜は私が添い寝番だから、それとなく聞いてみるわね。
何か良いのかしら?」
そう言ってエーファが部屋を出て行った。
ツアイツは子供だから寝るのも早い。
大体8時にはベッドに入るから……
「ツアイツ様、灯りを消しますよ」
指を鳴らすと室内の灯りが落ちる。
天井の豪奢な照明器具の魔法のライトが消える……
足元の常夜灯が仄かに室内を照らす。
彼の隣に入り話し掛ける。
眠りにつくまで世間話をするのがお約束だ。
「ツアイツ様、ルーツイアから聞きましたが……
クリスマスですか?
もう少し詳しく聞きたいのですが、どんなお祭りなのでしょうか?」
薄暗い中で彼がこちらを向く気配がする。
「クリスマスかい?
東方の偉人の聖誕祭だよ。
もっとも民衆はケーキを食べたりプレゼントを貰ったりと全然敬ってないけど……」
「偉人様……
ブリミル様の様な方でしょうか?」
「うん、そんな感じ。
ブリミル様ってブリミル教ってどんなお祭りが有るの?」
「特に私達が祝う祭事は有りませんね。
神官方が祀るのですから……」
SIDEツアイツ
はぁ?
キリスト教だって十二大祭だっけ……
復活祭(イースター)
聖誕祭(クリスマス)
謝肉祭(カーニバル)
あと何だろ?
色々有るのに、ブリミル教は神官だけだって……
だから神の声を聴く我らが偉いのだぁ!
とか馬鹿やるんだよ。
民衆を巻き込まない祭事なんて信仰の対象にはならないのに……
「そうなんだ。
神官達も大変なんだね」
良くも六千年も続いたよね、この宗教は。
「それで、ツアイツ様に贈り物をしたいのですが……
何か欲しい物は有りますか?」
彼女達の言いたい事が分かった。
子供にプレゼント……
つまり僕に贈り物をしてくれるつもりなんだ。
嬉しいけど、プレゼントは交換なんだよね。
僕も何か用意しようかな。
「欲しい物は……
ペンかな。
文字を勉強し始めたけどイマイチだからね」
ペンなら彼女達でも負担が少ないだろう。
消耗品だから安く手に入る筈だ。
そう言って眠りにつく……
彼女達に何を贈ろうか考えながら。
クリスマス当日……
流石にサンタが夜間室内に乱入は無かった。
しかし、彼女達は全員揃って朝の挨拶にやって来た。
「「「おはようございます、ツアイツ様。
私達からのプレゼントです」」」
綺麗に包装された包みを渡してくれた。
「有難う。
これは僕からプレゼントだよ。
クリスマスのプレゼントは交換だから」
そう言って用意していたプレゼントを渡す。
彼女達にはアクセサリーを用意した。
出入りの宝石商に見繕わせたんだけど……
あのジジイ、お妾さん様にですか?
とか言いやがった。
その場で僕にくれたプレゼントを空ける。
銀のペン先に軸は大理石だろうか?
かなり高価な感じがする。
「有難う、大切にするよ」
彼女達も包みを開けている。
三人共、同じブローチだけどね。
金の台座にオパールを埋め込んだ逸品……
とは言えないが、それなりの物を用意した。
「「「ツアイツ様、有難う御座います」」」
それから実家に居る時は、毎年クリスマスプレゼントの交換をした。
時は過ぎてトリステイン魔法学院での授業中……
「ツアイツ、随分と使い込まれたペンだね?
てか古くてボロボロだよ。
君なら新しい物を買えるだろう?」
モテナイーズ筆頭のギーシュが話し掛けてくる。
僕の手元には10年間愛用したペンが有る。
「良いんだ。
惚れた女性からの初めてのプレゼントだからね。
特別なんだよ」
ギーシュは驚いた顔をしている。
今年のプレゼントは何を贈ろうかな?
これは僕のメイド達とだけの秘密のイベントだから……