第174話
南側の敵を制圧し、東側にブリュルヒルデで移動する。
彼女のスピードは素晴らしく直ぐに東側のレコンキスタ軍本隊の近くまで来た。
「カステルモール殿、降ろして下さい。
再度ゴーレムを錬金し攻撃を仕掛けます。
お姉ちゃん、程々にね。
ブリュルヒルデが怯えてるから一緒に降りよう」
勇猛果敢な彼女が怯える程に、ヤンデレ化し始めたシェフィールドさんを降ろそう。
ブリュルヒルデは僕をチラ見して、恨めしそうに一声鳴いた。
ゴメンね、分かってる。
もう乗せないから……
敵軍から200メートル程離れた所に着地。
素早くゴーレムを錬金する。
「クリエイトゴーレム!」
本日二度目の機動な戦士の物語の量産機を錬成!
此処でもモノアイを光らせ排気口から排気する。
無駄だけど、無駄でないこだわりだ!
隣を見ればシェフィールドさんが何かを周りにバラ撒いている……
「お姉ちゃん、何を撒いたの?」
話し掛ける間にも、それらがムクムクと起き上がってくる……
前に貰った牙の骸骨ゴーレム達だ!
「ツアイツの護衛よ。
ほら、早くあの敵戦艦を墜としなさいな」
お姉ちゃんは50体近いゴーレムを作り出す。
「分かった。
錬金、黒色火薬ブーメラン!」
今回は飛距離が有るので、アックスで無くブーメランを錬成する。
「ゴーレムよ、敵を薙ぎ払え!」
ブーメランをサイドスローで投擲する。
てか魔法って金属がゴムの様に伸び縮みするんだけど、この辺適当だよね。
ゴーレムは金属では有り得ない腰の捻りを見せてブーメランを投擲!
「外したか!
錬金、錬金、れーんーきーんー!」
三枚のブーメランを錬成しゴーレムに投げさせる。
三度目の正直か、三回目に投げたブーメランが見事に敵戦列艦のド真ん中に命中!
戦列艦は爆散しながら墜落する。
それに合わせるかの様に、此方の大型戦艦からの攻撃も当たり、二隻目も墜ちる。
流石に大型戦艦の弾幕って凄いや。
一斉射撃で艦の片面の30門位が火を噴く様は圧巻だね……
あっ最後の一隻も墜ちた。
鋼鉄のゴーレム使いで有る僕の情報も知れ渡っていたんだろう。
此方に物騒なセリフを言いながら突っ込んでくる傭兵達の台詞内容に、キレたお姉ちゃんがソイツ等をぶっ飛ばす!
今度は風石の力を制御して、前方のみに力を開放……
人がゴミの様に飛んでいくんだ。
「私のツアイツをブッ殺すとか、ひっ捕まえろとか……
空を飛んで反省しなさい、愚か者め!」
ヤンデレMAX状態のお姉ちゃんに手加減は無いです。
僕の賞金に目が眩んだ連中は、文字通り死のフライトを敢行。
怖じ気づいた連中が、漸く欲望より命が大切と気付いて逃げ出した!
「ふふふ……
ツアイツに敵対して逃げれるつもりなんだ?
お馬鹿さんね……
吹っ飛びなさい」
物騒な台詞の後に手を水平に振ると、風石の力が地上を伝う衝撃波となり逃げる連中を後ろから凪払った。
「あー、お姉ちゃん。
もうその辺にしてあげて欲しいな。
後は、王党派の歩兵と足並みを揃えて進軍しようよ」
シェフィールドさんの手を握り締めてお願いする。
お姉ちゃんの目はグルグルの黒眼のままだ。
「このまま手を繋いで歩いて行こうよ」
ギュッと力を込めて手を握る。
「そうね……
ツアイツに暴言吐いた連中は殺し尽くしたから良いわ……
さぁオリヴァー・クロムウェルの最後を確認しに行きましょうね」
優しい微笑みと共に仰(おっしゃ)った台詞は物騒この上もない物だった……
シェフィールドさんは馬ゴーレムを造り出して2人で乗る。
徒歩は流石に時間が掛かるからと……
僕が前に乗り、後ろからお姉ちゃんが抱き締める様に手綱を捌く。
パカパカとレコンキスタ本隊の方に走って行く。
その前を敵戦列艦を倒した王党派のロイヤル・ソヴリンが地上攻撃を開始していた。
炸裂弾かな?
三回の一斉射撃の後に、王党派本隊が突撃を開始!
「お姉ちゃん……
乱戦になるから、僕らは此処までだね」
既に白兵戦に突入している戦場に、中遠距離戦が主体の僕らが行っても効果は薄いだろう。
それに彼らがオリヴァー・クロムウェルを討たねば駄目だから……
「ちっ!
あの屑の処理はアルビオンに任せてあげるわ。
私の手で始末したかったけどね……」
後ろから優しく抱いてくれているのに、囁く台詞は怖いんだよね。
早くジョゼフ王と幸せに結ばれて欲しいな。
主に僕の胃の為にも……
暫く見詰めていれば、漸く追いついた南側攻略部隊の王党派軍が周りを囲んでいた。
「ツアイツ殿、我々はどうしますか?」
隊長が聞いてくる。
「僕らの役目は此処までです。
しかし隊長達は、レコンキスタ軍を追撃して武勲をたてますか?」
そう言うと、暫く考え込んでから
「いえ、もう十分です。
それに貴方達の常識外れな戦いも見れましたから……
予定通りに本隊と合流し、指示を仰ぎます」
そう言って綺麗な敬礼をする。
そして整列した歩兵隊を率いて戦場に向かって行った。
「お姉ちゃん、サウスゴータに戻ろうか?」
「そうね……
アルビオン王党派に後は任せましょう。
お姉ちゃん疲れたわ。
そうだ!
一緒にお風呂に入りましょうね」
「いや、それは駄目だから!
無理だからね、無理!」
何かスッキリしたお姉ちゃんが、冗談を言って僕を困らせる。
暫くはアルビオンに滞在し、オリヴァー・クロムウェルの最後を確認したら漸くガリアに……
ジョゼフ王に会える。
長かった彼の試練はもう直ぐ終わるのだ。
何とか夏休み中で終わるだろうか……
パカパカと馬ゴーレムに乗りながら空を見上げる。
地上三千メートルから見上げる空は、何処までも蒼く澄んでいる。
僕は、僕達の帰りを待っている同じ色の髪をもつ少女を思い浮かべる。
イザベラ様……
原作と全然違う少女。
彼女となら、これからロマリアとの戦いも勝てr
「痛い!
お姉ちゃん痛いよ。
もしかして抓った?」
「ツアイツ?
お姉ちゃんと2人で居る時に、他の女の事を考えていなかったかな?」
「違うよ。
ジョゼフ王に会ったら何を言おうかなって……
本当だよ」
未だに彼女の目は、微ヤンデレだ。
どうやって元に戻すかが問題だ!