第175話
おはようございます。
ツアイツです。
久し振りに、この挨拶で話が始まりました。
先日の反攻作戦は大成功!
レコンキスタ軍は事実上全滅です。
今は、アルビオン王党派が逃げている盟主オリヴァー・クロムウェルの捜索をしています。
あの後、ダータルネス方面に逃げ出したレコンキスタ軍は、トリステイン王国軍と遭遇。
元々混乱し敗走していた連中の殆どが捕まりました。
我らゲルマニアの増援は、アルブレヒト閣下から許可を貰ったツェルプストー辺境伯が直ぐに父上に連絡。
準備をしていたハーナウ家とツェルプストー辺境伯家の常備軍が、直ぐにでもアルビオン大陸に上陸出来るそうです。
鷹便で連絡が来ましたが、送った時には進軍を開始したとの記載も有るので既に上陸しているでしょう。
何とか残敵掃討の手伝いにはゲルマニアも間に合った訳です。
ガリア王国は非公式ながら、王位継承権第一位のイザベラ王女と新鋭戦艦に親衛隊が開戦前に到着。
帝政ゲルマニアも開戦前に、先発隊を任されたハーナウ家が参戦。
そして後続が残敵掃討の任に当たっている。
トリステイン王国は、開戦には間に合わず壊走するレコンキスタ本隊と戦闘を行った。
後は、盟主オリヴァー・クロムウェルをどの勢力が捕まえるかが問題だ。
これは地の利が有り情報が集中するアルビオン王党派が有利で有り、そう仕向けている。
トリステイン王国軍が捕まえると色々厄介だから。
この内乱も終息し、各国に増援のお礼をしなければならないアルビオン王党派に花を持たせる関係でも何とか捕まえて欲しい。
「ツアイツ、おはよう!
朝食に行こうよ。
エスコートしてくれるんだろ?」
最近遠慮無く、僕の部屋に入り浸るイザベラ様とメイドさん達……
扉にはロックの魔法が掛かっていた筈です。
スクエアの僕が全力で掛けたロックが……
「おはようございます。
イザベラ様。
今日のお召し物は、初めて会った時の物ですね」
聞けば、メイドさん達は皆さんスクエアクラスだそうです。
地味に国力を見せ付けるよね?
流石は大国ガリアと言う事かな……
多分、ジョゼフ王の息も掛かっていて今回の行動は筒抜けでしょう。
まぁ良いかな。
別にバレても困る内容は……
添い寝位かな?
ヤベッ!
王妃になるシェフィールドさんと王女イザベラ様の両方と添い寝したよ?
「良く覚えてるね。
そうだよ、その時のドレスさ。
ツアイツから貰った服は、イベント時にしか着ないからね。
さぁ今日は一旦ウェールズ殿が討伐軍から戻ってくるし、トリステイン王国軍の関係者もサウスゴータに招かれるよ。
間に合えばゲルマニア勢も……
ツアイツ、大変だね。
皆に私の事を紹介しとくれよ」
クスクスとメイドさんと共に笑いながら、先に食堂へと向かって行く。
「まっ待って下さい!」
チクショウ!
絶対に面白がってるな。
しかし情報では、カリーヌ様やヴァリエール公爵……
それにアンリエッタ姫自身が来ているんだ!
ゲルマニア軍は、父上やツェルプストー辺境伯もアルビオン入りをしている。
一堂に会したら僕はどうなるのかな?
隣で僕の腕を組んで、朝からご機嫌なイザベラ様を見て溜め息をつく。
やっと火傷の傷が完治したけど、また違う怪我を負いそうです。
SIDEトリステイン王国軍
初めての行軍、初めての戦争……
心身共に疲れ果てたアンリエッタ姫が馬車に揺られて城塞都市サウスゴータに向かっている。
彼女はツアイツが、其処に居るのを知らないがウェールズ皇太子が討伐から一旦戻る情報は掴んでいる。
そう!
彼女の野望はこれからが本題なのだ。
今回の増援の恩を如何に婚姻に結びつけるか……
しかし実際の手伝いと言うか成果は低い。
ツアイツ達に粗方持ってかれているから……
それに未確認情報では、ゲルマニアの実家で療養中のツアイツ殿が居るかも知れない?
捕縛した敵兵からの情報では、ツアイツしか作れない金属製の巨大ゴーレムが戦場に現れた!
とか、賞金一万エキューの彼を捕まえる為に南側に展開していた軍隊が向かったが……
返り討ちにあい壊滅したとか。
物凄い英雄的な扱いを、アルビオン王党派の方々が話しているのを聞いたりとか……
「まさか、ツアイツ様が私とウェールズ様の為に!
このアルビオン大陸にいらしてるのかしら?
ならばお逢いたいですわ」
何の根拠も無いが、何故か薔薇色の未来が広がっている多幸感を覚えたアンリエッタ姫。
ヤバい水の秘薬とかキメてないですよね?
そして昼過ぎにトリステイン王国軍はサウスゴータに到着した。
当然、護衛を兼ねた烈風のカリンと援軍を束ねる実質的な立場のヴァリエール公爵がアンリエッタ姫を伴って……
SIDEツアイツ
メイドさん情報によればトリステイン王国軍がたった今、到着したそうです。
ウェールズ皇太子が不在の為、侍従のバリーさんが対応している筈だ。
「どうしようかな?
先にヴァリエール公爵夫妻に会うべきだろう……
アンリエッタ姫に今は会わない方が良い。
僕のセブンセンシスが、そう訴えている。
最悪、ガリアVSトリステイン王女対決だ!」
そして男として、イザベラ様を紹介する前に全てを話しておかなければならない。
腹を括ってヴァリエール公爵夫妻の部屋を訪ねる。
幾らカリーヌ様でも、いきなり殺さないよね?
「お久し振りです。
ヴァリエール公爵、カリーヌ様。
この度の国内腐敗貴族一掃とアルビオン王党派への増援、有難う御座います」
にこやかに応接セットに通されて向かい合って座りいきなりお礼を言う。
先ずは低姿勢で探りを入れよう。
「何を言っているんだ。
八割以上が君の手柄だよ。
トリステイン王国が風通しの良い国になったのは、全てツアイツ殿の手柄だ」
「そうですよ。
義息子よ……
今回の件については感謝しきれません」
和やかな対応だ。
まだバレてないな、イザベラ様の事は。
「それで、アンリエッタ姫のご様子は?
出来れば僕が此処に居る事は秘密にして欲しいのですが……」
先ずはアンリエッタ姫の件の言質を取る。
「ん?
そうだね、疲れてはいるが普段と変わらないな。
出来れば変わって欲しかったのだが……
良い意味でね」
「マリアンヌ様と並べてアレだけ再教育したのに、余り変わらないのは有る意味大物だわ」
何か有ったんだな……
僕が聞いてはいけない大人の事情が。
「そうですか……
国内の風通しが良くなったのなら成功ですね。
僕も嬉しいです。
ならばアルビオン王国との婚姻外交には拘らないですよね、お二方は?」
ウェールズ殿の為にも、この2人の言質を取る。
彼女を野放しにするのは危険だけど、友となったウェールズ殿に押し付けるのはもう嫌だし。
「ああ、此処まで来れば構わないよ」
「そうですね。
それについては、アンリエッタ姫ご自身が頑張れば良い話ですね。
私達は手伝いません」
ヨシ!
これで覚醒したウェールズ殿なら危機は回避出来るだろう。
おめでとう、ウェールズ殿。
そして、これからが僕の方の本題だ……