謀略教皇VS謀略教祖!趣味と趣味の闘い・第13話
マザリーニ枢機卿との会談。
彼が現教皇ヴィットーリオには付かない所まで、纏め上げた。
しかし、トリステイン王国の扱いによっては敵対する可能性が有る。
何故ならば、前王との友誼を頑なに守っているから……
しかし、残された妻と娘が厄介なんだ。
彼女達の扱いは、ヴァリエール公爵夫妻も関係する筈だ。
だから僕とマザリーニ枢機卿との、2人だけの会談はコレでお終い。
次はヴァリエール公爵夫妻を交えた話し合いだろう。
ただマザリーニ枢機卿とは、少しは分かり合えたと思う。
僕は彼に教皇になって、ブリミル教を纏めて欲しい。
この自分勝手な強欲貴族ばかりのトリステイン王国を今日まで存続させてきたんだ。
その努力と献身は大した物だと思う。
先程よりも友好的に、互いに紅茶を飲む。
少し余裕が出来たからか、互いの思惑を理解出来たからか、雑談なども話せる様になった。
しかし話題はアンリエッタ姫やマリアンヌ王妃の事が多い。
「ツアイツ殿。
出来れば、アンリエッタ姫を貰ってはくれぬか?
序列で言えば、イザベラ姫の次でも良いのだ。
性格に多大な問題が有るやも知れん。
だが見目は良いし、何より貴殿に向ける愛情は本物だ。
ヴァリエール公爵家の三女殿も輿入れするが、彼方も準王家。
どちらかが生んだ男子が、トリステイン王国を継げば、この国は安泰ではないか?」
どうだ?
ってな顔で、一番避けたい事を言ってくる。
マザリーニ枢機卿的には理想的なんだろう。
以前は、しがないゲルマニアの一貴族。
でも今は、ガリア王家の一翼を担っている。
始祖の血筋の王女を娶っても問題無い。
序でと言うか、本命はガリア・ゲルマニア・アルビオンの三国連合にも参加出来る。
彼の頭を悩ます問題児を押し付けられるからね。
対ロマリア包囲網としては、完璧だからね。
「いえいえ。
何度も言いますが、アンリエッタ姫の、その……
彼女に手を出すのが危険な気がするのです。
地雷女と言うか、僕の苦労が跳ね上がる。
奥様方も納得しないでしょう」
流石に始祖直系のアンリエッタ姫を側室に迎えるのは無理だ!
第二夫人とか、対外的に面倒臭い扱いになるのかな?
「オッパイ大好き、女性大好きを公言する貴殿がか?
アンリエッタ姫は、贔屓目無しに美少女だろう。
君の言う巨乳だ!
それに彼女1人位、何とでも出来るだろう貴殿なら?
なに、子供を仕込んだら後宮に押し込めておけば良いではないですか?
邪魔にはならないだろう」
結構辛辣な考え方をしますね。
彼女の血筋の後継ぎが欲しい、と?
「確かに純真で一途で見目も良い。
しかし僕程度では、彼女の巻き起こす騒動に対処出来ないですよ。
それはマザリーニ枢機卿が一番理解してる筈。
誰か居ませんかね?
アンリエッタ姫を任せられる人物が?」
僕以外だと、ウェールズ皇太子かウチの閣下かな。
付きっ切りなら、あの姫様を御せるのは……
確か原作で、サイトはアンリエッタ姫を
「昼と夜の顔を持つ女性」
と評した。
何だかかんだで、ルイズにベタぼれだった彼が唯一突き放せなかった……
事実上の浮気をしたのは、アンリエッタ姫だけだ。
僕と直接会った事など、それこそ数える程なのに……
何故、アレだけの執着心を僕に対して持つのだろうか?
「王家の姫の嫁ぎ先など、外交の延長でしかあるまいに……
ツアイツ殿が嫌がるなら、次点はゲルマニアのアルブレヒト殿か。
なに、愛の無い婚姻同盟など普通でしょう?
条件次第なら、彼は受け入れてくれるでしょう」
エゲツネー……
にこやかにお茶飲んでるけどさ。
黒い、真っ黒だよマザリーニ枢機卿!
確かに閣下なら申し分ないだろう。
しかし……
「少し前なら、魅力的な提案でしたね。
閣下は始祖の血筋が欲しかった。
しかし、今はそれ程でもないですよ。
閣下はブリミル教の世界では一段低い評価をされるのが我慢出来なかった。
しかし、今はオッパイ大好きな連中からは一段高い評価を受けている。
僕と、僕の父上を擁する国家のトップですから。
今、ゲルマニアは彼らの聖地なんですよ」
オッパイ世界に疎いマザリーニ枢機卿には、ピンとこないかな?
「つまり、ウチの姫は娶る価値が低い、と?
それと、サラッと聖地とか言いましたな!
問題ですぞ、それは……
異端認定の理由になりやすい。
ブリミル教では聖地奪還は悲願ですからな。
その聖地をかたるのは……」
「ブリミル教の聖地って、サハラの真ん中の不毛な大地ですよね。
あの地をエルフから奪還すると、どうなるのですか?
何か特別な意味が有るのでしょうか?」
実際、ヴィットーリオは此処を心の拠り所とか魔法装置とか呼んでた。
心の拠り所が魔法装置って何だよ?
「聖地か……
始祖ブリミルが、ハルケギニアに降臨なされた場所だな。
そして数千年前に、エルフが住み着いた。
以後、何回か奪還しようと兵を差し向けたが惨敗。
ただ歴代教皇は、聖地に並々ならぬ関心を寄せていた。
場違いな工芸品は、かの地の周辺で多く見付かる。
それらを収集し調べている機関も有るらしい。
私から言わせれば、無駄に犠牲を強いる無駄な行為だ……
事実、数百年も手を出していない。
いや、出せないのだ」
次期教皇と目されていても、教皇にならないと知らされない事実も有るんだろうな……
しかし、マザリーニ枢機卿が聖地に執着してないのが分かったから良かった。
「それは戦力比が10倍と言われているから?」
「一般的にはそうだ。
しかし、私が調べた限りでは魔法が反射されるそうだ。
始祖ブリミルが広めた魔法が効かない。
それに精霊魔法は、我らの使う魔法より強力だ。
この事実が広まれば、ブリミル教の威信に関わる。
だから、おいそれと聖地に、エルフに戦いを挑めないのだ」
結構重大な秘密を話してくれますね。
それって?
「あの……
今のお話は、かなりヤバい情報ではないですか?
お互いに」
ニヤリと笑いやがった。
「これを聞けば、聖地奪還など夢物語と理解して頂けただろう。
ヴィットーリオの聖地奪還は止めさせねばならぬ。
互いの為にな」
「つまり真実を教えたのだから、協力しろ?」
黙って微笑むのは、前回の仕返しですか?
「では此方からのお願いも、聞いて貰いますよ。
マザリーニ枢機卿……
次期教皇になって下さい!
協力は惜しみません。
条件は、今の腐敗したブリミル教を正す事!
民衆の為の宗教にして頂きたい」
此処で言質を取っておく。
彼を教皇にすれば、腐った神官共を一掃して民衆の為の宗教にする。
民衆の為に腐心すれば信仰は高まる!
しかし、今まで溜め込んだ財貨を民衆の為に使わねばならない。
そして民衆に対して、慈善活動が出来る神官達は……
本当の意味の聖職者とは、権力など要らないだろうから。
清貧を重んじ民衆の為に尽力する、良き宗教になるんじゃないかな?